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魔法使いとヴァンパイア  作者: 桃月姫
一章 
9/16

8  それぞれ進みながら

おそくなりましたが、つづきです\( ˙▿˙ )/"

「『ファイアフォグ』!『ファイアフォグ』!」


「『マジカルアロー』!」


前方から迫り来る敵集団―魔王軍の生き残りに見つかった俺達は、幾度と戦闘を重ねながら洞窟に向かっていた。


「こっちは全部しとめたぞ!」


「右方の討伐完了ですっ!」


前衛小隊各々から成功の声が飛び交う。

順調だ。このペースで行けばすぐ洞窟に辿り着ける―!



と、その時。右方第五小隊の一人が後ろから迫る闇に気づかず、正面にいる奴と必死に戦っていた。

このままでは彼が殺られてしまう。そう思い、急ぎ援護に向かい、ヴァンパイアの魔法を発動した。


「危ない、避けて!『スノードロップ』!」


刹那、魔王軍の生き残りの一人を空中で討ち取る。

ハヅキの手から生成された氷の礫は、討ち取られた彼の急所―心臓にまで達した。

礫が彼の心臓に刺さる、当たり前ではあるがひどい出血と深部到達で即死。

空中戦が行われていたが、真っ逆さまに地面に叩きつけられバシ、と痛々しい音がした。


あぁ、俺が残虐に“人”を殺す側になるとは、とハヅキは殺しておいて、そう少し精神的に殺られてはいた。

―人形なモンスターであって人ではない、それ知るのは随分と後のことだったと。


―なんとか敵を蹴散らすことに成功したハヅキは、助けた相手からの謝礼を受ける。


「っ……!助かりました。後で御礼をさせてください!」


「援護しなきゃなのに、あたしらが助けられちゃってるねッ。こいつを助けてくれてありがとな!」


見れたのは横顔ながらも、何処かガーネットに似た雰囲気の女騎士はそう謝礼をした。


「いえ、援護がなかったら俺も遺跡に進もうなんて思いませんでした。助けられてるのはこっちのほうです!


そう、ハヅキは着々と王都援軍からの支持を得ていった。

精鋭パーティーということで最初から少しは信頼を得ていたが、実力を取ってもらえることは冒険者に非常に大切なことだ。



「『ファイアフォグ』!」


「『シェルブレード』!」


前方では貝を投げつけたり、炎の輪で燃やしに掛けたりと魔王軍―その雇われモンスターとのカオスな戦いは続行。

そうしてハヅキらは戦い進めていく―


          ★★★


「ハヅキくん、大丈夫かな……」


落ち着きを取り戻したフルールは寂しげに呟いた。


―私達も行かなければならない。

こんな所で立ち止まってなんていられる筈はない。

精鋭パーティーとして送り込まれているのだ。

ハヅキはいま、パーティーではなく一人の冒険者として出向いている。

これじゃ呼ばれた意味はない、精鋭の意味がない。

行かないとだめなんだ。彼に付いて役目を果たす、それが私達の使命なんだ。


フルールの脳内では“ハヅキに付いてかなければならない”、その事実は分かっていた。


今すぐにでもアリスを連れて飛んで行かなければ。やるべき事は分かっていた。

今後だって死体の山、血の海なんて見ることはあるかもしれない。自分がその立場になるかもしれない。怖い。恐いこわい。


でも、それを覚悟で精鋭パーティーの募集に応募したのではないのか?

自分の弱いところを克服したくて応募したのではないのか?

ただ、ひたすら自己暗示をかけていた。


「アリス、私達も行こう。ハヅキくんに任せっきりなんて、そんなのダメだよ。」


だから、アリスに声をかけた。

選ばれし“精鋭パーティー”の“一員”として、やるべき使命のこと。


「ッはぁ……はぁ………や、やだよ……怖いよ………!死にたくないよッ!」


だがアリスは頑なに拒否をした、無理もないだろう。

まだ、精神的に不安定なのだ。

この状況で立ち直れたフルールのほうが可笑しいといっても通じるようなことが起きたのだから。

なによりアリスにとって、“知り合い”が最も残虐な殺され方をした事によるダメージは大きい。

―だが、それでも出向くのがフルール達二人の使命なのだ。

彼女らギルド部隊に代わる、精鋭パーティーの大事な役目なのだ。


「ハヅキくんなら、きっと大丈夫だよ…だから、私たちはまって、いよう…?」


いや、それでは駄目だ。

しっかり、いますべきことを伝えよう。彼女とて精鋭パーティーのメンバーなのだ。フルールはそう心に決め、アリスに落ち着いて語りかける。


「死にたくない?そんなの、みんなそうですよ。私だって死にたくないっ……!

……でも、大切な使命を放棄してまで、自分で始めたことまで放棄して、何が精鋭パーティーですか。」


しっかり伝えられてるだろうか。不安ではあった。

情緒の整っていない彼女に真面目な話は通じるだろうか。

自分の云いたいことは届くのだろうか。やってみないと分からないから ― やらないといけないことだから ―!


「だって、だって……!シュリさんが……あんなめに………!」


「うぐ……」


そう言われ、あのときの地獄絵図と言うべき光景が脳裏に浮かぶ。血が生々しくて、見ていられないような残虐に殺されたギルドの人達。

でも、彼女に同情して私まで取り乱しては駄目だ。

落ち着こう、一旦落ち着こう。彼女の心に届くまで、やるべきことを言い続けてみよう。


一息つくと、もう一度話かける。


「シュリさんは、ちゃんと使命を果たしたんです。それに比べてアリスはどうなんですか?精鋭パーティーの一員として何か使命を果たしたんですか?」


アリスはハッとする。

よし、あと少しだ。もう少し押せば伝わるはずだ。私たちのすべきことを、ちゃんと伝えるんだ……!


「違うでしょう。だから、私たちはハヅキくんの元に向かうんです……!そうでもしないと、シュリさんに顔向けできないでしょう?」


アリスを宥めるように言い方を少し変えてみる。

アリスは呼吸を整えようと胸に手を当てる―これは……伝わってる、伝わってるはず!

フルールの話を聞き、落ち着きを取り戻しつつあるアリス。


「っ……わ、分かったわよっ。シュリさんに顔向け出来ないのは、らしくない、から……」


アリスが息の落ち着きを取り戻すまでの少しは待とう、その後すぐに追いかけよう。

―ようやくアリスを説得でき、フルールたちは遺跡に向かうことになった。

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