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魔法使いとヴァンパイア  作者: 桃月姫
一章 
8/16

7  いざ遺跡へと


「アリス!フルール!」


ハヅキら一行が声の元に来ると、そこにはアリスとフルールが目の前の光景に絶句していた。


「っハヅキくん…はぁ、はぁ…あれ、」


フルールが目の前のソレを指差し、息を落ち着かせながら状況を説明しようとしている。

アリスも何かいっているようだが、絶句しすぎたあまり、声が出なくなっていた。それだけではなく、涙も出ないほど、冒険者の辿らないとは限られない事実に絶望しているようだった。


フルールが指差したその先。ギルド拠点には“地獄絵図”、そうよぶべきものが描かれていた。

斬られた上に首吊りにされた死体。魔法で身体をバラバラにされた死体。辺りは彼らの血で染まっていた。



その中には、かつてはギルドの一員として共に寝食を過ごした仲間や職員もいたであろう。

それは、ハヅキ達は愚か、王都の援軍、なによりフリルにとってとても見ていられる光景では無かった。


「うぐっ………!シ、シュ、シュリさん、シュリさんっ!」


突然、アリスが血塗られた屍の館―ギルド拠点の内部へと駆ける。

アリスがむかったのはドアを真っ直ぐ進んだ先にあるとある屍の元。


“シュリさん”、そう呼ばれた彼女は最も残虐な殺され方をしていた。

大剣により胴体を正面から刺され、剣も刺さりっぱなしの状態。その剣先は壁にも喰い込んでいたという。

彼女の武器であろうか、手裏剣がいくつか側に落ちたままになっている。


「『リザレクション』!『リザレクション』!」


辺りでは、王都のその魔法を使える僧侶たちが懸命に(うしな)われた命を戻そうとしていた。

だが、傷が深すぎたのか、時間が経ちすぎたのか。理由は不明だが彼らは誰一人として命を吹き返すことは無かった。


「……アリス、さっきの人、知り合い、なのか?」


「……はい。シュリさんは、私が初めてこのギルドに来たときに案内とかその他諸々助けてくれた人なんです。」


そういいながら、ハヅキの背中に頭をくっつけ、落ち着こうとするアリス。


気が動転してても可笑しくない状況だ、ハヅキは暫しアリスをこのままにさせてやった。




「ハヅキくん、暫し耳を貸してくれないか?」


そうコノハに呼ばれ、アリスをフルールに預けたあと話を聞く。



「我らは王都からの援軍。そして我こそが我軍の隊長コノハ・アレクトである。」


「えっ、コノハって隊長なのね。それにしてもアレクトって…い、いや、なんでもない…です」


話されてもないのにフリルが会話に飛びついてきた。

だが途中でコノハの痛い視線を感じ、どこかへ駆けていった。


「えっと……邪魔が入って申し訳ないです。続きお願いします」


……俺はフリルの代わりに謝る羽目になったとさ。


「あぁ。それでだ、我ら援軍の目的はギルドの支援であるのはわかるだろう。だが肝心のギルド拠点の者は皆殺られてしまった。今この場に残って居るのは君たち四人だけだ」


彼の真剣な眼差しに俺はゴクリ、とツバを飲む。

任せられるオチな気がする。というか他に考えられない。

だがここで引き受けたら後々いいことある気がする、そう思った俺は頼まれたら引き受けると決意した。


「どうか、亡くなった彼らのあとを引き継いで前線に立ってほしい。当家から謝礼はする。どうか、たのむ。この通りだ。」


「分かりました!それでは……」


そうしてハヅキはコノハにとある提案を伝え、パーティーの皆を一部の援軍に任せて遺跡の方に歩いて行く。

俺らは精鋭パーティーとして来ているのに役立たずと化しているのが二名、補佐というか管理役も戦いには向いてないので却下。

精鋭でまともに活躍してんの、俺だけじゃないか。


・・・


―プラチナレッドは遺跡の洞窟にて感知された。

それは、ギルド本部からの最新の通達で俺達に知らされた。

援軍にアリス達を引き渡す際、彼女らも言っていた。

信頼性の高いと言えよう、仲間からの目撃情報もあるのだ。

プラチナレッドがここにあるのは間違いない。


現在俺達がいるのは蛍鏡国遺跡(けいきょうこくいせき)入り口。

目的地といえば遺跡の一番奥だという。

幸いなことに、この遺跡の形状は横長だったので、数時間もすれば洞窟にはつくだろう。


「では、提案通りに!」


「ハッ!」


コノハがそう言うと王都援軍の各小部隊はそれぞれの持ち場に散っていった。


提案―俺達の作戦はこうだ

まず、王都援軍が小隊に分かれる。

ハヅキを中心とし、8方に小隊が付き洞窟へと進んでいく。

洞窟まできたら2小隊を左右がハヅキの左右につき、探索開始。

その他の小隊によってプラチナレッドをガードする集団と戦い、最後はハヅキがトドメを刺す。


―もし何かあってもダガーという保険付きである、ハヅキを援護しながら進む流れだ。


不安しかない。あの光景を見たあとで出向くのだ。

自分も残虐な殺され方をするかもしれない。

だがギルドの代表として、やらなければならない。

これが精鋭メンバーの使命だ。大丈夫。王都援軍の援護がある。

―きっと、上手く行くはずだ。


「プラチナレッドのこと、頼んだぞ。」


浮遊感に見舞われ、決意をしたとき、コノハに改めて頼まれた。

これは俺にしかできないことなのだ。

ならば必ずややり遂げてみせる。


「はい。それは俺に任せてください。援護、頼みます。」


そうして俺達は蛍鏡国の遺跡へと一歩踏み出した。



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