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魔法使いとヴァンパイア  作者: 桃月姫
二章
14/16

0  プロローグ

結局フリルは何者なのだろうか。

忘れやすいという悪癖を持ち、素の喋りは丁寧語ではあってもザワザワとしている。

王女……だとは思うが、ならばなぜギルドの職員として働いているのだろうか。

今のギルドには三年前から務めていて、それまでは……うーむ。

訳もわからず一人考えていると、本人がまた騒ぎ出す。



「遂に我が家に帰るときが来たのね……!」


「おいフリル、家出してる中二病みたいな台詞吐くなよ。本当にそう見えてくるから」


考え事をしていても俺はすかさずツッコミを入れる。

ボケとツッコミを交わすのが最近のフリルとの間柄になってきていた。

どちらがどの役につくと決めず、その場の流れでどちらにつくか、という形であった。

毎度立場交代することもあれば、ボケが続くこともある。まぁ、いいコンビである。


「ちょ、葉月くん?私は一応この国のお偉いさんだったりするんですよ?」


ぷんすかと口を尖らせ、両手をグーにして腰に当てているフリル。

割烹着らしきものをきてこのスタイルをしている彼女を、一体何処の誰が王女様だと思うのだろうか。

信じていないわけではないが、当人の言動と格好がそう思わせてくれないのである。


「フリル、お前あれか?自分が王女なのも忘れてたのか?お前の悪癖はここまで達していたのか?」


冗談半分ではあるが、少しばかり言葉攻めを試みる。

そしていつものように早々と返しが来る。


「ちょっと葉月くんさっきから酷いですよ?!」


そういいながらフリルは俺に歯向かってくる。

コノハ王子は微笑ましそうにフリルを見つめ、何か呟いたが聞き取れなかった。


「物忘れな悪癖……?え、じゃあまさかあの御伽話(おとぎばなし)って実話なの?それも現在進行形の……?!」


「フルール、何か知ってるの?」


アリスは興味深そうにフルールの元へと駆け、まだ何も知らない子供のように目を輝かせ笑顔を向ける。

無邪気なアリスの笑顔は、誰が見ても微笑ましいであろう。


「はい、たしか『魔法の国の王女様』という御伽話で、貴族の中で語り継がれていると母から聞きました」


「んんん?ちょっと、話がズレてるような?」


突如、コユキが間に入り二人の会話を止める。

それも何か知っているかのようにだ。


「そうそう、何しに来たか聞かないといけないんじゃ?」


コユキが止めに入ったので、ハヅキはそれにのっかった。

コノハの来ている今、アリス達ののめり込みに入って、精鋭パーティーの茶番劇場を開幕するにはいかない。

国のお偉い様に、茶番で精鋭パーティーの評価を下げられてはこの先困るであろうし。


「あぁ、何しに来たかね。それは……」


「みんなご存知!ファンタジスタ帝国の中心国であるレインボー王国を治める……っはぁ……!」


兄の邪魔をし、ノーブレスで途中まで口走ったフリルは流石に息詰まったようで。

コノハはフリルの肩をつかみクイッと横に除けると台詞の続きであろうことをスっと吐いた。


「我が兄であり、アレクト家の第一王子であるアオト・アレクトの婚約者候補をお呼びして舞踏会を、というわけさ。フリルの家出期間もそれまでとなっているんだ、一応」


「ああぁ!!コノハ兄さんは家出ってうるさいです!あと一応ってなんですかー!」


フリルはツッコミの達人なのだろうか、はたまたイジられキャラなのだろうか。

俺より一個上の17という良い歳して子供のように喚いている。

コノハは慣れているのか、フリルを無視して話し続ける。


「まだフリルか六つの時だ。俺とフリルで大喧嘩をしたことがあったんだ。そしたらこいつ、家出するってきかなくなってね……まぁ周りに俺や兄しかいなくて、フリルは小さいながらに言葉遣いや行動が男らしいとこもあったんだよね。それを正そうということで母の勧めの元、将来的にも優位な料理学校に留学させたんだ」


「「「「おぉ~」」」」


精鋭の四人は声を揃えて聞きにいる。

この中にフリルの過去を知るものは居ないであろうし、身内ネタもきになるというわけで、ハヅキは彼の話に耳を傾けていた。

アリスは先程のように輝かせた目と笑顔を向け、フルールはハヅキに身は隠れながらも、興味こそ隠せずにいた。


「まだ続きは長いぞ?料理学校を卒業する頃に、丁度良い就職先があるって聞いてね。それがいまのギルドってわけなんだが。まぁ本当は卒業したら帰宅だったんだけどね、人との交流を深めるのに良いってことでここに就職させたんだ」


と、コノハはここで一息着く。

言うこと沢山あって王子って大変だなぁ、とハヅキはしみじみ思う。


「っとここで本題。」


「「前置き長っ!」」


アリスも同じように思っていたのか、心の声は共鳴した。

フリルは家出と言われたことを根に持っているのか、暫しほっぺたを膨らませている。


「あぁ、ツッコミどうもありがとう。」


そうコノハは爽やかに返し話しを続ける。


「家出中とはいえフリルもアレクトの王女だ。王家に生まれし者、国家に携わる義務あり。というわけで国の一大行事(いちだいイベント)である、兄のお見合い舞踏会に参加せねばならない。区切りもいいというわけで、その時にフリルが帰宅するように母と話をつけたんだ」


なるほど。

だから“久しぶり”の再会でギルドには三年前から居る、と言うわけか。

俺は一人でそう解析し、納得していた。


その頃フリルはやや怒り気味で、コノハを睨んでいた。


「コノハ兄さんは家出ってうるさいです!」


「フリルこそうるさいぞ、家出は家出だ……といわけだが、これは皆さんにも参加してもらいたい」


コノハ王子は妹の拗ねた発言をスルーし、真面目な顔で俺達四人の方を見つめる。

フルールは苦い顔をしていたが、国からの依頼をここで断るわけにはいかない。


「はい。是非とも参加させてください」


俺は言葉でそう答え、アリスとコユキは笑顔でコノハに応える。

理由はわからないままだが、フルールの行動はやはり後ろに隠れる一方であった。

曖昧なままではあるが、こうして精鋭パーティー初集結による、新たな冒険が幕を開けることになる






NEXT→






二章のプロローグです!!!

二章ですよ!遂に二章です。まともなネタ考えます。

「魔法の国の王女様」もいつかは短編かシリーズの一部として載せます!!

お楽しみに(๑´`๑)

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