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魔法使いとヴァンパイア  作者: 桃月姫
一章 
13/16

12 賑やかな祝いの中で

今回からは、終了時にNEXTと書くようにします


目を覚ました日の昼頃、俺達はギルドの食堂に来ていた。

そして今は昼から夕方にかけて行われる七星奪還成功プチパーティー“第一部”の最中だ。

七星奪還初成功とのことでパーティーは大いに行われ、今日と明日の二部制となっていた。

その盛り上がりといえば、精鋭パーティーの集結時よりも一層賑やかである。


「〜そうだね。何か質問があったらこうやって、ゆっくりできるうちにね」


「んーそれじゃ、ファンタジスタ帝国について知ってることがあれば」


パーティーの最中、俺はフルールに声をかけられてずっと話していた。

他のメンバーといえば、散らばって各々でパーティーを楽しんでいた。

フルールは一緒に精鋭パーティーのメンバーとして選ばれたのだ。

もし仮に彼女が召喚者ならこの国のことをそこまでは知ってないだろう。


「ファンタジスタ帝国には六つの国があるんです。本当はもう一国あるんですが……知っての通り随分と昔にもう滅んでしまった蛍鏡国(けいきょうこく)


途中、頷きながらも耳を澄ましてじっくりと聞く。

何せギルド全体が盛り上がっているパーティーの最中だ。

耳を澄まして、やっと声が聞こえるほどであった。


「それで、今も続いてるのが中心国家のレインボー王国!後他には……ストと……パル…と…………」


フルールがファンタジスタ帝国のことをこれ程知っているのは何故だ……?

冗談半分で国のことを聞いてみれば、なんでも知ってるかのように手持ち情報を放つ。そんなこんなを考えだしたら止まらない。

無論、最後の方はしっかり聞き取れず、途切れ途切れであった。

……そこでふと気づいた。

あれ、まさか異世界召喚されたの、俺一人?



その日の夜、パーティーの片付けをしていたフリルを呼び、問いただした。

片付けの途中だからか、いつもは探偵服に似たギルドの職員服を着用してるのに対し、フリルは割烹着のようなものを身につけていた。


「フリルさんフリルさん。まさかとはおもうけど、ファンタジスタに召喚されたの……俺だけ?」


「はい、葉月くんは異世界部門で選抜されましたので!あと、フリルでいいです」


「じゃあ、あの二人は何だ?何部門だ?というか異世界部門どんくらい応募来てたんだ?なんでフルールはファンタジスタのこと細かく知ってんだ?」


俺はフリルに質問のマシンガンを浴びせる。

選抜されたのだ、まさか完全にぼっちで異世界召喚されたとは思わないだろう。


「フルールさんは、新人有能力部門。アリシアさんは新人体術部門です。二人ともファンタジスタの人ですよ。あと、異世界部門の応募総数は200件超えですっ!」


そう言いお決まりの笑顔でこちらを向く。

フルールが細かく知ってることについては教えてくれなかったが、まぁそれは後でいいとして。


……もう一人くらい、同時期に召喚者いてもいいじゃないか。

少し寂しかったが、コユキも日本から来ているはずだと思った俺は、どこか安心していた。


★★★


時刻は日の出といった頃、簡単に言えば次の日の朝食後。


ついさっきまでハヅキ達精鋭パーティーの四人とコノハは七星奪還成功プチパーティー“第二部”ということで食事をしていた。

ちなみにフリルは作る側に回るから、楽しんで!美味しんで!とハヅキに言い残しどこかに消えて行ったという。


そして食事を終えたハヅキ達は、ロビーのフリースペース――通称『タマリバ』で休憩しているところだった。


「っくはぁ〜美味かった」


「いつも思うけど、ギルドの食事は最っ高ですね!」


俺とアリスは真っ先に声を上げ、ギルドの食事をこれでもかと褒めちぎっていた。

これまでも美味しい、家庭的で馴染みがかって最高!などとずっと思っていたが言う機会はなかったのだ。

しかも今回の食事はこの世界でA級グルメと言われるエビフライだらけの奪還成功パーティー。


日本では普通よりちょっとレアというB級グルメだったが、この世界では海老を獲るのが大変だったり、フライを作れる人が少ないとのことでA級に認定されている。

中でもハヅキとアリスはエビフライを大好物とする輩であった故に、いまエビフライを褒め称えていた――



「王子!コノハ王子!」


「あ、おまっ…何しに来たんだ!父上にはちゃんと援軍に向かうと置き手紙したじゃないか」


のんびりソファーに座っていたら、前の扉からコノハの執事だという者が現れた。

執事の“王子”という言葉にそのばにいたフリルとフルールを除く俺ら三人の声は


―――ハモった。


「「「えっ」」」


“謝礼を払う”と言われたときからコノハは何処か有名な貴族か何かだと思ってはいたが…まさか貴族の頂点だったとは。

つまり、王都からの援軍

―それはファンタジスタ帝国の中心国家、レインボー王国の出動というわけか。

昨夜フルールからきいた情報をもとに、俺は勝手に推測をしていた。

そのフルールといえば、嫌な予感がする…と俺の後ろに隠れようとしている。



「やはり、コノハ・アレクト王子でしたか〜」


昨日のように、割烹着らしきものを身に付けたフリルは、急に現れたと思いきやいきなり失礼な口を叩く。

食事には作る側として参加していたからか、たったの今に現れたのだ。

フリルはフンフンと鼻歌をうたいながらコノハの前に立ちはだかる。

と、数秒後にはキリっとした目つきでコノハを見てフッと微笑。


「お久しぶり、コノハ兄さん」


「「「えっ」」」


――我ら三人の思いは共鳴した。

コユキの方を見ると、この事を知っていたらしくうんうん、と頷いている。


「ああ、フリル。随分と長く待たせたようだな、すまん」


真剣でどこか穏やかな表情の二人に、俺ら他のパーティーメンバーは焦りながらもホッとしていた。

――ピリピリした雰囲気じゃなかったから……


そして俺はふと思い出す。

遺跡に向かう途中、フリルとコノハは一度会っている。

それはどう説明するつもりなのだろうか。


「え、でも精霊に照らしてもら……」


「そ、その時は気が動転しててっ……!!はっ、葉月くんの顔ですらまともに見れなかったんですよ!」


すかさず俺のツッコミをかわすフリル、流石だ。

いや、誤魔化しただけだが……お前の兄貴ならすぐ気づけよ……!

妹にすぐ気付いてもらえなかったコノハが、いや、コノハ王子が少し可哀想に思えたがフリルの性格を分かっていればダメージは弱いだろうか。

俺達がワイワイガヤガヤと騒いでる間に、執事とコノハとでの確認は済んだらしい。


それにしてもこれは一体……どうゆう事なのだ。






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