第一話ヒーロー見参。
佐野銀二
今年ヒーローになって1ヶ月。
大のヒーロー好きで、上司の言うことは全然聞かない。
高校時代はアメリカで過ごす。
ここはヒーロー署。
日本では、ヒーローも立派な公務員、皆がパソコンに向き合ったり、電話をしたりで忙しそうにしている。
すると、時計が8時をさしたと同時に、ドアが勢いよく開いた。
そして、大きな声とともに一人の男が入った。
「ヒーロー見参!」
そこには、皆が同じ制服を着ているにもかかわらず、一人だけ派手な全身タイツの男がいた。
「佐ー野ー。またお前は、一人だけ変な服着やがってー。」
「部長、これは変な服ではありません。これは偉大なヒーロー、アイロンマンのヒーローコスチュームです。」
「それが変な服だって言ってんだ。なんで支給されている制服を着ない?」
部長【田丸 強】が、鬼の形相で問い詰める。
「いや、このヒーローコスチュームのほうが格好いいからであります。」
自信満々に答えるのは、今年入って1ヶ月の新人、
【佐野 銀二】。ヒーローマニアである。
「だまれ、だまれ。毎回違うヒーローの服、着やがって。早くこれを脱ぎやがれー。」
そう言って、田丸部長が佐野の襟を掴み、無理やり脱がそうとする。
「いーやーだー。今日はこれを着て、町にパトロールするんだー。」
「認められるか、そんな変な服。」
「あ!また変な服って言ったー。くらえ!必殺、スチームバリアー。 ペッペッ。」
「うぉっ!汚いだろ。唾飛ばしてくるんじゃねー。」
そう言い、田丸部長が佐野の頭に拳骨制裁を加える。
そんな彼らの出来事は日常茶飯事なのか、皆がこの二人の行動を冷たい目と溜め息をしている。
もう気づけば、田丸部長はコスチュームを奪い、佐野は一人床で泣いていた。
「佐野君、大丈夫?」
泣いている佐野を心配してか、署のマドンナの
【長谷川 成美】が声をかける。
「成美さん、こんなやつに優しい声かけたら、勘違いして家までついてくるストーカーになりますよ。」
そんな憎まれ口を叩くのは、【中田 翔】。
この二人は佐野銀二の同期だ。
「うわーん、アイロンマーーン。あれで外に出て、悪いやつを捕まえるはずだったのにー。」
「あほっ。お前はまだ書類整理しかやったことないだろ!この、コネ入社が。」
「だからコネじゃないって、頼まれたんだだって。いいよなー、翔は外回りに行けて。」
「あたりまえだ!俺はお前と違って、ちゃんと厳しい試験を乗り越えてヒーローに就職したんだからな。」
そういって、はるか高みから佐野を見下ろす中田。
「部長~。俺も外回りに行かせてくださーい。」
佐野は部長の足にしがみついてそう言った。
「お前がこの書類を全部、今日中にまとめたら考えてやるよ。」
そう言って、山のような書類を佐野のデスクの上に置く。
「うわーん、絶対無理だ~。」
そして、佐野は一人、もくもくとデスクの前の書類に目を入れて整理していく。
【アイロンマン】
アメリカのケンタッキー州で活動しているヒーロー。
ヒーローと兼業で、クリーニング店を経営している?クリーニング業界からはスチームの神とまで呼ばれている。
必殺技は、からだ中からスチームが出る、
スチームバリアーだ。