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避けられない運命ならば~どうせなら、小物悪役を極めます! 編~

続きはありません。

ここは、前世と変わらぬ現代日本。

ごめんなさい、嘘です。


ここは、剣と魔法のファンタジー世界。

転生したと分かったのは、先日、弟が生まれ母様のいる部屋に行こうとしたところ、階段を上っている途中に私を追い抜かそうとした兄様に突き飛ばされて、階段を落ちて気絶して寝込んだからです。

そして、目覚めた時に思ったことは「あのガキ、絶対泣かす!」でした。


この世界は、前世でプレイしたことのある乙女ゲームの一つ『恋のリボンをさがして♪』という世界です。

ファンタジー世界であるにもかかわらず、ファンタジー感が全くないタイトルなのは、突っ込んではいけないとこでしょう。

ヒロインは、クレア・グローヴァル。

平民の子なのですが、高い魔力を国に認められて学園に来た美少女転校生。

攻略対象は、第一王子・公爵家の長男・侯爵家の長男・伯爵家の長男・大商人の長男です。

私は、ウィーリス・ディーキッド。

各ルートに小物悪役令嬢として出てくるウィーリス・ディーキッド伯爵令嬢その人です。

嫌がらせとしては、小物感漂う嫌がらせしかしない残念な人。

それにしても、前世も今世も『残念な人』ってなんの嫌がらせ!?


乙女ゲームでの私の最期は、『本物の悪役令嬢と一緒に処刑』『家から断絶され、どこかで野垂れ死』などなど死関連のものばかり。

『物語補正』『ゲーム補正』『ヒロイン補正』が現実に影響するのでしょうか?

ヒロインが転生ヒロインで逆ハーレムエンドを目指すなら、私がゲームのスパイスとして強制的に巻き込まれ、被害を被るでしょう。

私が断罪される要因は、『ヒロイン』です。

ですが、ヒロインだけで私を殺すことはできません。

ヒロインを愛する攻略対象たちが権力を乱用して、私を殺すのです。

ならば、どうするのか?

ヒロインの立場を乗っ取る? 顔だけの攻略対象たちを私は愛することができません。

ヒロインを倒すために特訓する? そんなのめんどくさい。

引き籠る? 社交界デビューの前にそんなことしたら、両親や家に仕える人たちに心配かけるじゃない。自分の役目を放棄するなんてできませんよ。

それならば、どうするか?

それは、とても簡単です。

私が死ぬ原因を作り上げる攻略対象たちを精神的に潰すのです♪

彼らは自分で解消しろやというトラウマをヒロインに癒されて、ヒロインを盲目的に慕うようになります。

ぽっとでのヒロインが癒せるトラウマ。

それは、自分自身がちゃんと向き合えば自分自身で解消できるトラウマなのです。

ぶっちゃけ、将来人の上に立つ立場になるものなら、自分で何とかしなければいけないこと。

その程度、自分でなんとかできないなんて、鼻で笑うしかありません。

なので私は、彼らのトラウマという傷跡を抉っては広げ抉っては広げという単純作業をすれば、きっと大丈夫♪


私が兄様に階段から突き落とされて数日後、両親から事情聴取されました。兄様もいます。

きっとおそらく、兄様は自分の都合のいい言い分だけを言ったのでしょう。

兄様は私をものすごい目で睨みつけて、「俺は関係ないって言え」と目で言ってきます。

この馬鹿は、両親や傍で控えている執事のセバスチャンに見られてるのも気付かないのでしょうか?

ゲームでのウィーリスは兄様による無言の圧力に屈して「自分が階段で躓いて転んだ」と言ったのですが、私は兄様の圧力をものともせずに「兄様に階段から、突き落とされました」と言いました。

そういうと兄様は、

「お前、妹なんだから僕を庇えよ!また、お仕置きされるじゃないか!」

と自分勝手なことを言ってきました。

それを聞いたとたん、両親は般若の形相をしました。

セバスチャンは無表情です。

美形の無表情は、無駄に怖い。

兄様は泣きながら、セバスチャンに連行されていきました★

両親は、攻略対象たちの両親と仲が良いです。

数年後は、互いの子どもを交えた顔合わせでしょう。

なので、私はお願いしました。

魔法や護身術などを習いたいと。

私にはまだ早いのではないかと両親が説得にかかってくるのですが、「父様と母様のお友達たちに、もうちょっとしたら会うって聞いてます。その時に、兄様みたいな乱暴者がいたらまた同じ目に遭ってしまいます」と言えば、両親は考え込んでマナーなどの勉強も同時にできるならしてもいいと許可をくれました。

それを聞いた兄様は私にできるはずがないと鼻で笑って馬鹿にしました。

前世持ちの残念系小物悪役を舐めるなよ!

小物なら、小物ならではの意地を見せてやります。


私は兄様の予想を反して、習い事を順調にこなしていきます。

ゲームでのウィーリスは一属性の魔力の持ち主でしたが、今の私は全属性の魔力を持っています。

私の魔法の先生が、スーパーチート執事セバスチャンだからですよ!

いくら私が小物悪役令嬢設定でも、ヒロインの当て馬になるぐらいなのだから、スペックがそれなりに高いのではないかと予想をつけたのですがその通りでした。嬉しい誤算です。

そして、決戦の日。

攻略対象に近づいて、さり気にトラウマに触れ、傷跡を抉りまくってやりました☆

奴らは泣きわめいて、父親や母親に私にやられた泣きついていたのですが、「女の子に何か言われたくらいで泣いて情けない」と全く取り合いません。

すごいです、セバスチャン。あなたの指導は的確ですよ!

兄様のトラウマは家族で同じ家にいるので、いつでも好きな時にベリーイージーでさらにヒドくできます♪

もちろん、弟にはしていません。

トラウマになりそうなところをトラウマにならないように兄様のような性格にならないようにセバスチャンに手伝ってもらって誘導しています。

可愛いは正義なのです!

弟が勉強から逃げだそうになった時は、お菓子で釣って逃げないようにしています。

実は私、前世でパティシエだったのです。

この世界のお菓子はあまり美味しくない。

なので、私なりにお菓子作りを追求したのです。

前世で読んだ小説だと、お菓子を使ってなんとかとかよくあったのですが、私は弟が勉強から逃げないようにするためだけに使ってます。

自分の利益追求ですよ!

まあ、あとになって私が作ったお菓子は両親が信用のできる商人に持ちかけて流行らせたことを知るのですが。


あのあとも、攻略対象たちに遭う機会があるのですが私はことあるごとに、トラウマを刺激して抉っていきます。

彼らはもはや涙目。私に逆らう気力もなし。

そこに、モブ子登場。

彼女の言動を見ると、どうやら転生者見たいです。

ヒロインの位置乗っ取りですね。

ですが、彼女の思惑通りにはいきません。

モブ子はゲームの攻略通りに動いているのですが、それが原因で攻略対象たちはトラウマが面白い具合に広がっていきます。

弟はというと、モブ子に不快感を露わにして二度と自分に近づくなと言っていました。

ちなみにトラウマの刺激だとたいそうな表現をしていますが、要は小物感満載な嫌がらせですよ?



月日は流れ、乙女ゲームの舞台『ハイドラージュ学園』に入学しました。

そして、相変わらず攻略対象たちは私の顔色をうかがうように学園生活を過ごしています。

弱い者いじめより強い者いじめが好きなので、少しやりすぎたなと思わないでもない。

だがしかし、ゲームでの彼らの私に対する扱いを鑑みるとやっぱりもう少しやった方がよいのではないかと思う。絶対に!

二年後、弟とヒロイン様が入学してきました。

ヒロイン様の年齢上、私と同じ学年になります。

ヒロイン様と偶然、二人きりになった時に

「あっ、残念な小物悪役令嬢!」

「クレア様、ひょっとして転生者ですか?」

腹の探り合いに関わりないクレア様なら、直球で言ってもいいでしょう。

「いきなり、本題!?まあ、そうだけど。それにしても、あなた本当に残念感満載ね。実はね、私はこのゲームのライターで小物悪役令嬢の性格は私の前世の親友をモデルにしたの」

それを聞いたとたん、私は崩れ落ちました。

「やっぱり、前世の私をモデルにしてたんかいぃぃぃ―――!」

「マジで!?それにね、見た目では分からないドS性格なのよ」

私はショックで地面を叩きながら泣きました。

マジで前世の私と変わらぬ性格だよ!

「ドSの自覚があったんだ...」

私とクレア様は人に聞かれないようにするために、私の寮の部屋に行くことにしました。

私の部屋はもちろん、防音・侵入者対策済みです。

以前、私の部屋に入った侵入者は私付きのメイドによると泣きながら逃げていった者と腰を抜かして立てなくなった者がいたそうです。

情けないですね。

私とクレア様は、転生後のこと現状のことを報告し合いました。

私が攻略対象たち(弟以外)にした地味でトラウマを抉る嫌がらせのことを言うと、

「あんたのそのドSな性格は、死んでも治らなかったのね―――!」

と意味不明なことを言って泣きだしました。。

ドS りょくを全く発揮していないのにな...なぜでしょう?

クレア様は帰り際に、

「私はヒロインなんて絶対にしないし、あんたを死に追いやらないんだから、そのドSな性格は攻略対象たちだけに向けてよね!奴らは、ヒロインのためにある存在なのよ。私の代わりに餌食になるなら、きっとそれが本望よ」

確かに乙女ゲームの攻略対象たちは、ヒロインを幸せにするためにいる存在なのだから彼女の発言はあながち間違いではない。

でも、ヒロインなのにそんな発言をしてもいいのでしょうか?



その後、モブ子主演による物語『攻略対象たち(弟以外)を攻略しよう』が学園編に入ったのですが、モブ子がより深くトラウマを抉る様子にヒロインが大爆笑していました。

読んでくださり、ありがとうございました。

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