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生贄になった俺のけしからん二週間  作者: 荒川 晶
第二話 セイント戦争
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セイント戦争 その1

 真っ暗なこの世界で、朝チュンなんて物は存在しないのだろう。俺はそんなことを思って瞼を開ける。眩しさがないことは、ここは俺の部屋ではないことを意味している。何故かって、俺の部屋は朝日がガンガン入ってくる間取りになっていて、それが目覚まし代わりになっているくらいだ。目覚ましもなく目を覚ましたのは、明らかに前日、寝すぎたせいだろう。


 どうやら前日の事は夢ではなかったようだ。一度寝て、起きてみれば元の世界に戻るかも、なんて夢落ちを期待した俺は浅はかだったと言えるだろう。昨日と何も変わらない、薄汚い部屋――否、監獄だった。

 時計がないので、時間もわからない。わかったところでこの部屋から抜け出すこともできないのだから、意味はないのだが。自分の位置や状況がいまいちわからないということはこんなにも、頭にもやがかかるものなのか。もやと言うより、不安に近いのかもしれない。こんな不安今まで感じたこともないので、それを不安と呼ぶのかすらもわからない。


 俺は目をもう一度閉じた。何故、昨日の話をすんなり受け入れられたのかが自分でも理解不能なのだ。もしかすると心のどこかで、「どっきり大成功~」なんてことを期待しているのかもしれない。受け入れたというより、わけがわからなすぎて、いまいちピンと来てないだけなのかもしれない。仮に本当にここが異世界で、変なルールの下にいるとしたら、かなり厄介な場所にいるのかもしれない。それだけはわかった。

 そして今のところ何故か男の姿を一度も見てないのだ。これは俗に言うハーレムなのかもしれないが、お触り厳禁らしいので、生殺しハーレムだ。だったら普通の生活をしている方がマシというもんだ。まあ、そんな冗談はさておき、何故男が見当たらないのだろう。それはそれで不安になる。何度かハーレム状態の所に身を埋めてみたいと考えたことがあるが、それは男がいる前提だ。女だらけなんて恐ろしいだけだ。


 今日の質問は決まった。何故男がいないのか。そのことに尽きるだろう。そして何としてでも状況を把握したい。何故ならこんな不安定な環境は精神的によろしくないからだ。さっきから俺の考えていることなんて、「なぜ」「どうして」「わからない」の三連発だ。これを人は不安と呼ぶのかもしれない、なんてちょっと哲学的なことを考えてみる。


 そうこうしてもうひと眠りしようか悩んでいた頃、檻の外が幾らか賑やかになってきた。どうやら女共も動きだしたようだ。

 俺は眠ることをやめ、目をぱちりと開いた。昨日の、あの、ここを動物園扱いしてきた女の声が近付いてきたからだ。

 脳が臨戦態勢に入った。ぱっとベッドにあぐらをかいて座り込むと、案の定、金髪の女が取り巻きを連れてやってきた。


「あら、おはよう。お猿さん。檻の中の居心地はいかがでした?」


 取り巻きのくすくすとした笑いの中、俺は怪訝にただ睨み返した。こういう場合何も言わないのが正解だ。


「あら怖い。皆さん、あれが男と言う名の猿ですよ」


 これは俺個人に向けられた言葉なのか、男全体に向けられた言葉なのかはっきりしなかったが、はっきりしたことは一つだけある。こいつは明らかに喧嘩を売ってきているということだ。

 イライラとして、それでも俺は我慢した。何も言い返さないでいると、相手もいらついてくるはずだ。俺だけがいらつくのは性に合わない。同じ目に合わせてやる。

 俺はそう心に決めると、ふうと息を一つ吐き、また横になった。


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