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プロローグ

――いけ、アイツに付いて行くんだ!!」



 数m先にいるバットを持った男子生徒を指差し、隣で床に座り込んでいる女子生徒に言い放つ。


「わ、分かったわ」


 そう答え、おぼつかない足取りで血でまみれた廊下を走り行く。背後にもう奴らが来ているのが気配で分かる。




「君も来るんだ!!」


 バットを持った男子生徒が女子生徒の手を取り、俺に言葉を投げかける。だがその話には乗れないな。


「俺は行く所がある!!」


「でも、うし「大丈夫だ!!逃走経路は図ってある!!」



 男子生徒の言葉をさえぎり、自分の意見を押し通す。俺の言葉にそいつは声を出すことを止め、


「絶対に生き残れよ!」


 そう言い放ち、背を向けて走り去っていった。 





「……まぁ、逃走経路なんて図ってないんだよね」



 そういいながら後ろを振り向く。そこにはピンクの肉を露わにし、白い制服はまるで元から赤色だったかのように血で染まり、血の気の無い色の肌と青黒くなった瞳をした人達。いや、人の形をした動く肉塊が八人ほどが学校の廊下を塞いでいる。







―それらはまさしくゾンビであり、自分の慣れ親しんだものとは違っていた。


奴らに噛まれたら三十分~二時間以内にゾンビとなる。


首筋、または肩を噛まれた場合、五分から十分ほどでゾンビとなる。


視覚はほとんどが無くなり、聴覚もしくは嗅覚で生物を判別する。


一度死んだことで脳のリミッターが外れ、体が腐った奴以外は普段の数倍ほどの筋力を有する。





 この平和が満ち溢れ、だらけきった現代の日本に突如現れた災厄。皆が狂い、喰われ、泣き喚いている間、目の前のゾンビを見て俺は一人思った。




「ほんと、蘇生魔法とか聖魔法覚えておけばよかった」



 でも使えないものはしょうがないと思い、腰に右手を掛ける。そして



「まずは一体!」



 引き抜いた鉈でゾンビの首を刎ねた。



「セイヤ!!」



 続いて隣のゾンビの噛みつきをしゃがむことで避け、足を切り飛ばす。足をなくし、体勢の崩れたゾンビの首を切り上げで刎ね飛ばし、目の前のゾンビの手と足を絡ませて組み伏せる。倒れたゾンビの頭に向かって足を伸ばし、



 グチャ


踏みつけた。ピンクの脳みそに白い骨片。そして脳漿が飛び散るも気にせず左手を腰に伸ばし、包丁を逆手に持つ。




「とお!」



 包丁を隣にいたゾンビの目に突き刺す。脳まで達した感覚が手を伝わり、包丁から手を離す。


「残りは、四人か」




 残った四人の配置を見て、いける。そう確信した。




 腕を伸ばし、襲ってきた奴の首を刎ねる。首をなくしたゾンビの胴体を蹴り飛ばし、二人のゾンビが地面に倒れる。蹴り飛ばした胴体に当たらなかったゾンビが腕を振り下ろしてくるが体を逸らすことで避け、空振りしたゾンビの手を取り、もう片方の手で後頭部の髪の毛を掴み、足を払う。



「チェスト」



 ゾンビの頭が床に当たる直前に髪の毛を掴んでる手を離し、掌底にして頭を叩きつぶす。肉が千切れる音、鼻の骨が粉々に鳴る感覚、頭蓋骨の割れる感覚が手を伝ってダイレクトに伝わる。だが、いつものことだ。



「あと二人」



 起き上がったゾンビの顔を鉈の峰で叩き割る。



「あと、一人!」



 そして起き上がろうと上半身を起こしたゾンビの脳天に鉈を叩き込んだ。






「やっぱり色々とち……こりゃぁ、やっちまったな…」



 どうやらやりすぎたようだ。壁にゾンビを打ちつけた音。ゾンビの頭蓋骨を割った音を頼りにゾンビがよってきたようだ。前方に三人、後方に4人のゾンビが歩いてきている。コレぐらいなら無傷で制圧できるだろう。だがここで戦ったらそのときの音でまた違うゾンビをおびき寄せてしまうかもしれない。ならば、やることは一つしかないな。



「ここは、三階か…」


 すぐ隣の窓から顔を出し、下を除く。窓の先は芝生の生えた中庭がある。ゾンビも数人程度。


「よし、やるか」




 最初に背中のリュックを放り投げ、ゾンビをおびき寄せる。そしてゾンビがリュックに向かっていったのを確認し、窓枠に足を掛けた。



「俺は、鳥だ!!」



 なんとなくノリでそんなことを叫びながら空中に飛び出す。世界がスローモーションになり、地面がどんどん近づいてくる。


 まずは両足を地に付け、完璧にしゃがむ前に両手を地面につけて肩、腋、腰へと衝撃を分散させ、勢いと共に立ち上がる。そして



「リュック返せゴラァ!!」




 走りながら囮のリュックに群がっていたゾンビの首をまとめて刎ね飛ばした。



「うっわ、リュックが返り血でベットベトなっとる。いや、今更か」


 そう愚痴をこぼしながらリュックを開け、携帯を取り出す。



「…相変わらず圏外か。まぁいい。まずは帰宅するか」



 そういいながら俺―望月雪人もちづきゆきとは校門に向かった



 

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