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06 呪い

呪い



残された竜輝は人事のように今の話を見ていた。


しかし、話された内容が進むにつれて意識をこちらに移していたようだ。


自分の能力を高めて遠くの話を聴く能力だ。


二人には『聞こえない』と思っていた。


けれども、すでに知ってしまったらしい。


男は竜輝の能力の発達を甘く見ていたことを知る。




「今の話は本当なの」


「ああ、隠してもしょうがないからな」


予定より少し早いが知られてしまった。


知られたからには隠しても意味が無い。


ここは、正直に伝えて信頼を得ることが重要だ。


「それじゃ母様が調子悪いのは僕のせいなの」


「その通りだ、ついでにいうならお前の姉さんも今のままでは二ヶ月だ」


「そんな、・・・ぼくなんて生まれてこなけりゃよかったんだ」


「ばかなことをいうな。だれもお前を産んで後悔してるものはいない。姉さんにして

 も自分の命を削って助けようとしてたじゃないか」


「でもそんな、姉さまを殺して生き延びても」


「俺はなんでここにいる。なぜいまここにいるんだ」


「僕に魔法を教えてくれるため」


「そうだ、無意識下の暴走を抑えるためにおれはお前に教えにきたんだ。俺を信用し

 ないのか?」


「・・・・・・・・・・・・・・信用します」


「よしそれじゃ早速修行に入るぞ。まずこれを持つところからはじめろ」


そういって風船をなげてよこす。


竜輝が風船を受け取ると、すぐにしぼみ始める。


「どういうことなの」


「それだけ魔力を吸収してるんだ。風船を膨らますように力を注いでみろ」


しばらくにらめっこしていたが改善の結果は全然なかった。


あれから、もう五・六個吸い尽くしていた。


「力を入れるんじゃない。力を抜くんだ。体の奥から入れてる力を抜くんだ」


「え、力を注ぐのじゃなくて抜くの?」


「そうだ、力を注ぐというのは負の力があふれてきてるのだ。今の力は本来とは逆に

 働いている。だから風船に力を込めるのじゃなく風船から力を吸い取るようにイメ

 ージしてみろ」


そういわれてイメージを切り替えたようだ。


風船は現状を維持するようになった。


「そう、それが中立だ。そのイメージが固まるまでしばらくそうしていろ」


そう言って、そこを離れ部屋に入る。


男の干渉範囲に反応があって、離れに人が近付いていたからだ。


当然、近付く人は限られていた。


しおりの命令で乳母さえも遠ざけられていたからだ。




予想通り、父親と娘が廊下を歩いてきた。


「おや、お嬢さんから事情を聞いたようですね」


「ああ、あまりのことに信用できないのでね」


「話したことは事実です。はっきり言いましょう。奥様は一~ニヶ月の寿命と宣告さ

 れてるのでしょう」


「誰が話したのだ、医者には口止めしておいたのに」


その事実にしおりのほうが反応した。


「お父様それは事実なの」


「すまぬ、あまりのことに言えなくて」


「そんなぁ!、お父様に秘密にしてたことがあるの」


「なんだ、」


「私の命もあと二ヶ月といわれてるの」


「なんだと、どういうことなんだ」


「頭のなかに腫瘍が出来ていてどうしようもないらしいの」


「どの医者だ」


「火のかかりつけの医者なの」


「なぜうちの医者にかからなかったのだ」


「うちの医者ではお父様に知られてしまうから」


「それじゃわしは妻と娘を同時に亡くすのか」


「なにを嘆いているのだ。それを防ぐためにおれは呼ばれたのだぞ」


「「だれに」」


「決まってるではないか。そなたの恋人に」


「なんで、悟さんがあなたと」


「なんだと、悟というのは火の息子じゃないかいつのまに」


「うるさい、親子喧嘩は後でやれ。俺の言った条件は実行してもらえるのか」


「本当に妻と娘を助けられるのか」


「はっきりいう、俺の力じゃ無理だ」


偉そうな事を言っていたが、これは事実だ。


いくら男が魔法を駆使しても治せないものはある。


現象だけでいうなら『腫瘍』の一言だった。


しかし、それを誘発している原因がある。


それを、取り除かなくては単なる延命だ。


「なんだと、それじゃきさまはえらそうに!」


「だから俺の力じゃ無理だといってるだろ。だが手段が無いわけじゃない」


「どういうことだ、それは」


「それだけの力を持ったものが近くにいる」


「それは、誰だ」


「決まってるじゃないか」


男は、庭の竜輝の居る方をチラ見する。


見えないが、その意味を察したらしい。


しおりが答えた。


「まさか、竜輝では」


さすがに先ほど話しただけでその意味がわかったようだ。


「本当か、竜輝なら直せるのか」


「当然だ。二人の不調は竜輝の呪いといってもいい。かけた本人にしか解けない」


「呪い?」


「本人が無意識に発動させたものだ。別に恨みとかそういうものじゃない。自分の境

 遇にたいする怒りのようなものだ」


力が無いことに悲観した想い。


それが、力のあるものを攻撃した結果だ。


それも、同世代が集中的に狙われた。


母親と姉は近くにいたから特にその被害を直接的に受けただけだ。


離れたものは身体の弱い部分にその攻撃を受けて蝕まれていた。




「どうしたら解けるの」


「魔法を完全に制御することだ。そのために荒療治するしかない」


「それが人払いなの」


「当然だ。大きな爆弾を扱うのだ。近くに邪魔するものがいては怖いからな」


「お父様、今のを聞いたわね」


「だが、竜輝はどうなるんだ」


「あれだけ大きな器だから失敗すれば里は壊滅、成功すれば頭首だ」


「それは、どういう意味だ」


「そのままだ」


「まさか、そんな!」


「当然じゃないか。里全部を統べる器だ!ちっぽけな水の当主で収まるわけがない」


「竜輝はそんなすごいの?」


「ああ、うまくいけばな。だから邪魔はしてほしくない」


先の判らないギャンブルに投資するような物だ。


しかし、二人にとっては闇の中に見いだした光明に縋るおもいだったらしい。


「お父様、賭けましょう。この方ならなんとかしてくれるかもしれないわ」


「そうだな、すべてを失うことを考えれば選択肢は無い。まかせてみようか」


おおむね、男の望み通りの結論を引き出すことが出来た。



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