04 魔獣
魔獣
現在の竜輝は、覚醒する前の魔獣だ。
それを、どのように教育するのか?
それが一番の問題だった。
魔獣は、うまく育てば最高の術者になれる。
そのためには、吸い込む生命力が近所に居ない。
そのことが、重要だった。
男はその環境をどうやって作るのか思案していた。
これは世間に知られれば『妖魔』とか言われる異端の魔法になる。
魔術師の常識を超える魔術師という意味だ。
問題は竜輝の器の大きさだ。
大抵の魔法使いは魔力を自分で作る。
だから休憩すれば自然に魔力は回復していく。
いや世間の常識に当てはめれば、それが常識だった。
だがこの子供には魔力を作る機能がない。
ある意味、回復能力の代償に器の大きさを与えられたような物だ。
男は、いままで多くの子供を経験してきた。
だから、わかることで結構やっかいな存在だ。
生成属性を持たない代わりに、他人の魔力を喰らう。
『妖魔』と言われる所以だった。
大半のそういう子供は『魔力が使えない』と知って才能を閉じてしまう。
そのまま一生魔法と関係なく過ごせた子は幸せだ。
問題は何らかの事情で魔力を吸うことを覚えた子供だった。
魔力と生命力は表裏一体のもの。
そのため、知らずに近くの生命力まで吸い取っていく。
『魔獣』は管理能力を失った『妖魔』のことだった。
そういう子供の近くではまず母親が早死にする。
そして、父親、兄弟・姉妹などが死ぬ。
最後に本人が残されるケースが多い。
やがて自分を恨み、人を恨む。
犯罪者となっていくケースがほとんどだ。
ひどいときは、妖獣あつかいになる。
魔術師の妖魔ではなく、かつて存在していた『魔王の手下』という意味だ。
まあ、どちらも人間界では同じ意味なのだが・・・
男がやむおえず始末したことも数回ある。
今回は、勘のようなものが働き知り合いをたずねた。
結果的に、この場に居合わせることが出来た。
最初に会った子供が魔獣だ。
これは『運命』というべきなのかもしれない。
話を聞くとすでに母親は犠牲になって病弱で寝込んでいる。
子供心に母親のところにいつも通っているようだ。
まさか自分のせいで母親が不調になっているとは思っても居ないだろう。
下手に教えて、隔離するわけにもいかない。
父親のほうはあまり頻繁に会っていない。
その関係で、まだ大丈夫なようだ。
『姉がいる』とのことなので見て見たい。
しかし、この家のしきたりらしい。
旧家なら当たり前か。
年頃の女性がおいそれと客人に会える訳はない。
簡単には、会わせてもらえないだろう。
今最善な事は、いち早く竜輝から信頼を得ることが最優先だ。
いま、暴走に到ったら男でも止めようがなかった。
男はしばらく風船遊びをしていた。
風船10個ほどの魔力を吸い取られてしまった。
まずこの子に自分の特徴をつかんでもらわなければならない。
そこで自由に魔力を吸わせた。
同じ魔獣でも、好みの魔力があるのは当たり前。
腹が減っているときは、どんな料理でも美味しい物だ。
好みが出るのは、ある程度余裕があるときに決まっていた。
さすがに魔力0では 判定が出来ない。
そこが苦労するところだ。
やがて魔力を吸収したところでようやく判定ができた。
色は白だ。
それは、意外な色だった。
普通、魔獣は攻撃色が強い。
それが特徴だ。
本能に根ざしたものが強いからだ。
生物の本能からするなら、攻撃を選ぶのが当たり前だった。
思い当たるのは、この家は水の家系だ。
それが幸いしたのかもしれない。
火の赤、電気系の黄色、水・冷気系の青が多い。
それなのに、この子はどれにも染まらない白だ。
魔獣なのに『治療系の魔力の持ち主』というところが皮肉だった。
見方を変えればこの場に呼ばれた運命を感じる。
さらに、別の見方をするなら最悪の白だった。
白ということはどの色の魔法も吸い取る。
魔力と言うより、それ以前の生命力その物を吸い取ると言った方が正しい。
近くにいる人々の生命力を確実に吸い取っていく。
もう少し遅れていたらその被害はどれほどのものか。
それは、想像できなかった。
先ほどの乳母も元気が感じられなかったのが当然だ。
そして影の護衛の影が薄かった。
それも、当然といえば当然だ。
おそらく何人も調子を崩して交代してる事が考えられた。
家庭教師が何人も代わったのも当たり前だ。
こんな化け物のような子供にかかわれば、少ない魔法力は吸い尽くされてしまう。
普通村の家庭教師は実践で使えない魔法使い達が経験から行う。
その者達が後進の指導することがほとんどだ。
だから家庭教師をするものたちは、ほとんど強い魔法力は持っていない。
それがこの子供につけば、結果は火をみるよりあきらかだ。
それこそ家庭教師としての自信さえなくなっただろう。
竜輝が、魔法を一生懸命使おうとすればするほど吸収力が増す。
だから怖い存在だ。
まずは魔法を維持させることを覚えさせなければならない。
そうしないと、男の魔法力も無尽蔵に吸い尽くされてしまう。
ボール遊びになれたせいか初めて会ったときの顔色から少し上気していた。
そして、子供らしい顔になった。
そのとき女中がおやつと飲み物を持ってあらわれた。
「あら、ぼっちゃま、今日はすごく調子がよさそうですね」
「うん、ばあや、この人と遊ぶとすごく調子がいいの、姉さまと遊んだときと同じだ
よ」
注ぎ込んだ魔力は普通の魔力玉10発程度だ。
だから並みの魔術師ならそろそろへたばる頃だろう。
そう考えると、竜輝の『姉』というのはすごい。
これだけの魔力を吸い取られて平然としているようだ。
だから、たいしたものなのだろう。
男は『一度会ってみたい』と考えていた。
男が、そう考えて女中の人と雑談していると
「お前が新しい家庭教師なのか」
ややきびしい口調で女の人がはいってきた。
姿はすごく可愛い。
しかし、いかんせん顔色が優れず体調もよくないようだ。
それに男勝りを感じる。
態度や言葉使いに粗野を感じさせた。
せっかくの可愛らしさが台無しだ。




