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03 竜輝

竜輝



男の言葉に疑問を持つ親だ。


「お前はうちの息子に魔法を教えるといったが、うちの息子に魔法が使えるのか

 ?」


「もちろんだとも。だが誰が教えたのか使い方がなっちゃいない」


「いままで数人掛りで教えたが、だれもみな『うちの息子には才能がない』とさじを

 投げたのだぞ。それでもいいのか?」


「だから、その子は類まれなる才能の持ち主だ。見るからにもったいないから、つい

 声をかけただけで、いやなら別にほかの子供にするだけだ。俺はなにも無理やり教

 えようとしてるわけじゃない。」


「すまん、つい今までの経験でわしに取り入ってくるものと勘違いして、教えてくれ

 るなら場所と食事ぐらいは提供しよう。魔法が使えるようになったら他の人に紹介

 もするし謝礼は弾む。たのむ、息子に魔法を教えてやってくれ」


男は、そういってきた。


おそらく、わらをもすがる心境なのだろう。


それなりの身分の男が、見ず知らずの旅人に頭を下げた。


背景としては『宗家の息子が魔法を使えない』というのが大問題なのだろう。


俺はいきなり当りを引いたようだ。




家庭教師を数人雇っても教えることが出来ない。


『才能が無い』と真剣に思っている。


そんなところに、類まれなる才能と言い切った家庭教師だ。


おまけに才能が惜しいから教えさせてくれという。


親なら天にも昇る心地であろう。


失敗しても金はいらないという。


だからためして見る価値は十分だ。


おれは、家庭教師をしながらこの里の魔獣を探せばよかった。


宗家の一つにいきなり入ることが出来た。


幸先の良い事だ。


これで探索がやりやすくなった。




「今息子は九歳だ。十二歳になるまでに教えてくれればいいが、大丈夫か?」


男としては2週間をめどに考えていた。


普通の家庭教師は、子供の才能開花までを行い半年程度で終わる。


男のやり方は、それを遥かに上回る方法で教えているからだ。


その男の予想を遥かに上回る時間の指示に驚くよりあきれた。


「もちろんです。必ずすごい魔法使いにしましょう」


その返事を聞くと男は満足そうに頷く。


そして、声を出した。


「この客人を離れに案内してやってくれ。丁重にな」


背後に居る男に掛ける声ではなく、大声で言う。


すると、男の背後から声が聞こえた。


「承知」


振り返るといままで背後に人が居なかった。


そこに、姿をあらわしている。


『子供を一人放り出していた』と思っていた。


現実には、影の護衛がついていたようだ。


ネズミは、村の警戒ではなく子供のガードと知った。


しかし、影の護衛が男に姿を見せた。


そのことで、仕事がやりやすくなる。


男としてはこの影に類する気配が『影の護衛』と判ったからだ。


たいていは、護衛の者たちは同じ訓練をしている。


必然的に似たものになるからだ。


それ以外の気配は、屋敷外の隠密だった。


男の意識は多数の護衛?の全てを把握していたからだ。


現に、護衛以外の流派のねずみが数匹こちらの様子を窺っている。


『特定出来ない』とは、そういう意味だった。




護衛に連れられて、屋敷に案内される。


そこは独立した『離れ』だ。


『離れ』といっても普通の家より遥かに大きな家だった。


すでに人がいた。


家に入るとすぐに女中がお茶を持ってくる。


その準備の良さに驚くばかりだ。


お茶は、湯を沸かして入れることを考えればその意味が判るだろう。


子供は女中になついていた。


ひょっとすると、かかりつけの乳母なのかもしれない。




男は、早速子供を連れ出して庭で風船遊びをする。


子供は『遊んでくれる相手が出来た』と喜んでいるぐらいだ。


勿論、ただの風船ではない。


これが、短期間で男が家庭教師を行う秘策だった。


傍目には紙風船に見える。


けれども、空気を魔力で凝縮させている。


それを偏光させて、風船に見せただけのものだ。

 

風船そのものは男の魔法で作る。


だから、簡単に壊れるものではない。


しかし、念のために紙で覆いをしておいた。


これで子供に魔法を無意識に覚えてもらう予定だった。


それと、魔法の中の適正を探し出す。


相性の悪い魔法ほど強く弾かれた。


ところがその風船はあっというまにしぼんでしまう。


風船に溜め込んでいた魔力を、吸い取られた。


弾くどころか、吸収してしまうほど相性が良い?


この場合、貪欲に『喰らった』と言った方が正しいのか?


男は目の前の子供が『目的の魔獣』と気付く。


紙を介してさえ魔力を吸収してしまう。


通りで今までの家庭教師がみんな失敗したわけだ。


心因はこれだった。




この子供は魔法を吸収する。


いや、魔獣の本質だ。


完全に覚醒していない初期状態だった。


男は運のよさに感謝する。


最初に出会った子供が『魔獣』というのはものすごい確率だ。


それも、まだ発現する前の白紙状態だった。




もっとも、すでに『魔獣』としての被害は出ている。


目の前にいる乳母は、見たところ一番の被害者だ。


明らかに身体を壊していた。


魔獣に生気を吸われていたからだ。


まあ、当然といえば当然だ。


近くに居て、子供の面倒を見ている。


被害が大きいのは当たり前だった。




子供の身内には父親以外、まだ会ってない。


けれども、竜輝の身内は当然被害にあっているだろう。


案外母親などは最初にやられているものだ。


男はその辺を確認する。


「お母さんは元気にしているかい」


男は確認のために竜輝に声を掛けた。


「あまり調子が良くないけど、お母さんを知っているの?」


どうやら、母親はまだ元気なようだ。


思ったより被害が小さかった。


当然、母親は魔獣に『喰われていた』と思ったからだ。




「知り合いではないけど、無事ならよかった。兄弟はいるのかい?」


男の質問に、竜輝は無邪気に答える。


「姉さんが一人だけだよ」


「元気にしているかい」


「お母さんと一緒で少し病弱なの、でも強いよ」


男ははその言葉でほぼ事情を察した。


子供は二人だ。


姉は魔法が使えない竜輝に変わって家を継ぐ。


そのために、随分鍛えられたのだろう。


しかし、竜輝のために生命力を喰われている。


父親が元気だったのは幸運だ。


公務に追われて竜輝に接触していないからだろう。




問題は、竜輝をどのように鍛えていくか。


まだ自分の本性を知らない子供だ。


下手にそのことを教えると失敗する。


返って暴走に到る。


もっと、信頼を深めてからでなければならない。


自分が『母親や姉を喰らった』と知れば間違いなく自分を拒絶する。


精神を殺すようになれば、本能がその身を守ろうと動く。


そうなれば、制御を離れた力は際限なく生命を喰らい続けるからだ。


男の力でそれを止める事は不可能だ。


その時は、竜輝を殺すしかなかった。



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