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02 出会い

出会い



村にむかって、支流に当たる川沿いのなだらかな道しばらく歩く。


途中に、10歳ぐらいの男の子がいた。


なにやら一心不乱に川面を見つめている。


男の目には彼がなにをしようとしているのかは一目瞭然だ。


魔法で川の水を動かそうとしている。




しかし、男の目から見れば、完全な力量不足だ。


いや力量不足というと将来動かせるかも知れない。


だから、正確にいうと『無駄使い』というものだ。


それは空を飛べない人間が自力で空を飛ぼうとして手を振る。


そんな行為に、よく似ていた。


どう足掻いても、不可能なことだ。




魔法で川の流れを変えることはできる。


しかし、それはその方面の相性と魔法力と魔法形態が一致したとき可能なこと。


水を動かすのだから、当然水系の魔法力が必要だ。


その上に遠隔操作系の魔法力も必要なる。


ところが、彼には水系の魔法力も無い。


さらに、遠隔系の魔法力もない。


動かせる訳がなかった。




魔法には 水のほかに 火、雷、冷、時間、空間、治療などがある。


そして、使用形態に 放出、遠隔、接触、吸収などがある。


攻撃魔法などは放出系が主だ。


放出系は、遠距離攻撃が出来て有利に思える。


ところが、実は接触系が一番有利だった。




放出系は見た目は派手だ。


けれども、実際には威力が距離に反して弱くなっていく。


現実は、10メートルも離れればダメージは与えられない。


中には魔法弾のように狭い空間に魔法力を詰めて投げる。


そのようにすることも可能だ。


けれども、そんな能力はきわめてまれな特殊技能だった。


同様に弓矢などに属性をつけて打つことも出来る。


しかし、それも同様だ。


魔法世界では『特殊な扱い』とされていた。


『属性付与魔法』という特殊分野だった。




中には、ある程度高い魔力を持つ者や、それらを自在に操るものも居た。


そんな能力者は大抵宗家の主に納まっている。


だが、そのようなものでも二種以上の魔法を扱うものはほとんどいない。


火なら火でいろいろな操作はできる。


けれども、『火と雷』とか『治療と空間魔法』などを兼任する者は皆無だ。


そのようなことは『出来ない』とされていた。


それが出来るのは、『魔獣』といわれる魔力が暴走した経験者だけだ!


『魔獣』というのは、魔力が暴走して管理を離れた異常者のことだ。


そして、暴走は力が強くなければ起きなかった。






男の目から見れば、彼が水を操作しようと苦労している。


しかし、系列の違いからそれは今はまだ出来ないのがわかった。


そもそも、その子供に魔法力がぜんぜん無い。


おそらく本来持っていた魔法力を、無駄に放出してしまったのだろう。


男は、村への接点を持つために声を掛けた。


「おい、そこの小僧!、無駄なことはやめておけ」


おせっかいとは思う。


しかし、ここで見たのも縁だ。


すると、子供は初めてこちらに気付いたようだ。


不機嫌な顔でふりかえる。


こちらは、無意識に魅了の魔法をかけていた。


それと、魔法力を漏れないように管理するのは息をするよりたやすい。


そのため、どこへ行ってもあからさまに拒否されることはない。


隠れ魔法師の多くはこの魔法を使う。


けれども、それは旅の地でうまくやるための方便だ。


この魅了の魔法自体は無属性故に普通の魔法師なら誰でも使える。


しかし、ある程度以上の力でそれを使用した時は『犯罪』と成ってしまう。


やがて、魔力を検知されて迫害に発展していた。


その辺のさじ加減が難しい。


それと、魔法力の浪費につながる。


だから、場所とタイミングをうまくやらなければならないとトラブルの元だった。




今回のように子供相手なら『大丈夫』と思う。


しかし、大人にばれれば、犯罪者になってしまう物だ。


子供は 振り返ると機嫌よく挨拶をしてくれた。


魅了の魔法は効果的だ。


簡単に打ち解けてくれる。


その後、『なぜ魔法をかけようとしていたのが判ったのか』を、聞いてきた。


「俺は魔法教師だよ、旅先で多くの子供に魔法を教えてきたから、君が何をしようと

 してたのか、一目でわかるよ」


「まさか、魔法を教えてくれるの」


「勿論だとも、ただし無料じゃないけどね」


「それじゃ、僕にも教えてくれるの?」


「お金さえもらえば当然だが、君に払えるのかい」


「お父様は気にしないと思うけど、いままでついた家庭教師はみんな僕には才能が無

 いというんだ。」


「才能が無い? 君は魔法が使いたいのだろう」


「もちろん、でも誰もが無理だというんだ」


「それは教え方が悪いのさ、私を雇うように父上に推薦していただけるかな」


「でもお兄さんは旅人なのでしょう? お父様が信用するかな」


「こういえばいい、魔法を習得できなかったら御代はいらない とね」


「それなら声をかけてみるよ。少し待ってて、お父様を呼んでくるよ」


そういって 子供は村の方に走り去った。




男は、そのまま村のほうに歩いていく。


もちろん魅了の魔法は解除した。


子供が相手ではない。


大人を相手にするときは無用な警戒をされないためだ。


周辺を窺っているネズミを相手に無用なトラブルは起こしたくない。


しばらく行くと 先ほどの子供が大人を連れてこちらに来る。


「お前か、子供をたぶらかす旅人は」


いきなりのけんか腰だ。


ただ、男が『村の境界の外から来た』ことは認識している。


だから、主自らが侵入者を確認にきた。


そんな雰囲気だ。


表立って見えない。


けれども、護衛が数人付いてきていた。


魔力の乱れから感じる気配のようなものだ。


ただ、現時点では特定が難しい。


一人でも目の前に見せてくれれば特定しやすい。


しかし、影の護衛が姿を見せるわけが無い。


だから、それは無理だろう。




男は、いつもの口上を述べて自分を売り込む。


「別にたぶらかしているわけじゃないけどな、この村で家庭教師を始めようと考えて、

 宣伝のために最初の一人はいつも無料でやることにしてるだけだ」


相手は、こちらの言い分を理解したようだ。


態度が少し柔らかくなった。


俺が『魔法師』と知っている。


それは、結界を通ってきたのだから当然だ。


そして、『家庭教師』と言う職業もそれを手伝う。


家庭教師は、魔法の村を行き来できる職業の一つだった。


村で育つ子供の数は多くない。


数年も教えれば、大抵は飽和してしまう。


『学習』という物ではなく『魔法』という特殊な分野だからだ。


学習だけなら、村の他の者でも教えられるから家庭教師を高額で雇う必要はない。


そのため、家庭教師は数年ごとに村を変わっていくのは当然だった。


ちなみに学習を担当する物は先生と呼ばれている。




「旅の家庭教師か、経験は多いのか?」


「教えた子供の数など覚えちゃいない。ただ失敗したことは無い」


「ほう、すごい自信だな。だが世の中には魔法の使えない子供もいるぞ」


「そういう子供も確かにいるさ。だからそういうものには最初から教えない」


男は意外そうに目を見張った。



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