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13 縁



「なにもなしで手ぶらでいいのですか」


竜輝も気にしていた。


しおりも付いていくと言っていたが断った。


当事者が居たのでは落ち着いて話ができなくなるからだ。


「気にすることはない。向こうは年寄りが生きてるので大丈夫」


竜輝にはその意味が判らない。


年寄は格式や作法にうるさいとしか印象にない。


「でも師匠、だからこそ格式がうるさいのでは」


「つまるところ魔法力がものいうんだ。いまのお主なら子供の使いということで大

 目にみてもらえるよ」


そういって二人だけで出かける。




相手の家の前に子供が二人遊んでいた。


少し広場になっているところだ。


一人は明らかに村の娘だ。


腰掛まで用意されて休憩所の雰囲気になっていた。


そこで遊んでいるのだ。


十二歳ぐらいの女の子と八歳ぐらいの女の子だ。


そのすぐ近くに乳母のような中年の女性が腰掛けて見ていた。


そして、もう一人のお婆さんと話をしていた。


あきらかに、おばあさんの方は村の老人だった。




鬼ごっこをしてるが女の子は足が悪いのか動きが鈍い。


「どうだ、竜輝あの子の足はどう見る」


「はい、はっきりわからないけど黒い気が満ちていてあまりよくない。姉さまの頭

 の中によく似ている。でも姉さまほどひどくはない」


「そうか遠目でもそれぐらいに見えるのか」


「はい」


「どうする、治療してみるか」


「でも母上の治療に力を温存しておかないと」


「でもあの子の足は今しか機会はないかもしれんぞ。今目の前の縁を大事にするの

 も人生だ」


たまたま目にした子供なのだ。


男の目から診ればその子供は力が強いから侵されたと判る。


でも竜輝には近所の子供としか見えていない。


「はい、師匠わかりました。それじゃ行きましょうか」


「おお、物分りがよくて助かる」


男は竜輝だけで行くように促した。


送り出された竜輝は子供たちに近づいていった。




「ぼくは竜輝というんだ、一緒に遊んでくれる」


そう言って二人の子供に入り込んでいく。


竜輝が名乗ったのに女の子は名前を名乗らない。


常識が無いのではない。


逆に優しい子供だから名乗らないのだ。


名乗ってしまえば、遊べなくなるからだ。




竜輝の方は、しばらくいろいろな遊びをしたあと本題を切り出した。


そして、女の子に話しかけた。


「ねえ、その足みせてくれない」


「え、足をみてどうかなるの」


「うん、もしよかったら直せるかなとおもって」


「無理よ!、お医者様もだめだとあきらめたぐらいだから」


「それじゃ、ためさせてよ」


「いいわよ、でも痛いことしたらだめよ。ばあやにいいつけるから」


「え?、ばあやなの」


竜輝はようやく連れの女性が母親ではないことに気付いたようだ。


そして、目の前の女の子は召使を使う身分の女の子だと。


「ええ、お母様もお父様もいそがしいから」


女の子はそう言って淋しそうに答えた。


「そうなのか、でもすぐ済むから大丈夫だよ」


そういって近くの腰掛に座らせて足を見る。


乳母が腰掛けているのとは門を挟んで反対側の腰掛だ。




「はじめるよ」


そういって手をかざし左手からは例の黒い気が滴り落ちる。


30秒ほどで治療が終わったようだ。


ずいぶん、力の使い方に慣れてきたのと、彼女が軽症だからだ。


乳母の女性は離れていたので気付かないようだった。


あれだけの気配に気付かない乳母というのは不自然だ?


いや気付いていて動かないのだ。


身のこなしが普通ではない。


こちらを注視して睨んでいるからだ。




直後に、門から男の数人が飛び出してきて回りをきょきょろと見渡している。


男達は気配を探っている。


しかし、すでに収束しているのでそこにいるのは男を含めて五人だけだ。


力の痕跡も残っていないので男たちは戸惑っていた。


離れていたので力の中心点を見抜いているのだろう。


その中心点にいるのが、主の娘だと気付いて警戒を解いていた。


乳母の女性は目標の近くに居すぎて中心を見定められなかったのだ。


それは大きな魔力発動に置いて起きる擾乱じょうらんというものだった。




「ありがとう、気持ちだけでもうれしいわ。とても気持ちよかったもの。お医者様

 もこのような治療してくれるとうれしいのだけど。ごめん、迎えのひとが来た見

 たい、また遊んでね」


そういって飛び出してきた人に声をかける。


掛けられていた当人は魔力の発動に気付かないので静かなものだ。


持っていた魔力さえも圧倒的な力の前に押さえ込まれていたからだ。


だから、家来の混乱の意味が判らない。


「お嬢様、だれか不審なひとを見かけませんでしたか」


「いえ、だれもばあやと一緒に近くの子とあそんでいただけよ」


「そうですか。すごい魔力を感じて飛び出してきたんですが・・・・・」


男達は周りを警戒しながら門に向かう。





まさか目の前の小さな子がその力のぬしと考えなかったようだ。


女の子と乳母は男たちに囲まれるように門に入っていく。


あきらかに、なにかを警戒している雰囲気だ。


残された、老婆と子供があっけにとられていた。


まさか、主家のお嬢さんとは知らなかったようだ。


みんなが遊ぶ広場にいた親子だと思っていたらしい。




恐らく、乳母は不自然にならないように動かなかったのだ。


すぐに仲間が来ると承知していたからだ。


自分の能力以上の相手の時は気付かない振りをして時間を稼ぐという鍛えられた護

衛の一人なのだろう。


下手に動けば、足手まといになるからだ。


竜輝は村の娘だと思っていたのが、これから尋ねる屋敷の娘だと知って驚いていた。




「さて、それじゃいきますか」


竜輝を促して門に向かう。


そして、門を叩いた。


「開門、水の家からの使い物である。主にとりついでくれ」


大きな声で声をかける。


水の家という身分を言ったことで門番はすぐに飛び出し来て案内をしてくれた。



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