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12 縁談

縁談



乳房を見られたことに憤慨するしおり。


しかし、治療ということで文句を言いたくても言葉を呑んだようだ。


しかし、下半身のズボンを脱がされたことに文句が移りそうだった。




「姉さま、次に直したのがつま先です」


「つま先、ええ!、これも直ったの?」


「はい、そこは簡単でした」


「嘘ー、うちの医者は誰も治せなかったのよ」


指の骨折をおかしな初期治療が悪化させたケースだ。


微妙な違和感があったはず。


生活には困らないが、年取れば関節炎などの原因になる。


「はい、次が左の膝のところです」


「膝のところ、って治ったように感じなかったけど、今でも痛いわよ」


「あたりまえだ、子供のころからずーっとその状態だったのだろう。戻っても体が

 慣れるまで違和感が残るさ」


「そんなものなの」


「人間の体は不便な状態に慣れてしまう性質があるんだ。今まででも少し無理する

 と膝が痛んだだろう」


「たしかに」


「それは飛び出した骨が神経を圧迫していたせいだ。今はきれいに整形されてるの

 でそれは無くなった。これからは歩き方も注意したほうがいいぞ。せっかく、ま

 ともに歩ける様になったのだから」


「ええ、そういうことなら注意するわ。まだあるの」




もう開き直った感じだ。


死ぬのを覚悟しているので、すべてを許容する気でいるようだ。


「はい、姉さま、頭の中の黒い塊を除去しました」


「なにそれは?」


竜輝の言った意味が判らない感じだ。


当たり前と言えば、当たり前だ。


「だからお前の命をとろうとしてた悪意の塊のようなものを取り出したのだ」


「それって、私は死ななくていいの?」


ようやく意味が判るが、ピンとこない感じ。


「当然じゃないか。そのための治療なのだから」


「治療が終わったということなの?」


「はい、お姉さま!、当面の危機は去ったと思います」


「それじゃお母様の治療は」


自分のこと以上に母親のほうが気になるようだ。


「ばかなことをいうな、しおりの治療だけで魔法力の半分を使いきってしまったの

 だぞ。連続して出来るか。二日ほど安静にしたら始めるからまっていろ」


「そうなの?でもありがとう。生きていけるというのはうれしいわ」


ようやく、助かったと言う実感が湧いてきたようだ。


「当然だ、それより火の悟とのことを決めなくてはな」


「何を言ってるの・・・」


突然、落ち着き無く目が泳いでいた。


顔も赤くなってきている。


「あたりまえだろう、お腹が大きくなってからでは困るだろう」


「え、まさか」


「竜輝もも確認した、間違いない」


「そんな、初めてだったのに」


「運命だったのだな。自分の死を覚悟して思い出だったのかもしれんが」


「ええ、そうよ、そのつもりだったの」


開き直って説明するしおり。


「生きられたならなら幸いだろう。竜輝!許嫁を決める度胸はあるか」


「許嫁って、まだ僕は九歳だよ」


「家同士の結びつきだ、気にすることは無い」


「姉さまさえ幸せになるなら」


「ほう、いい度胸だ。自分のことより姉の幸せを優先するとはな」


「どういうことなの」


「しおりが嫁にいくなら交換に向こうから嫁を取らなくてはなるまい」


「でも火と水では」


一時的に和解している関係だが、根本的には向こうが主で水は従の関係だ。


それに反発している状況でもあった。


「それは気にする問題じゃない。向こうのほうが格上なのだから父親さえ納得すれ

 ば解決だ。子供さえいなけりゃもっとすんなりいくのだがな」


先に関係してしまった負い目のような物だ。


既成事実を迫るようなものだからだ。


男は姉のしおりを睨む。


「ええ、悪かったわよ。わたしだって生き延びられるなんて考えてもいなかったか

 ら」


もはや、開き直りだ。


「では、親父さんに話しにいこうか」


そういって席を立ち上がった。


「ところで離れはどうなったの」


「ははは、きにするな、竜輝の暴走だ」


「暴走といっても残骸はどうなったの?」


「消滅させた」


「消滅! そんなことが出来るの」


「はい、姉さま、力加減を間違えたので、まさか家が消えるなんて思っても居なく

 て」


「家を消すのではなくて余波で消えたの?」


「はい、目標は手前の木の実だったのだけど、師匠がいつもやってたようにして、

 意識にはいらなかったのでつい・・・・」


「・・・・・・・」


竜輝の力に言葉も出ないというところだ。


「はい、まさか魔法がそこまで発動するなんて思っていなくて」


「まあ、いいわ、あなたが魔法使いになれたのなら、お父様も赦してくれるわよ」


「そうかな・・・・?」


自信無さそうな竜輝の様子。


二人は手をつないで父親のところに出かけた。


男も借りている家を消滅させてしまったのだ。


報告できなくて、かろうじて残っていた台所で生活していた。




屋敷のことはしおりの予想通り不問となった。


しかし、結婚して縁戚となることには懐疑的だ。


「わしに不満はないが先方が受けてくれるのか?」


「もちろん相互縁戚は両家のつながりを強固にするためのもの。竜輝君さえ不満が

 なければこの話は確実にまとまる」


「そなたのような、一旅人が保障してくれてもな」


「話をもっていくだけならいいのか?」


「いいだろう、悟ならわしも不満はない。何か伝があるようなのでまかせる」


やはり格上の家に話を持っていくのに半信半疑だ。


手土産にいろいろ用意をしようとしている。


しかし、男はしっかり断った。



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