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アヴェリア物語 〜これは、一人の青年の復讐から始まる、星の運命に抗う物語〜  作者: 卓上の語り部


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第八十七話『重なる三律、調和への序曲』

 黄金の光に包まれた『聖域の大樹』の根元で、三体の守護騎士が静かに剣を掲げた。

 実体を持たないはずの彼らが放つ圧力は、これまでのどんな魔物よりも重く、鋭い。それは個々の殺意ではなく、世界の「理」そのものが一行を拒絶しているかのような威圧感だった。


「来るぞ! 散れッ!」

 リオスの叫びと同時に、青白き「器」の騎士が巨大な斧を振り下ろした。

 ドォォン!

 衝撃波が地面を走り、黄金の粒子が爆ぜる。リオスは『星喰の剣』でそれを受け止めたが、腕に伝わる律動の激しさに歯を食いしばった。


「くっ……なんだ、この重さは!? ただの力じゃねぇ……大樹の脈動が、直接流れ込んできやがる!」

 傍らでは、漆黒の「抑制」の騎士が盾を構え、ゼノスの死角を突くように突進していた。ゼノスは『影纏いの短剣』を交差させ、鋭い踏み込みでそれを迎え撃つ。


「フン……俺の影を上書きしようってのか。随分と贅沢な真似をしてくれる」

 ゼノスの影が生き物のように騎士の足元へ伸び、その動きを縛ろうとする。しかし、騎士の纏う漆黒の律動はゼノスの影を透かし、まるで重力が存在しないかのように軽々と跳躍して回避した。


「ゼノスさん、リオスくん! まともに打ち合ってはいけません!」

 エリアスが後方から叫び、即席の錬金爆弾を放った。しかし、爆風は碧き「導き」の騎士が振るった光の剣によって、一瞬で「消滅」させられた。破壊されたのでも、防がれたのでもない。爆発という物理現象そのものが、発生の瞬間に「無かったこと」へと書き換えられたのだ。


「……現象の無効化!? これはエルフの『真律』などではない。理の維持管理を超え、因果そのものを編集する……まさに『星渡りの庭師』の権能そのものだというのですか……!」

 エリアスの顔に戦慄が走る。人が神の如く崇めたエルフの叡智ですら、この力の劣化コピーに過ぎない。

 三人の戦いは、最初から防戦一方だった。リオスが攻めれば抑制の盾に阻まれ、ゼノスが隙を突けば導きの剣に軌道を逸らされる。三体の騎士は完璧な連携で、三人の「不協和音」を的確に突いてきていた。


「……違うわ。これは、戦いじゃない」

 リーナが胸元の『心珠』を強く握りしめ、目を閉じた。

 彼女の「耳」には、騎士たちの剣鳴が聞こえていた。それは破壊の音ではなく、一定の周期を持った「リズム」だった。


「二人とも、聞いて! 彼らは私たちの命を狙ってるんじゃない。私たちの律動を、強制的にこの場所と同期させようとしてるのよ。私たちがバラバラに動くから、不協和音となって跳ね返ってきてるんだわ!」

「同期……だと? リーナ、どうすればいい!」

 リオスが肩で息をしながら問いかける。その右腕の結晶が、外部からの高密度な律動に耐えかねてパチパチと火花を散らしている。


「私が……リズムを刻む。ゼノスは溢れる力を押さえ込んで! リオスは……その全てを繋いで!」

 リーナが心珠を高く掲げた。

 碧い光が波紋となって広がり、大樹の黄金の光とぶつかり合う。彼女は恐怖を捨て、この場所を満たす圧倒的なエネルギーの「流れ」に、自身の意識を預けた。


「……なるほどな。アンカーの役割なら、婆様ばあさまから叩き込まれてる」

 ゼノスが低く笑い、影の出力を最大に引き上げた。彼の影はもはや地面を這うだけではなく、リオスとリーナを包み込むようなドーム状の「境界」を形成し、大樹からの過剰な圧力を肩代わりし始めた。


「よし……来い。俺が全部、引き受けてやるッ!」

 リオスが『星喰の剣』を地面に突き立てた。

 右目の燐光がかつてないほど鮮烈に輝き、リーナの光とゼノスの影が、リオスという「器」を通じて一本の線に繋がった。


 三人の律動が初めて一つの重奏アンサンブルを奏で始めた瞬間、守護騎士たちの動きが止まった。

 黄金の空間に、今までとは違う、澄み切った「和音」が響き渡る。


 試練は、まだ始まったばかりだった。

卓上の語り部でございます。

第八十七話『重なる三律、調和への序曲』をお届けいたしました。


黄金の大樹を舞台にした同期試験。エリアスが目撃した「現象の無効化」は、管理用種族であるエルフの力を遥かに凌駕する、創造主「庭師」の権能の一部でした。因果律そのものを操作する圧倒的な力に対し、三人はようやく「三位一体」としての戦い方に辿り着きます。


ゼノスが影で場を安定させ、リーナが光でリズムを刻み、リオスがその中心で全ての負荷を繋ぎ止める。これまでの長い旅路で培ってきた信頼関係が、物理的な「連携」を超えて、魂の「同期」へと昇華されていく過程を描きました。


しかし、庭師のシステムが求める調和はさらに高い精度を要求します。

次回、三人の調和が試練をさらに深化させます。彼らはこの「星のプログラム」を書き換える資格を示すことができるのか。


P.S. 本作の世界観設定や用語解説などは、Webサイト「Table Talker's Log」にて随時更新しております。

https://tabletalker.info/category/avelia/


卓上の語り部より、敬具。

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