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アヴェリア物語 〜これは、一人の青年の復讐から始まる、星の運命に抗う物語〜  作者: 卓上の語り部


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第七十三話『狂信の宴、解き放たれる原罪』

「来るぞ!」

 リオスの警告とほぼ同時に、散開した十数人の闇の盟約者たちが襲いかかってきた。

 彼らの動きは、鍛え上げられた戦士のそれとは違っていた。熱に浮かされたように奇妙な叫び声を上げ、死をも恐れぬ狂信的な勢いで突っ込んでくる。その体には、祭壇から溢れ出す紫色の光が、血管のように不気味に浮かび上がっていた。


「チッ、場の空気に当てられているな。まともな神経じゃない」

 ゼノスが短剣を逆手に持ち、先頭の男の振り下ろした杖を紙一重でかわす。そのまま懐に潜り込み、正確な打撃で顎を撃ち抜いて昏倒させた。


「数が多い! 先生、リーナを頼む!」

 リオスは両手剣を大きく振るい、三人まとめて薙ぎ払う。『星喰の剣』が彼らの纏う歪んだ律動を喰らい、その衝撃を増幅させる。だが、倒しても倒しても、彼らは痛みを感じないかのように立ち上がり、再び群がってくる。


「くっ、キリがない……! 彼らは自身の生命力すら律動に変換して戦っています!」

 エリアスがリーナを背にかばいながら、携帯していた錬金術の小瓶を床に叩きつけた。瞬時に発生した硬化樹脂の泡沫あわが壁となり、飛来する歪んだ律動の塊を辛うじて弾いた。


「うぐっ……!」

 リーナが苦しげに胸を押さえてうずくまる。


「リーナ!?」

「大丈夫……でも、声が、大きくなってる……。大地が、泣き叫んでる……!」

 彼女の耳には、この場の律動の乱れが、耐え難いほどの轟音となって響いているのだ。

 祭壇の中央では、リーダーの男が嘲笑を浮かべながら儀式を進めていた。彼が杖を振るうたびに、床の術式回路図が激しく明滅し、石棺を縛る鎖が一本、また一本と砕け散っていく。


「素晴らしい! この濃密な澱み、これこそが『進化』の苗床だ!」

「……好き勝手にさせておくわけにはいかないな」

 ゼノスが雑魚の相手をリオスに任せ、リーダーに向かって疾走した。影に溶け込むような足取りで、一気に間合いを詰める。


「戯言はそこまでだ」

 必殺の刺突が男の喉元に迫る。

 だが、男は動じなかった。


「君のような鼠が、神聖な儀式に立ち入るものではないな」

 男が杖を軽く床に突き立てた瞬間、ゼノスの足元の影が、まるで泥沼のように変化した。


「なっ!?」

 足を取られたゼノスの動きが止まる。次の瞬間、目に見えない重圧が彼を襲った。


 ドォォォン!


「ぐはぁっ!」

 ゼノスは見えない巨大な手で叩きつけられたかのように、数メートル後方の岩壁まで吹き飛ばされた。背中を強打し、苦悶の声を漏らす。


「ゼノス!」

「……平気だ、気にするな。……フン、ただの狂信者ではないらしい。歪んだ律動の扱いだけは一流だ」

 ゼノスが口元の血を拭いながら立ち上がる。受けたダメージは軽くないが、その目は冷徹に敵を観察していた。


「フン、雑音が。まあいい、儀式は完了した」

 リーダーの男が、最後の鎖が砕け散るのを見届けて、高らかに宣言した。


「見よ! これぞ古代の叡智が恐れ、封印した真実の姿!」


 ゴゴゴゴゴゴ……ッ!


 地響きと共に、石棺の蓋がゆっくりとスライドし始めた。

 その隙間から、これまでとは比較にならないほど濃密で、そして冷たい、漆黒の闇が溢れ出した。それは紫色の光さえも飲み込み、周囲の空間を歪めていく。


「まずい! 封印が完全に解かれる!」

 エリアスが叫ぶ。その言葉を裏付けるように、リーナが悲鳴を上げて耳を塞いだ。彼女を襲う律動の奔流は、もはや限界点を超えていた。


「させるかぁぁぁっ!」

 リオスが目の前の敵を強引に突破し、祭壇へと駆けた。

 石棺から溢れ出す闇が、彼を拒絶するように渦を巻く。だが、リオスは止まらない。『星喰の剣』を構え、その闇の中心――開かれつつある棺の中へと突撃した。


 ドォォォォォン!!


 剣が何かに衝突し、凄まじい衝撃波が祭壇を揺るがした。


「グゥォォォォォォ……」

 棺の中から、この世のものとは思えない、低く、おぞましい唸り声が響き渡った。それは、聞く者の魂を直接削り取るような、根源的な恐怖を呼び起こす音だった。

 砂煙と闇が晴れた後、そこには、半ば開いた石棺の前で、剣を突き入れた体勢のまま硬直するリオスの姿があった。


「リオス!」

 リーナの声が奈落の底に響く。

 だが、リオスは動かない。彼の剣は、棺の中から伸びた、形定まらぬ漆黒の「何か」によって、がっちりと受け止められていたのだ。

卓上の語り部でございます。

第七十三話『狂信の宴、解き放たれる原罪』をお届けいたしました。


奈落の底で繰り広げられる、闇の盟約者たちとの死闘。歪んだ律動に酔いしれ、命すら顧みない狂信者たちの猛攻がリオスたちを襲います。ゼノスもリーダーの強力な黒律の前に退けられ、戦況は絶望的となっていきます。


そしてついに、恐れていた瞬間が訪れました。石棺の封印は解かれ、おぞましい「原罪」が溢れ出します。 それを食い止めるべく、決死の覚悟で突撃したリオス。しかし、星喰の剣による渾身の一撃は、棺から現れた漆黒の闇によって受け止められてしまいました。


動きを封じられたリオス。果たして彼の運命は。そして、完全に姿を現そうとしている「それ」の正体とは――。


物語は断絶の山脈編、最大の山場を迎えています。緊迫の展開が続く次回を、どうぞお見逃しなく。


P.S. 本作の世界観設定や登場人物の紹介、アヴェリアにある大陸の地図などは、Webサイト「Table Talker's Log」にて公開しております。物語をより深く楽しむための補足情報として、ぜひご活用ください。

https://tabletalker.info/category/avelia/


卓上の語り部より、敬具。

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