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アヴェリア物語 〜これは、一人の青年の復讐から始まる、星の運命に抗う物語〜  作者: 卓上の語り部


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第五十一話『青き奔流、腐敗を断つ閃光』

「ギィィィィィン……オォォォォォォッ!!」


 関節を砕かれたニヴェルガンドが、大地を揺るがす絶叫を上げた。 それは痛みによる悲鳴であり、同時に、自らを傷つけた小さな存在への底知れぬ憎悪の爆発だった。


 ズズズンッ!


 傾いた巨体が、無理やり体勢を立て直す。砕かれた脚部の骨とタールが蠢き、周囲の瓦礫や腐った土を巻き込んで急速に再生を始めた。


「なっ……! あれだけの傷を、もう塞ごうとしているのか!」

 リオスは驚愕しつつも、すぐさま次の行動に移る。 再生しているとはいえ、動きはまだ鈍い。畳みかけるなら今しかない。


「ハァッ!」

 リオスは瓦礫を足場に跳躍し、龍の側腹部へと肉薄した。 手の中の『星喰の剣』は、ドクン、ドクンと赤黒い脈動を繰り返し、柄の宝石が熱い輝きを放っている。


(喰らえ! もっとだ!)


 リオスは自身の精神力を、恐怖というフィルターを通さずに、直接剣へと注ぎ込んだ。 剣が「飢え」を訴えてくるのが分かる。以前なら、その底なしの欲求に呑み込まれる恐怖で手がすくんでいただろう。 だが、今は違う。


(俺の全てをくれてやる。だから――力をよこせッ!)


 恐怖心というブレーキが外れた今、リオスと剣のパスは完全に繋がっていた。


 ガギィィンッ! ズォォォンッ!


 リオスの斬撃が、龍のタールの表皮を抉る。 これまでは弾かれていた攻撃が、今は深く食い込む。斬りつけるたびに、赤黒い軌跡が空中に描かれ、龍の体から噴き出す腐敗のエネルギーが剣に吸い込まれていく。


「グゥゥッ、ルァァァァッ!」

 ニヴェルガンドが鬱陶しそうに暴れる。 翼膜よくまくからタールの雨を撒き散らし、巨大な尾を鞭のようにしならせて周囲を薙ぎ払う。


「くっ!」

 リオスは紙一重で回避を続けるが、攻撃の密度が凄まじい。遺跡の石柱が次々と砕け散り、足場がなくなっていく。


「リオス君、気をつけて! 奴の律動が、暴走し始めています!」

 エリアスが悲鳴に近い声で警告した。 彼の予感は的中した。追い詰められたニヴェルガンドは、周囲の腐敗した森から強制的にエネルギーを吸い上げ、最後の大技を放とうとしていたのだ。


 龍が大きく息を吸い込むと、その口腔内に圧縮された闇が渦を巻いた。 先ほどとは比較にならない、超高密度の腐敗ブレスの予兆。


「まずい、あれを放たれたら遺跡ごと消し飛ぶ!」

 エリアスが顔面蒼白になる。手持ちの錬金アイテムはもう尽きかけていた。


「……り、おす……」

 その時、リーナの結晶石の光が、フッと弱まった。 限界だったのだ。彼女は力を使い果たし、その場に崩れ落ちそうになる。


「リーナさん!」

 エリアスが慌てて彼女を支える。清浄な光が弱まったことで、周囲の瘴気が一気に押し寄せてくる。

 ニヴェルガンドの濁った眼球が、再びリーナを捉えた。 最も目障りな光が消えかけた今、確実に葬り去ろうという明確な殺意。

 龍の口元から、どす黒いエネルギーの余波が漏れ出し、空間そのものを歪ませる。


「させる……かよッ!」

 リオスはニヴェルガンドの正面に回り込み、リーナたちを背に庇うように仁王立ちになった。

 逃げ場はない。防御も間に合わない。 ならば、斬るしかない。あのブレスそのものを。


「うおおおおおおおおッ!!」

 リオスは吠えた。 残された全ての精神力、生命力、そして「守る」という意志の全てを、剣に叩き込む。


 ドクンッ! ドクンッ! キィィィィィン!!


 剣の脈動が限界を超え、赤黒い紋様がまばゆい光を放ち始める。 そして。


 カッ――――!!!


 柄の宝石が砕けんばかりに輝いた瞬間、刀身を覆っていた赤黒い色が、鮮烈な「青白色」へと塗り替えられた。 それは、闇夜を引き裂く稲光のような、清冽にして破壊的なエネルギーの奔流だった。


「グォォォォォォッ!!」

 ニヴェルガンドが、ついに腐敗の超高密度ブレスを解き放った。 全てを溶かし尽くす黒い濁流が、リオスたちに向かって一直線に迫る。


 リオスは、青白く輝く『星喰の剣』を上段に構え、迫りくる絶望の奔流に向かって、渾身の力で振り下ろした。


「断ち斬れぇぇぇッ!!」

 青白い光の刃が、黒い腐敗の奔流と激突した。

卓上の語り部でございます。

第五十一話『青き奔流、腐敗を断つ閃光』をお届けいたしました。


追い詰められた腐敗の邪龍ニヴェルガンドは、周囲の律動を強制的に吸い上げ、全てを消し飛ばす最強のブレスを放とうとしました。頼みの綱であったリーナの力も尽きかけ、絶体絶命の危機が訪れます。


しかし、その絶望の前に立ちはだかったのは、リオスでした。 過去のトラウマ、暴走への恐怖。それら全てを「仲間を守る」という揺るぎない覚悟でねじ伏せ、彼はついに『星喰の剣』の真の力を解き放ちました。


赤黒い不気味な脈動は、鮮烈な青白色の光へと変わりました。それは、この腐りきった森の闇を切り裂く、清冽なる希望の奔流です。


放たれた極大の腐敗ブレスと、覚醒した魔剣の斬撃が真っ向から激突した瞬間で、今回は幕引きとなります。


果たして、この凄まじいエネルギーの衝突の果てに、立っているのはどちらなのか。 長きにわたるウィスパーウッド大森林での死闘、いよいよ決着の時が迫ります。

次回の更新を、固唾を飲んでお待ちください。


P.S. 本作の世界観設定や登場人物の紹介、アヴェリア大陸の地図などは、Webサイト「Table Talker's Log」にて公開しております。物語をより深く楽しむための補足情報として、ぜひご活用ください。

https://tabletalker.info/category/avelia/


卓上の語り部より、敬具。

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