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アヴェリア物語 〜これは、一人の青年の復讐から始まる、星の運命に抗う物語〜  作者: 卓上の語り部


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閑話 其の五『旅の商隊と王都の噂』

レムリア平原を半分ほど過ぎたあたりだった。前方を歩いていたゼノスが、不意に足を止めて耳を澄ませた。


「……風に乗って、血と鉄の匂いがする。戦闘音だ」


リオスとリーナも緊張した面持ちで顔を見合わせる。風下から、微かだが怒号と悲鳴が聞こえてきた。


「行ってみよう。誰かが襲われているのかもしれない」

リオスが走り出し、二人もそれに続く。


丘を越えた先で、彼らは十数台の馬車からなる商隊キャラバンが、一群の魔物に包囲されているのを目撃した。

襲っていたのは、飢えたオークの群れだった。数は三十を超えているだろうか。商隊の護衛傭兵たちが必死に応戦しているが、オーク特有の怪力と数の暴力に押され、防衛線が崩れかけていた。


「加勢するぞ!」

リオスが星喰の剣を抜き放ち、オークの群れに側面から突っ込んだ。

彼の剣は、もはや以前のようなただの大剣ではない。振るうたびに青白い光の軌跡を描き、触れた魔物の肉体を構成する律動そのものを「捕食」していく。


「グギャッ!?」


リオスの剣を受けたオークが、悲鳴を上げる間もなく砂のように崩れ去る。通常の物理攻撃ではありえない圧倒的な威力に、周囲の傭兵たちが目を丸くした。


「な、なんだあの剣は……!? 魔物がいきなり崩れたぞ!」


さらに、ゼノスが自身の影を刃に変えて正確に急所を突き、リーナが後方から清浄な光を放って傷ついた傭兵を癒やす。彼らの振るう力は、人智を超えた「奇跡」か、あるいは未知の「神秘」そのものだった。


「あ、あの光は……癒やしの奇跡か?」

「影が……動いてる……!?」


傭兵たちは畏怖と驚愕の入り混じった表情で、思わず後ずさったり、祈るような仕草を見せたりした。三人の介入によって、形勢は一気に逆転した。


戦闘が終わり、商隊の主らしき恰幅の良い男が、脂汗を拭いながらリオスたちに駆け寄ってきた。


「助かった! あんたたちがいなけりゃ、全滅するところだったよ。それに……信じられん。まさか、こんな平原で奇跡の技を目の当たりにするとは」


男はリオスたちのボロボロの旅装と、異質な剣を見て一瞬たじろいだが、それ以上に命の恩人への感謝と、未知の力への畏敬の念が勝ったようだ。


「我々は王都アスティラへ向かう途中なんだが。もしよければ、少しの間、一緒させてもらえないだろうか?」

ゼノスが落ち着いた口調で提案すると、商人は二つ返事で承諾した。


「もちろんだ! あんたたちのような英雄がいてくれれば、これほど心強いことはない。歓迎するよ!」

こうして、リオスたちは商隊の最後尾の馬車に乗せてもらい、束の間の安全な旅路を手に入れた。

その夜。商隊は大きな岩陰で野営を張った。


焚き火を囲み、商人や傭兵たちと共に食事を取る。彼らの活躍は瞬く間に広まり、畏敬の念をもって迎えられた。


「それにしても、兄ちゃんたち、すげぇ腕前だな。どこかの騎士団崩れか? それとも、古代の秘宝でも見つけたのか?」

隣に座った初老の傭兵長が、エールを飲みながら興味深そうに話しかけてきた。


「まあ、田舎で少し剣術をかじった程度ですよ」

リオスが曖昧に笑って誤魔化す。傭兵長はそれ以上深くは聞かず、話題を変えた。


「王都アスティラへ行くのは初めてか?」

「ええ、はい。私は田舎育ちなので」


リーナが答える。傭兵長はニヤリと笑った。


「そうかそうか。アスティラはすげぇ所だぞ。石造りのデカい建物が並んでてな、夜でも真昼みてぇに明るいんだ。初めて見た時は、腰を抜かしたもんだ」

「へえ、そんなに……」

リーナが目を輝かせる。だが、傭兵長の声が少し低くなった。


「だがな……最近の王都は、少しきな臭い」

「きな臭い、とは?」

ゼノスが静かに尋ねる。


「噂だよ。最近、王都じゃ『神隠し』が流行ってるらしい。夜、裏通りを歩いてた人間が、忽然と姿を消すんだと」

「神隠し……?」

リオスが眉をひそめる。彼らはこれまでの旅で、村が焼かれ、人々が変異する様を嫌というほど見てきた。「人が消える」という現象の裏に、何らかの邪悪な意志――「虚ろ」や「闇の盟約者」の影を感じずにはいられなかった。


「ああ。それに、王立研究院の方じゃ、夜な夜な奇妙な青白い光が見えるとか、不気味な機械音が聞こえるとか……。まあ、景気が良い場所には、悪い噂もつきものだがな」

傭兵長はそう言って笑い飛ばしたが、リオスたちは顔を見合わせた。

「青白い光」「奇妙な機械音」。それは、彼らが遺跡や実験場で見てきた、古代の律動装置の特徴と酷似している。


「……王都でも、何かが動いているみたいね」

リーナが小声で囁く。


「商売の邪魔にならなきゃいいんだがな」

商人の主が焚き火に薪をくべながら、ため息をつく。


「まあ、あんたたちも気をつけるこった。華やかな表通りだけが、王都の全てじゃないってことさ」

リオスは黙って頷いた。背中の星喰の剣が、微かに熱を帯びたような気がした。


翌朝、商隊は再び出発した。

賑やかな旅の仲間たちとの語らいは、リオスたちにとって束の間の休息となった。だが、同時に彼らの心には、新たな不安の種が植え付けられていた。


これから向かう世界の中心、王都アスティラ。

そこには、彼らが想像する以上の、深い闇が待ち受けているのかもしれない。

彼らを乗せた馬車は、地平線の彼方に見え始めた巨大な都市の影に向かって、ゆっくりと進んでいった。

さて、卓上の語り部でございます。

閑話『旅の商隊と王都の噂』、お読みいただき誠にありがとうございます。


王都アスティラへ向かう長い旅路の途中、リオスたちはオークの群れに襲われていた商隊を助け、束の間の休息を得ることができました。覚醒した星喰の剣の威力は凄まじく、通常の魔物であれば鎧袖一触といったところですね。

しかし、穏やかな焚き火の語らいの中で聞こえてきたのは、王都に関する不穏な噂でした。「神隠し」そして王立研究院の「青白い光」。これまでの旅で「虚ろ」の脅威と、古代文明の遺産を目の当たりにしてきた彼らにとって、これらの噂は決して無視できないものでしょう。


華やかな巨大都市アスティラ。その光の裏には、一体どんな闇が潜んでいるのか。リオスたちの新たな戦いの舞台は、もうすぐそこまで迫っています。 本編の続きも、どうぞご期待ください。


ps. 彼らの旅の軌跡や世界観設定などは、我々の拠点「Table Talker's Log」にて随時更新しております。物語をより深く楽しみたい方は、ぜひ覗いてみてください。

https://tabletalker.info/category/avelia/


卓上の語り部より、敬具。


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