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残念で不幸なぼくを異世界美少女が欲しがる件について  作者: 高安ゆき(ゆきゆき)
第1章:『残念で不幸な僕と、美少女たちの勘違いの件について』
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第3話:不運な予知は、神の啓示(第3節)

リーファの熱烈な抱擁に、僕は混乱し、顔を赤くして狼狽していた。

「ほ、本当に偶然なんだってば……!」

僕がそう叫んでも、彼女は僕の肩にしがみついたまま、なかなか離れようとしない。

「いいえ!これは奇跡ですわ!偶然などと、ご謙遜なさらないでください!」

その声が、先ほどから僕たちを見つめていた巨大な魔物に届いたのだろうか。

ギィィィィィィ……

洞窟の奥から、忌まわしげな金属音が響き渡る。

闇の中から姿を現したのは、全身が禍々しい黒いオーラを纏い、背骨が歪んだような巨体の獣だった。その頭部からは、何層にもねじ曲がった、巨大な二本の角が空に向かって突き出している。

間違いない、さっき僕が幻覚を見た時と同じ魔物だ。そいつは僕たちめがけて突進してきた。

「きゃっ!」

リーファは、僕の肩口に顔を埋めて、か細い悲鳴を上げた。

(最悪だ!逃げ場がない!)

僕は絶望した。

そのとき、またしても僕の手に握られた石が、ドクンと脈打った。

僕の脳裏に、新たな「不幸な予知」が浮かび上がる。

魔物が、その巨大な角を僕たちめがけて突き刺す未来。

「ダメだ……!」

僕がそう叫ぶと、リーファは僕を見上げた。

「流石です、救世主様!今度は何が『神の啓示』ですか!?」

リーファのその純粋な期待に満ちた瞳に、僕はもう言い訳をする気力もなかった。

「魔物が、僕たちを角で……」

僕がそう言うと、リーファは僕の言葉を最後まで聞くことなく、魔物に向かって手をかざし、祈りの言葉を紡ぎ始めた。

「聖なる予言に記されし、世界を導く者よ!彼の導きにより、この呪いを打ち払いたまえ!」

その言葉と共に、リーファの掌からまばゆい光が放たれる。

光は、魔物の禍々しいオーラを打ち消し、魔物はひるんだように後ずさる。

(なんだ、この力は……?)

僕は、リーファの掌から放たれた光景に、ただただ呆然としていた。

僕の頭の中で鳴り響く不吉な予知とは異なり、その光は美しく、そして温かかった。

リーファは、僕の予知を『神の啓示』だと信じ、僕の言葉を頼りに、魔物の攻撃を回避し、弱点を暴いていく。

僕が「右の壁から鍾乳石が……」と呟けば、リーファは「救世主様の啓示は、魔物の弱点を告げております!」と叫び、その方向へ誘導する。

僕が「足元の石に躓いて……」と呟けば、リーファは「救世主様の啓示は、魔物の攻撃をかわす道を示しております!」と叫び、華麗なステップでかわしていく。

僕の不運な予知は、リーファの献身的なサポートによって、次々と「幸運」へと反転していく。

「救世主様……! 最後でございます!」

リーファは、魔物の前に立ちふさがり、僕に言った。

僕は、再び石を握りしめた。

――見よ。お前の未来を。そして、お前が引き起こすであろう、まことの不幸を……

僕の脳裏に浮かんだのは、魔物の角が僕の胸を貫き、血が噴き出す鮮明な未来だった。痛みまで感じるほどリアルで、僕は思わず胸を押さえた。

「ダメだ……!3秒後、正面から突進してくる!僕が……僕が死ぬ!」

恐怖に震え声になった僕を見て、リーファは安心したように微笑んだ。

「流石でございます、救世主様!その『運命の石』のお導きこそ、私たちの『希望』ですわ!」

彼女は僕の震える手を両手で包み込み、暖かな光が僕たちを包んだ。

「大丈夫です。悠真様の『運命の石』のお導きがあれば……!」

リーファが『運命の石』と呼ぶその「呪いの石」を、僕の手ごと握りしめ、魔物に向かって強く叫んだ。

「聖なる予言に記されし、世界を導く者よ!その『不運』を、『幸運』へと反転させ、この世界を救い導きたまえ!」

その言葉と共に、僕の手に握られた石が、まばゆい光を放ち始めた。

光は、魔物に向かって放たれると、魔物は悲鳴を上げ、跡形もなく消え去った。

「や、やった……!?」

僕は呆然と立ち尽くした。

リーファは、喜びのあまり僕に抱き着いてきた。

「救世主様……!あなたは、やはり本物の救世主様です!こんなに絶対的な希望を感じたのは、初めてですわ!」

リーファは僕にしがみつき、熱い涙をこぼしていた。

「いや僕は、何もしてないんだけど。君が光を放って魔物をやっつけたんだが……?」

「これで、この洞窟の呪いは解かれましたわ!さあ、救世主様。私たちの旅の始まりです!」

(だめだ、聞いちゃいない……)

リーファは、僕の手を強く握り、迷いのない足取りで洞窟の出口へと向かった。その視線の先にあるのは、希望に満ちた未来だろう。

しかし、僕の心は重かった。これから始まる旅は、僕にとって『救世主の栄光』などではない。ただの『最悪な不幸の始まり』に過ぎないのだから。

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