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残念で不幸なぼくを異世界美少女が欲しがる件について  作者: 高安ゆき(ゆきゆき)
第1章:『残念で不幸な僕と、美少女たちの勘違いの件について』
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第2話:呪いの石と、不幸な「救世主」(第2節)

洞窟の奥から現れたのは、淡い光を身に纏った一人の少女だった。

透き通るような白い肌に、星屑を閉じ込めたような艶の黒髪が、光を反射してキラキラと輝いている。神聖さを感じさせる白いローブをまとい、その手には、僕が持っている石と似た、しかし透明で美しい輝きを放つ杖が握られていた。

その姿は、あまりにも可憐で幻想的だ。まるで、この世のものとは思えないほど。僕の不運を打ち消してくれそうな、そんな清らかな美しさがあった。

彼女は僕を見つけると、その青い瞳は驚きに見開いた。

そして、その顔には、安堵と喜びが入り混じったような複雑な表情が浮かんでいた。

「あぁ……やはり、あなたが……」

少女は僕にゆっくりと近づいてきた。まるで僕が、触れてはいけない神聖な存在であるかのように、恐る恐る、一歩ずつ。

僕の足元まで来ると、彼女はふわりと膝をつき、両手でローブの裾を持ち上げた。

「聖女リーファ、まことの救世主様にお目にかかれて光栄です」

そう言って、彼女は深々と頭を下げた。

「え、ちょっと待って! 救世主って、どういうこと?」

僕は慌てて声を上げる。どうやら彼女は僕のことを、とんでもない存在だと勘違いしているらしい。僕はただの不運な高校生で、ついさっきまでマンホールに落ちていたんだ。

僕の言葉を聞いて、リーファと名乗る少女はゆっくりと顔を上げた。その青い瞳は、まるで僕の魂の奥底まで見透かしているかのように真っ直ぐで、僕は思わず身じろぎした。

「すべては予言の通りでございます。この呪われた地が解放されるとき、『世界を導く者』が、『運命の石』とともに現れると……」

彼女はそう言うと、僕が手に握りしめている黒い石に視線を向けた。

そして、一歩、また一歩と、少女は僕に近づいてくる。揺れる黒髪が艶かしく光り、ローブの胸元がほんの少しだけ緩む。そのたびに、僕の心臓は激しく高鳴った。

「あなた様の持つその石は、世界を導くほどの力がございます。まさに、それこそが聖なる予言に記された『運命の石』なのです。そして、その呪いを一身に引き受け、生き永らえているあなた様は、まさしく『世界を導く者』。この世界を救う、まことの救世主様なのです」

リーファの言葉は、僕の不運を肯定し、まるでそれが特別な才能であるかのように語っていた。

僕からすれば、マンホールに落ちたり、パンを落としたり、災難に巻き込まれたりする僕の不幸体質は、ただただ残念で、役立たずのレッテルでしかない。なのに、この少女は僕の不幸を、この世界の希望だと言っている。このとてつもない認識のズレに、僕はどう反応すればいいのか分からなかった。

リーファの目は、僕の不幸体質を、この世界の希望だと信じ込んでいる。

「いやいや、僕の不幸はただの……」

そう言おうとしたその時、再び僕の頭の中で、あの不気味な声が響いた。

――「我は、お前を導く者なり。この石は、お前の運命を示す『呪いの石』なり」

(そうだ、さっきも『呪いの石』って聞こえてた……)

「ま、待ってくれ! 僕はそんな救世主なんかじゃない!それに、この石も……」

僕がそう叫ぶと、リーファは顔を上げて、まっすぐに僕を見つめた。 そして、その小さな手を僕の手に重ねるようにして、ゆっくりと握りしめた。

「ああ、救世主様。どうか我らをお導き下さい。」

「だから、違うって!!」

僕は、彼女の柔らかい手を振り払うこともできず、ただただ戸惑うばかりだった。

救世主としての使命感に燃える彼女と、マンホールに落ちただけの僕。

このとてつもないズレは、一体どこまで広がっていくのだろうか、と僕は途方に暮れた。

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