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第15話:再会と、王女の密命(第3節)

 報告を終えたエリザを交え、一同は巨大な『スレイプニル』の足元で、最終的な作戦の確認に入った。悠真は懐から、かつて手に入れた地図を広げる。


「リリアーナさん。改めて確認させて欲しいんだけど、この地図が指し示す目的地……この北の果てにある場所は、一体何なんだ?」


 悠真が広げた古びた地図を、リリアーナが冷静な眼差しで指し示す。


「目的地はヴァルハラ傭兵団国のさらに北、ヘルヘイム山脈にある『神の遺物』と呼ばれる遺跡よ」


 リリアーナが指差す先には、永久凍土に閉ざされた険しい山々が描かれていた。


「そして悠真、貴方の持つそのナイフ……。それは古の『封印を閉ざすための鍵』よ」


 リリアーナが、悠真の腰にあるナイフを鋭い目で見つめる。


「そこに何があるのか、そしてこのナイフをどう使うべきか……その詳細は、現地へ到達するまでは分からないわ。けれど、それがすべての引き金になることだけは確かよ」


「……封印を閉ざす鍵」


 セレスティアはその言葉を静かに噛み締めると、傍らに立つエリザに向き直った。その瞳には、一国の王女としての揺るぎない威厳が宿っている。


「エリザ、貴女に密命を与えます。今すぐ王都へ戻りなさい」


「……お戻りになれと?」


 エリザが琥珀色の瞳をわずかに見開く。セレスティアは深く頷いた。


「ええ。王都へ戻り、ゼノアに伝えなさい。――『救世主と共に、魔王軍の脅威を退け、世界を救うために進軍する』と。ヴァルハラとアルカディアの国境付近で、彼の率いる兵と合流できるよう、堂々と準備を進めるのです」


「……堂々と、でございますか?」


 エリザの問いに、隣にいたリーファが自信満々に口添えをする。


「もちろんです。救世主様を率いて世界の危機を救うことは、我が教団の至高の教え。大臣といえど、この大義名分に異を唱えることはできません」


「そうね。むしろ、わたくしが危険な魔王領付近へ向かうことは、彼にとっても好都合のはず。……邪魔は入りません」


 セレスティアの冷静かつ大胆な分析に、エリザは口元に不敵な笑みを浮かべた。


「……流石はセレスティア様。教えを盾に、敵の意図さえも利用するとは。承知いたしました、その命、確かに。王都へ戻り、直ちにゼノア様へお伝えし、万事滞りなく手配いたします」


 エリザは軽やかに立ち上がると、傍らにいたボニーに人懐っこい、しかし逃げ場のない笑みを向けた。


「そうと決まれば一刻を争うわね。ボニー、宿屋に預けている貴女の馬、緊急の足として借りるわよ? 急ぎの用だから、いいわよね?」


「えっ……? あ、ちょ、ちょっとエリザ様!? わたくしの愛馬を勝手に……!」


「じゃあ皆、北の地で会いましょう。悠真さん、セレスティア様をよろしくね」


 エリザはひらひらと手を振りながら、風のように工房を飛び出していった。


「わ、わたくしの馬があぁ……」


 がっくりと肩を落とすボニーに、セレスティアが優しく声をかける。


「泣かないで、ボニー。代わりに、わたくしがルナから預かった愛馬、『銀狼ぎんろう』を貴女に託しますわ」


「……『銀狼』を、わたくしに!? ありがとうございます、セレスティア様! わたくし、精一杯務めさせていただきます!」


「宿屋で合流したら、貴女がその子の手綱を握りなさい。貴女なら、あの子を乗りこなせると信じています」



 ボニーが新たな決意で顔を上げたのを見届け、一行はついに魔導戦車『スレイプニル』へと乗り込んだ。


「まあ……外観の重厚さからは想像もつかないほど、洗練されていますわね」


 一歩足を踏み入れたセレスティアは、その内装を見て、再び感嘆の声を漏らした。


「この落ち着いた色合いに、柔らかなクッション……。長旅でも疲れを感じさせない、素晴らしい配慮ですわ」


「へへっ、お気に召した? 気合入れて作ったんだから!」


 ドナは明るく笑うと、弾むような足取りで操縦席に飛び乗った。



 一方、悠真は窓から外を見渡し、ふとある現実に気づいて眉を寄せた。


「なあ……。ドナ、こんな巨大な乗り物、どうやって外に出るんだ?」


 スレイプニルが鎮座するこの屋外作業場は、高い塀で厳重に囲まれている。

 だが、唯一の出口である搬入用の門は、この巨体が通れるほどの幅はない。


「あはは! 悠真お兄ちゃん、細かいことは気にしなーい! ここから行けばいいんだよ!」


 ドナが操縦レバーを力強く倒し、魔導スロットルを全開にする。


「ちょっと、ドナ!? まさか――」

「きゃあ!?」

「悠真様、しっかり掴まってください!」


 セレスティアとリーファの悲鳴が車内に響く。


――ドガァァァァン!!


 凄まじい破壊音と共に、工房の分厚い塀が瓦礫となって吹き飛んだ。八本の鋼鉄脚が壁を紙細工のように突き破り、外の光が車内になだれ込む。


「イェ〜〜イ! 出発進行〜〜っ!!」


 ドナの快活な叫び声と共に、巨大な魔導戦車は粉塵を上げながらクロノスの街を闊歩し始めた。


 目指すは自由都市グロリアの北、ニヴル森林の先にあるヘルヘイム山脈。『スレイプニル』の背で朝日を弾く神槍『グングニール』が、新たな伝説の幕開けを告げていた。

設定・イメージイラストは、ピクシブに掲載中です。

https://www.pixiv.net/users/119429388

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