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第15話:再会と、王女の密命(第1節)

「明日の朝、出発前にとっておきのものを見せてあげる」

ドナと交わしたその約束の翌朝。悠真たちは出発の準備を整え、技術都市クロノスの一角にあるドナの拠点『マグマハート工房』へと集まっていた。

入り口の脇に掲げられた木の看板には、勇ましい店名とは裏腹に、大きなハンマーを掲げて満面の笑みを浮かべるドナの可愛らしい似顔絵が手書きで描かれている。

(……何度見ても、大陸に名を馳せる『賢者』の一人、天才鍛冶師の工房には見えません。まるで、お菓子屋かおもちゃ屋のようです)

入り口で警護に当たる護衛騎士ボニーは、その看板を眺めては、出発を前にして心の中でそっと溜息をついた。

そんな彼女の装いは、濃紺を基調としたいつものお気に入りの騎士服だが、胸元には白いフリルが幾重にもあしらわれ、体にぴったりとフィットした上衣は、彼女の豊かな胸を強調して止まない。普段は気にしない、スカートの裾からのぞく眩しい太ももが、今日はやけに気になる。

「……失礼な方々です。視線が、視線が変態です!」

朝の活気に包まれた技術都市の町人たちは、この美しい「看板娘」ならぬ「護衛騎士」を放っておかない。通り過ぎる人々は、ボニーの驚異的な体躯を隠すことなくじろじろと見つめ、中には足を止めて熱心に鑑賞する者までいる。

「はあ…。悠真様といい、この世は変態だらけです」

やがて、一人の小綺麗な服装をした男が、ニヤニヤと下卑た笑みを浮かべて近づいてきた。

「お嬢さん、こんな朝早くから何を突っ立っているんだい?君ほどの美人が、こんな埃っぽい工房の番をするなんて勿体ない。僕と美味しいお酒でもどうかな?」

「うるさいです。わたくしは任務遂行中です。これ以上近づけば、不審者として排除します。失せなさい!」

ボニーが腰の剣の柄をカチリと鳴らし、低い声で威嚇すると、男は「ひえっ」と情けない声を上げて逃げ去っていった。

「ふう……。どいつもこいつも、隙あらば……」

安堵したのも束の間、背後から、先ほどとよく似たキザで軽薄な調子の声がかけられた。

「やあ、お美しい護衛騎士殿。こんな無骨な工房の前には、君のような眩しすぎる存在は不釣り合いだ。ここで鍛えられたどんな名剣も、君の瞳の輝きの前ではただの鉄塊に見えてしまうよ」

「ですから!さっきも言ったように、わたくしは任務中で……」

ボニーは苛立ちを込めて振り向き――そして、硬直した。

「げっ!」

しかし、そこに立っていたのはナンパ男ではなく、蜂蜜色の長い三つ編みをゆらりと揺らし、琥珀色の瞳をいたずらっぽく輝かせた女性だった。

「……エリザ…様?」

ボニーの顔は一瞬で青ざめ、凛々しかった表情が、見る見るうちに緊張で引きつっていく。

「お、お久しぶりでございます……っ!」

慌てて姿勢を正し、直立不動になるボニー。先ほどの威勢はどこへやら、その態度は一変していた。

ナンパ師の声を模写して近づいてきた女性――セレスティア王女の家臣で情報屋のエリザは、琥珀色の瞳を細めて、満足そうにボニーを見つめた。

「ふふ、驚かせてごめんなさいね。でも、ちゃんと真面目に護衛を頑張っているようで安心したわ。偉いわね、ボニー」

「……っ!も、勿体なきお言葉です、はい。わたくし、これでも精一杯……」

エリザからのねぎらいの言葉に、ボニーは直立不動になりながら、必死に冷や汗を拭った。エリザの「ねぎらい」は、ボニーにとっては「失敗は許されない」という無言の圧力にしか聞こえないのだ。

「よ、よりによって、エリザ様が直々に足を運ばれるなんて……。やはり、王都から何か……重大な伝言でしょうか?」

ボニーはおべっかを使うようにへらへらと尋ねた。エリザは相変わらずの人懐っこい笑みを絶やさないまま、優雅に頷く。

「ええ。エメリア様からの大切な伝言と、少しばかり耳寄りな王都の近況報告を持ってきたの。案内してくれるかしら?」

「は、はい!もちろんでございます!どうぞ、中へ!」

ボニーは内心の嫌悪感と緊張で胃を痛めながら、工房の重い扉を恭しく開けた。 すると、エリザはボニーの脇を通り過ぎる際、ふと足を止め、まじまじとその豊かな胸元を見つめた。

「ふーん……。それにしても、改めて見ると本当に凄いわね。これじゃあ街の男たちが放っておかないのも無理はないわ。……いいわねぇ、私も少しはその『ご利益』にあやかりたいものだわ」

エリザが琥珀色の瞳を妖しく光らせ、からかうようにクスリと笑う。 ボニーは顔を真っ赤にし、両腕で慌てて胸を隠すようにして身を縮めた。

「や、やめてくださいエリザ様!揶揄うのは勘弁してくださいです、はい……っ!」

「あら、本音よ?さあ、案内してちょうだい」

情けない悲鳴を上げるボニーを尻目に、エリザは楽しげに鼻歌を混じらせながら、悠真たちが待つ工房の奥へと足を踏み入れていった。

読んでいただき、ありがとうございます♡

評価・ブックマークして頂けると、とても嬉しいですわ。


毎週、火曜日と金曜日の、夜9時30分ごろに投稿予定ですので、

次回も是非、お待ちしておりますわ♡

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