表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
残念で不幸なぼくを異世界美少女が欲しがる件について  作者: 高安ゆき(ゆきゆき)
第2章:『残念で不幸な僕を、異世界美少女が欲しがる件について』
41/52

第13話:残念なぼくを罵る、容赦なき賢者たち(第1節)

 ドナと名乗る少女の、作業着越しの絶望的に平坦な胸元。


 それを両手でしっかりと捉えたまま、悠真は硬直していた。少女は顔を真っ赤に沸騰させ、全身をワナワナと震わせている。


「ゆうゆう……」

「悠真さん……」


 背後から突き刺さる、セレスティアとリーファの絶対零度の声。


 それでようやく我に返った。


「あ、ご、ごめんなさ……ぐはあっ!?」


 顔面に、渾身の正拳突きがめり込んだ。


「な、何しやがる! この変態クソざこがぁ!」


 少女は落としたハンマーを拾い上げると、羞恥と怒りに任せて振りかぶる。


「まてまてまて! 人違いだ、本当にごめん! でも無理もないんだ! あんたが――」


 悠真は尻餅をつきながら必死に弁解する。


「はあ? 誰が妹のコハルだ、ざーこ! あたしの名前はドナだよ! ドナにお兄ちゃんなんていないんだよ! さっさと失せな!」


 その生意気で容赦のない毒舌。元の世界の妹と同じ種類の懐かしさに、悠真は思わず口元を緩めた。


「そのピンクのツインテールも、顔も、目つきも、小柄な身長も、全部俺の妹にそっくりなんだ! だから思わず……」


 そして、無意識のうちに、先ほど触れた自分の手のひらを見つめ、ぽつりと呟いた。


「……それに、このぺったんこな胸も、あいつとそっくり……ぐはあっ!?」


 今度は顔面に、強烈な頭突きを喰らわされた。


「い、今なんつった!? ぶっ殺すぞ、このくそザコがぁぁぁ!!!!」


 ドナの顔が、真っ赤な溶岩のように爆発した。豊満な胸への強いコンプレックスを抱える彼女にとって、それは絶対に許されない禁句だった。


「このドナが、粉々に砕いて窯の燃料にしてやる!」


 凄まじい怒気を放ち、本気で悠真の頭を叩き割ろうとハンマーを振り上げる。


 その瞬間、事態が手に負えなくなると判断したセレスティアが、有無を言わせぬ視線をボニーへ投げた。


(ひ、ヒィッ! 私?!)


 ボニーは顔を真っ青にして、慌てて二人の間に割って入った。


「お、お待ちください、ドナ様! そ、そのハンマーを下ろしてくださいましっ!」


 泣きそうな顔で、震えながら叫ぶ。


「こ、このお方は……異世界から召喚された『救世主』で! 首の石が『運命の石』に他なりません! 賢者様がこれを破壊してしまっては、使命がっ!」


 悲鳴に近い必死な訴えに、ドナのハンマーがピタリと止まった。


「え、賢者? あ、ああ! そうか、いもうと……じゃ、ないのか?」


 悠真がようやく理解すると、ドナはハンマーを下ろし、まだ怒ったまま悠真を睨みつけた。


「フン。やっと気づいたか、ざーこ」


 頭のてっぺんから爪先まで、品定めするように観察する。


「そんなことより、このザコが『救世主』だと? この軟弱そうな、へなちょこが?」


 ドナは罵りながら、悠真の首元に下げられた石に手を伸ばし、乱暴に引っ掴んだ。


「っ……!」


 ドナの指先が『運命の石』に触れた瞬間。


 彼女の瞳が、劇的に変貌した。


「こ、これは……この、すごい魔力は……何? それに、この石、見たこともない素材……?」


 生意気だった表情が純粋な探求心に変わり、やがて、獲物に対する異常な執着へと濁っていく。


「うふ、うふふふふ……」


 不気味な笑みを浮かべた後、その表情が甘く蕩けるように崩れ、瞳に星が輝きはじめた。


 そして――。


「お兄ちゃん♡」


 ドナは、まるで甘える子猫のように、悠真の腕にすりすりと頬を擦り寄せた。


「……は?」


「もぉ、しょ〜がないなぁ、お・に・い・ちゃん♡」


 先ほどの狂暴さは微塵もない。兄に甘える幼い妹、そのものだった。


「はあ!?」


「わかった! このドナが、ぜ〜んぶ協力して、あ・げ・る♡」


 潤んだ瞳で上目遣いに訴えかけてくる。


「そんなに言うなら、このドナが、お兄ちゃんの『妹』になってあげる! だから、この石、ドナにも見せて! お兄ちゃん!」


「はあぁぁぁぁ!?」


 極端すぎる豹変ぶりに、悠真は思わずドン引きした。

 背後では、セレスティアとリーファが口をあんぐりと開けて言葉を失っている。


 ドナは悠真の腕に頬をなすり付けながら、さらに続けた。


「ふふん! 約束だよ、お兄ちゃん! これからは、ドナの言うことは絶対聞く、ドナのわがままは聞いてもらう。絶対だぞ……あいてっ!」


 限界を超えてドン引きした悠真は、無言でドナの頭上に空手チョップを振り下ろした。


「いや、気持ち悪いって。離れろドナ……あいてっ!」


 今度は背後から、セレスティアの錫杖が悠真の頭をポカンと叩いた。


「ゆうゆう……。わたくしはもう、どうでもよくなりました」


 完全に理解を超えた目で二人を見ると、半ばあきらめの表情で息を吐く。


「この際だから、そのドナ様のお兄さんになっておあげなさい。目的のためには、いた仕方ありませんわ」


「さっすが、お姉ちゃん! じゃあお兄ちゃん、これからよろしくね♡」


「いや、兄になれって。さすがにそれは……」


 抗議の視線を送るが、セレスティアは斜め上の解釈を始めていた。


「お姉ちゃん……。ゆうゆうがお兄さまということは、つまり、わたくしはドナのお姉さま。……それも悪くないですわね、うふふ」


 何やらおかしな独り言をつぶやいている。


 その隣で、リーファが悲鳴のような小さな声で呟いた。


「悠真さん……その運命の石、なんだか恐ろしいものを引き寄せていますね……」


 悠真はあきらめて、ドナのお兄さんになることにした。

設定・イメージイラストは、ピクシブに掲載中です。

https://www.pixiv.net/users/119429388

評価・ブックマークして頂けると、とても嬉しいですわ。

毎週、火・金の夜21時30分に最新話をUPしてますの。

是非、お待ちしておりますわ♡

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ