表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
残念で不幸なぼくを異世界美少女が欲しがる件について  作者: 高安ゆき(ゆきゆき)
第2章:『残念で不幸な僕を、異世界美少女が欲しがる件について』

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
39/85

第12話:技術都市にもいた、あのメスガキ(第2節)

 賑やかな広場に差し掛かった、その時だった。


 ピンク色のツインテールに、あの見慣れた生意気そうな表情。


 悠真の心臓が、ドクリと大きく脈打った。


(う、嘘だろ……なんで、小春がここに!?)


 この異世界に、元の世界の実の妹がいるはずがない。それでも、あの姿は間違いなく――。


 くすんだピンク色のホットパンツに革のエプロン姿という、普段の服装とは違うが、悠真が元の世界に残してきた妹、高橋小春にそっくりな少女が、そこに立っていた。


(まさか……本当に小春なのか? でも、どうやって?)


 もしかしたら、マンホールから落ちた後、桜井さんが家族に連絡し、僕を探しに後を追って来たのかもしれない。

(でも、そんなことが可能なのだろうか?)


 頭の中では、この異世界に妹がいるはずがないと分かっている。だが、胸の奥で高鳴る希望は、抑えきれなかった。



 セレスティアとリーファが悠真の腕を組んだまま、どうしたのかと顔を見合わせた。


「ゆうゆう、どうかなさいまして?」


 セレスティアが心配そうに声をかける。


 しかし、悠真はその声が耳に入らない。彼の瞳は、ただ一点、ピンク色のツインテールの少女に釘付けになっていた。


「小春!」


 悠真は、セレスティアとリーファの腕を振りほどき、叫びながら人混みの中へ飛び出した。


「ちょっと、ゆうゆう!?」

「悠真様っ!?」


 セレスティアとリーファが驚いて声を上げるが、悠真は振り返らない。

 彼は、背の低い少女が機械の陰から鍛冶屋街の奥へと消えていくのを、この目で見逃すわけにはいかなかった。



「待て! 小春! 待ってくれ!」


 金属と鉄の匂いが立ち込める鍛冶屋街は、朝の活気でごった返している。


「どけっ、どいてくれ!」


 悠真は、体格の良いドワーフの職人や、荷を運ぶ獣人の横を、勢いよく駆け抜けた。


「おい、走るんじゃねえ!」


 怒鳴り声が背後から飛んでくるが、構っていられない。


(ピンクのツインテールに、生意気そうな顔……それに、小柄でツルペタな立ち姿。間違いなく、俺の妹そっくりだ! ……なんで、こんな異世界に、いるんだ!?)


 金属を叩く轟音が、四方八方から響いてくる。ガンガンガン、という規則的な音。シュゥゥゥゥ、と水蒸気が上がる音。


(どこだ、どこに行った!?)


 悠真は広場を抜け、金属を叩く不規則な轟音が響く路地を走り続けたが、さっきまでいたはずの少女の姿は、どこにも見当たらなかった。


「ハァ、ハァ……どこだ、小春……」


 息を切らし、立ち止まる。周りを見回しても、いるのは汗まみれの職人たちと、無骨な機械や道具ばかり。

 悠真は、この異世界に妹がいるはずがないと理屈では分かっていたが、胸の奥で高鳴る、再会への希望を抑えきれない。



「小春!」


 口元に両手を添えて、大声で叫ぶが、見当たらない。


 悠真がもう一度、街中を探し回ろうと、踵を返して勢いよく方向転換した、その時だった。


「あっ……!」


 背後から近づいてきた女性と激しく衝突した。


「うわっ!」


 バランスを崩し、倒れまいと咄嗟に――


 前に突き出した、その両手は――、



(ムギュッ)


 驚くほど柔らかく、そして豊かな弾力を持つ「膨らみ」に、吸い込まれるように沈み込んだ。



カラン……バサッ!


 女性はその衝撃で硬直し、手に持っていた樫の木の杖と、手提げ袋を取り落とした。

 袋の中からは大量の薬草が散乱する。


 悠真は、両手でその柔らかさをがっしりと掴んだまま硬直した。

(や、やばい……!)


 驚愕の表情で相手の顔を見上げようとした、ちょうどその時……。


「ゆうゆう!?」

「悠真様?!」


 セレスティアとリーファ、そしてボニーが、衝突現場に追いついた。


 三人は、悠真が見知らぬ女性の胸を両手で掴んでいるという、弁解の余地もない決定的な場面を目撃してしまった。


 セレスティアとリーファは一瞬顔を見合わせた後、すぐさま絶対零度の視線を悠真に向けた。


「ゆうゆう……」

「悠真さま……」


 悠真は背中に、氷のような冷たい汗と、明確な殺気を感じた。


 その間も、胸を掴まれた女性は、赤紫の瞳に深い侮蔑の色を浮かべ、悠真を上から見下ろしていた。彼女の細長くとんがった耳が、怒りで小刻みに震えている。


「何をするのよ、凡人」


 悠真は、ようやく相手の姿をしっかりと見た。


 すらりとした長身に、腰まで伸びるミント色のストレートロングヘア。細長く尖った耳。透き通るような白い肌。


(これが、アニメでよく見るエルフだろうか……?)


 可愛いフリルのドロワーズ付きペチコートワンピースの上に、胸に金の留め具のある丈の短い紫のローブを羽織っている。その装いは、どこか少女のような可憐さと、学者としての威厳を併せ持っていた。


 そして、悠真の両手は――


 その胸元を、未だにがっしりと掴んでいた。


「あ、あの、すみません! 本当に! わざとじゃ……!」


 悠真は弾かれたように手を離し、平身低頭で謝罪した。

 柔らかな感触と温もりが、手のひらに生々しく残っている。


 彼女は無礼に触れられた胸元を抑えながら、ジト目で悠真を汚物でも見るかのように睨みつけた。


 そして、薄い唇から氷のような声で言い放つ。


「死ねば?」


 鍛冶屋街の喧騒の中、悠真の周囲だけが、絶対零度の氷に閉ざされていた。


カラン……コロン……。


 足元では、彼女の樫の木の杖が転がり、散らばった薬草が虚しく風に揺れていた。

設定・イメージイラストは、ピクシブに掲載中です。

https://www.pixiv.net/users/119429388

評価・ブックマークして頂けると、とても嬉しいですわ。

毎週、火・金の夜21時30分に最新話をUPしてますの。

是非、お待ちしておりますわ♡

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
私の作品を読んで下さり、ありがとうございました ( ⁎ᵕᴗᵕ⁎ )୨୧
よろしければ、評価&ブックマークをして頂けると、とても嬉しいですわ。

毎週、火・金の夜21時30分に最新話をUPしてますの。
次回も是非、お待ちしておりますわ ♡ (ू•ᴗ•ू❁)୨୧

また、このラノベの設定資料やイメージイラストは、ピクシブに掲載中です。
イラストも是非、ご覧くださいませ ( ⁎>ᴗ<⁎ )୨୧
https://www.pixiv.net/users/119429388
カクヨムにも作品連載中、ぜひご覧ください。
『高安ゆき、13歳。AIじいやと小説をはじめますの ( ⁎ᵕᴗᵕ⁎ ) ୨୧』
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ