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残念で不幸なぼくを異世界美少女が欲しがる件について  作者: 高安ゆき(ゆきゆき)
第2章:『残念で不幸な僕を、異世界美少女が欲しがる件について』
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第9話:馬上の姫と、戦場の導き(第3節)

ルナの的確な指示と、暴走した馬が偶然作り出した安全な突入路によって、戦況は一変した。

「行け!馬が通った道だ!怯むな!」

ルナの叫びとともに、傭兵団は一斉に突撃を開始した。罠が仕掛けられているのを知り警戒していた傭兵たちは、馬の通り道の罠がすでに起動済み、あるいは解除されていることを知り、躊躇なく敵陣深くに切り込んでいった。

先鋒を務めるルナの剣技は凄まじく、彼女の長剣が閃くたびに、オークやゴブリンが血しぶきを上げ、地面に倒れていった。

その背後では、ボニーとリーファが声を掛け合った。

「ボニーさん、私たちも追いかけましょう!お二人とも心配ですわ!」

リーファは必死な様子で言った。

「は、はい!リーファ様!ぼ、僕たちも急ぎましょう。しかし、あの馬のスピードじゃ、無事かどうか……」

ボニーは相変わらず弱気な口調ながらも、使命感から慌てて後を追った。

悠真とセレスティアを乗せた馬は、もはや制御不能のまま、魔物の群れの中を突っ切り、そのまま山道の奥へと走り続けた。

「止まって!止まりなさい!お願い、止まってえええ!」

セレスティアが馬の耳元で絶叫した。

「た、頼むから、止まってくれぇ!」

悠真も泣きそうな声で馬に懇願した。悠真の絶叫とセレスティアの悲鳴は、傭兵団の鬨の声と魔物の断末魔に紛れ、次第に遠ざかっていった。

圧倒的な戦力差と、ルナの冷徹な指揮により、魔物集団は瞬く間に壊滅した。

「全軍、手を止めろ!魔物は壊滅した!」

ルナの宣言に、傭兵団は疲労の中にも歓喜の声を上げた。

「「「おおおおお!!やったぞ!勝利だ!」」」

ルナはそう命じ、血に塗れた剣を鞘に納めた。しかし、彼女の視線は、壊滅した戦場ではなく、未だ遠くへと走り続ける馬の背中に向けられていた。

「おい、馬鹿どもは、どこまで行くつもりだ」

「ルナさん、待ってください! 私も一緒に追いかけます!」

リーファがそう叫び、必死で馬の後を追った。続いてボニー、そして数名の傭兵たちが、後を追って馬が走り去った山道を急いだ。

その頃、暴走を続けていた馬は、激しく荒い息を吐きながら、ようやく大人しくなっていた。悠真とセレスティアは、その場で全身の力が抜け落ち、馬の背にしがみついたまま呆然としている。

「はあ、はあ……や、やっと止まってくれたわね……」

セレスティアは安堵と疲労で息を切らしながら呟き、ふと我に返った。

「っ!いつまで、わたくしの胸を触っているんですか、エッチ!」

セレスティアが再び顔を真っ赤にして、悠真を強く押し返した。

「うわああ!」

悠真は強く押され、馬の背から後ろ向きに転がり落ちた。

その時、ルナとリーファたちが追いつき、ボニーが馬に駆け寄り、心配そうに声をかけた。

「セレスティア姫!ご無事ですか!」

「おい、お前ら。まさかこんな場所まで無傷で来るとはな。」

ルナも二人に、ワイルドな口調で声をかけ、二人はびくりと体を震わせた。

リーファは転がっている悠真を見て駆け寄り、心配の声を上げた。

「悠真様!馬の暴走で振り落とされてしまったのですね!お怪我はありませんか?」

セレスティアは、自分の胸元を両手で覆い、真っ赤な顔で目を泳がせたまま、

「わ、わたくしの馬が急に荒ぶったものですから……」

と、その事実のみを呟いた。

地面で呻いていた悠真は、リーファの心遣いを察し、慌てて起き上がりながら、顔の前で両手を振って誤魔化した。

「あ、はい!大丈夫です!ちょっと、転んだだけ、です!」

悠真はそれ以上言葉を続けず、落馬の際に擦りむいた腕をさすり、必死に平静を装った。

ルナは、二人の様子を特に追及することなく、二人の後ろの岩陰を指さした。

「おい、あれを見ろ。」

ルナの視線の先、山道の奥にある大きな岩の陰に、何かを発見した。それは、複数のオークや大型ゴブリンが出入りした痕跡がくっきりと残る、不気味な黒い大穴――魔物の本拠地、巣穴だった。

悠真とセレスティアは、その大穴を呆然と見上げていた。

「な、なんだ、これ……?」

悠真が震える声で呟いた。

「……信じられない。この山奥に、これほど大規模な巣穴が存在していたなんて」

ルナは、長剣を再び引き抜きながら、そう呟いた。

「悠真、でかしたぞ! この巣穴を潰せば、周辺の村や街道は永続的な平和を得る!」

ルナは迷わず指示を下した。

「セレスティア姫、悠真、リーファ、ボニー。すぐに終わらせるから、しばらくここで休憩しててくれ。ここから先は我々傭兵団の仕事だ。」

「全傭兵に伝えろ!目標を巣穴内部の掃討に切り替える!敵の本拠地を叩き潰すぞ!この山域に巣食う魔物を全て根絶やしにせよ!」

ルナの命令が響き渡り、魔物の巣穴への一斉攻撃が開始された。

その間、リーファは転んだ悠真の体にできた擦り傷に気づいた。

「まあ大変、悠真様!腕を擦りむいていますわ!」

リーファは慌てることなく、そっと悠真の腕に触れると、静かに緑色の光を灯した。治癒の魔法だ。たちまち悠真の腕の擦り傷は綺麗に消え、皮膚は元通りになった。

「あ、ありがとう、リーファ。助かるよ……」

悠真はリーファの優しさに感謝した。

それを見ていたセレスティアは、手の甲を口元に当てながら、

「ほほほ、とんでもない暴れ馬でしたわね。」

と、ごまかすように、そう言った。


一行は巣穴の入り口から少し離れた、山道の木陰に腰を下ろした。まだ遠くから魔物の咆哮と、ルナたちの剣戟の音が聞こえてくる。

リーファは、先ほど治癒魔法を施した悠真の腕をそっと見つめていた。

「よかった、もう跡形もなく治っていますね。痛くないですか、悠真様?」

「あ、うん。ありがとう、リーファ。治癒魔法ってすごいな、もう全然痛くないよ」

悠真リーファのやり取りをそばで見ていたセレスティアは、自分の胸元をそっと触りながら、隣に座るリーファの豊かな胸を、自分の小さな胸と比べるような仕草をした。

「……ゆうゆう。さっきのこと、ちゃんと覚えてますわよ?感想は、あとでこっそり聞かせてくださいね?」

セレスティアは真剣な顔で、非常に意地悪な質問を投げ、悠真は顔から火が出るほど赤くなった。

次にセレスティアは、隣に座るボニーの胸をまじまじと見つめ始めた。ボニーは、セレスティアの視線に気づき、慌てて腕で胸元を隠すように身をかがめた。

「ひ、姫様……な、何か?」

ボニーは戸惑った声を出した。

「ねえ、ゆうゆう。その……やはり殿方は、大きいほうがよろしいのかしら?」

セレスティアは再び悠真に質問する。

「そ、そんなことないですよ!人によりますし、ぼ、僕は別に……!」

悠真は顔から火が出るほど赤くなり、必死に手を振った。

「……?お二人とも、何のお話ですか?」

リーファが不思議そうに首を傾げるが、セレスティアと悠真は目を合わせず、顔を赤くしているだけだった。

「ところで、ゆうゆうも疲れているでしょう?……わ、わたくしの膝枕で休んでもいいんですのよ?遠慮はいりませんわ」

セレスティアは、楽しそうに話題を変え、悠真の方に少しだけ体を傾けた。

「い、いや、セレスティア様、大丈夫です!座って休んでるだけで十分ですから!」

セレスティアは顔を赤らめつつも、悠真に膝を差し出した。悠真は慌ててそれを辞退した。


数時間後、戦いは終結した。巣穴は完全に制圧され、この地域を襲っていた魔物は全滅した。ルナの傭兵団と王国の兵は、大きな犠牲を出すことなく、偉大な功績を上げたのだった。

「みんな、待たせたな」

すべてが終わるとルナは、夕暮れの山道で座り込んでいる、悠真たち一行の前に立った。

「悠真、お前の能力は、本当に大したものだ。最初は、ただの足手まといかと思ってた。けど今は違う。お前の『運』が、俺たちを救った。礼を言う、悠真」

ルナはそのまま悠真に向き直り、素直にそう口にした。その瞳には、もはや軽蔑はなく、純粋な感謝と敬意が宿っていた。

そして、ルナは笑顔を浮かべて言った。

「お前たちには、この功績に対する感謝のしるしをしたい。休息がてら、今夜は私たちの拠点に立ち寄ってくれるか?もちろん、もてなすぞ」

この戦いで、ルナは悠真に対する認識を完全に改めた。彼はただのひ弱な男ではなく、戦況を一変させる「何か」を持っている。この異世界の救世主は、自分が思っていたよりも遥かに危険で、そして重要な存在だと感じた。

読んでいただき、ありがとうございます♡

評価・ブックマークして頂けると、とても嬉しいですわ。


毎週、火曜日と金曜日の、夜9時30分ごろに投稿予定ですので、

次回も是非、お待ちしておりますわ♡

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