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自傷少女  作者: プリン
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プロローグ(仮)

プロローグ『自傷少女』


「いっ……」


傷口から赤いモノが流れ出す。

その傷口は大嫌いなクラスメイトや両親から受けたモノではない。

"私自身"で付けた傷だ。

刃渡り5cmのカッターで自分の左腕に刺しこむ。

そのままゆっくりと動かして傷口を更に開く。


「…ったくないなぁ…」


痛みのない左腕の傷口を観ながら情けなく小さな声が誰もいない4階のトイレで響く。


私は昔から『痛み』を知らない。

世間では私のような人間を『DOLL』と呼ぶらしい。


昔の比べて自傷行為自体そんなに珍しい事ではない。

五年前、国の法律で20歳未満のSNSの利用が禁止になった。

ストレスの吐き場所を失った少女たちは承認欲求を満たすことが困難になり、自傷行為に走るしかなかったのだ。


「そろそろお昼休み終わるや…戻らなきゃ」


傷口の赤いモノを水道で流してヨレヨレの制服の裾で隠す。

誰も私には興味は無いだろうし、誰も私の事なんて気にしないんだけどね。


4階の空き教室横のトイレから急ぎ足で教室に戻る。


そう、目の前の光景はいつもと変わらないつまらない日常のはずだった。


「えっ……」


教室に入ると鉄のような臭いと肉片が目の前に広がっていた。


私に背を向けている男性が私と同じ制服を着た少女の髪を掴み刃渡り6cmのナイフを向けているのだ。

その真下で大量の赤いモノを流した少女の肉片が3つほど転がっていた。


「お前らはいつもいつも俺の邪魔ばかりしやがって!一人残らず殺してやる…!」


その男性は私がよく知っている誰にでも優しく、こんな私にも笑顔を向けてくれる担任の先生だった。


「やめてください…ごめんなさい…もうちゃんと言うこと聞きますから…!」


掴まれてる少女は私を虐めていた少女A。正直名前までは覚えてない。


「そうやって都合の悪い時ばかり豹変する。お前らはモンスターだよ。モンスター。」


ぶんぶんと振り回しているナイフが少女Aの首や腕に何度も当たりその度に赤いモノが飛び出る。

その赤いモノも私の制服に飛び散った。


その光景を見ている教室のクラスメイト共々は悲鳴を上げ、中には恐怖で崩れ落ち微動だもしない者も。


それでも私はただ、その光景をぼーっと見ている事しか出来なかったのだ。

クラスメイトの少女Aが死んだところで私には関係ない。

少女Bや少女Cの肉片が転がっていてもただ跨いで躱すだけ。

そうして私は乱れた自分の机を元に戻し席に座る。


「先生、早く帰りたいので授業をしてください」


気づいたら私は言葉を零していた。


教室の人間がキョトンとした目で私の方を見る。


「お前、誰に向かって言ってるんだ?」


担任だったモノがこちらに向かいながら呟く。

その片手には掴んでいた少女Aの姿は無い。


「誰って、あなた以外いませんよね。須藤先生っ」


私が言葉を吐き終わる頃には宙ぶらりん状態になっていた。


きっとこのまま片手のナイフで刺されるのだろうか。


(やり残した事は正直沢山あるけど、このまま終わってもいいや。)


そう思ってそっと目を閉じたその時、担任の片手のナイフがありえない方向へと弾かれた。


「なっなっ…なんだ、その腕はっ…!!」


宙ぶらりんの身体は離され地上に足が着く。

担任はこの世のモノとは思えない『怪物』を見たかのような反応をしながら後ろへと引き下がる。


怪物を見たような顔をしているのはどうやら担任だけでは無いらしい。

悲鳴や怒号の阿鼻叫喚が教室中に鳴り響く。


その中の言葉には聞き覚えのある言葉も混じっていた。

その言葉が私の中に吸い込まれる。


「DOLLだ…」


その言葉でこの教室の怪物が誰なのかやっと気づいた。


『私なんだ。』


左腕の傷口から流れていた血液は大きな刃物のような形になっている。

その時私は初めて痛みを知った。


酔った父親から殴られた時。

クラスメイトに乱雑に髪を切られて刃が肌に触れた時。

自分の腕をカッターで切った時。


今までの体験が比にならない位の痛みを私は今実感した。


私はDOLL。

この痛みを知って、私は今まで味わったことの無いセイを感じた。

ここまで読んで下さりありがとうございます。

初投稿でまだまだ試作の段階なので修正や添削等が必要な箇所が多いですが見守って頂けると嬉しいです。

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