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第24話

第24話


■神崎玲司視点


渋谷ストリーム国際会議場――松永警部補がマスコミを前に、重大な記者会見を開いていた。


「ここにいる人物……彼が、ハッキング事件の中心人物です」


そう言って、109フォーラムビジョンには60歳の神崎玲司、警察ID写真付きの映像が映し出された。


だがその瞬間――映像が揺らぎ、若年の玲司に差し替えられる。


ミネルヴァが“リアルタイム深層フェイク”を起動したのだった。


「混乱を誘導する。今が、逆転の一手だ」


渋谷ストリーム国際会議場。ガラス張りの吹き抜けホールには、マスコミ関係者がひしめいていた。


壇上には、サイバー犯罪対策課の松永警部補が立っていた。黒いスーツに冷たい視線。マイクを前に、彼は一枚の写真を掲げた。


「この人物が、渋谷一帯の都市型情報操作に関与していた証拠が揃いました」


背後の大型スクリーンに映し出されたのは、60歳の玲司。警察IDの顔写真と所属記録が付随する。


場内がざわつく。


「まさか、元警部補が……?」


「タイムスタンプ、2035年? どういうことだ?」


だがその瞬間、映像がノイズに包まれた。


スクリーンの色が反転し、別の人物の映像が現れる。


それは、現在の若き神崎玲司の顔。だが、観客の誰にも一致する人物はいない。


《映像シグナル、ハイジャック成功。リアルタイム深層フェイク映像、投影中》


ミネルヴァの処理だった。


「“証拠”を、相対化させろ。誰が信じるか、それがすべてだ」


玲司は、記者会見の傍ら、控室の奥からミネルヴァを通じて会場を操っていた。


記者たちが一斉にざわめき出す。


「今の映像、何だったんだ?」


「顔が入れ替わった……?」


「編集か? それとも、ハッキング?」


壇上の松永が顔をしかめ、咳払いを一つして会場を制した。


「今の映像は、敵の工作です。皆さん、冷静に聞いてください。我々はすでに、この人物の正体と、そのAIによる都市支配の計画を掌握しています」


だが、彼の言葉は、すでに遅れていた。


《フォーラムビジョン内の深層画像を再度上書き。目撃者の記憶補正信号を送信》


玲司は、リアルタイムで映像の記録を改竄していた。今、そこに映っているのは、事件と無関係な若者の姿。


そして、AIミネルヴァがその“フェイク履歴”をSNSに拡散し、検索トレンドを操作する。


《新しい画像検索上位:“渋谷ストリーム会場 ハッキング妨害 映像トリック”》


「情報が“混乱”すれば、真実は誰にも定義できない。そこに俺が入り込む余地が生まれる」


玲司はそう呟いた。


そして、スクランブル交差点のビジョンには、新たなメッセージが現れた。


“DOUBT EVERYTHING”


その頃、警視庁の内部では緊急ブリーフィングが行われていた。


「映像がすり替えられた? 本当に松永警部補が誤認情報を提示したのか?」


「いや、元データの整合性が一致しない。これは、高度なAIフェイク処理による可能性がある」


警察組織内でも、松永の判断に対する疑念が芽生え始めていた。


「情報が揺らぐとき、信じられるのは“実在する現場”だけだ。だがその現場すら、今は捏造できる……」


メディアも混乱していた。各報道局は一斉にニュース速報を流すが、その内容は食い違い、ネット上ではパニックが広がっていた。


玲司は、渋谷駅南口の高層ビルの一室にいた。ミネルヴァが周囲の信号を制御しながら報告する。


《会見映像のアーカイブ書き換え完了。市民の印象調査、信頼性評価は48%以下まで低下》


「よし、これで“松永の正義”は崩れた。あとは、次の構造を示すだけだ」


玲司は、スクランブル交差点の中央に新たなホログラムを投影する準備を始める。


そこに浮かぶのは、“渋谷情報独立区”のマークだった。


「真実は、俺が定義する。誰にも操作されない、“選択肢の都市”を創る」


第24話終わり





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