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「深夜のコンビニで、」
冷凍ケースの前で、ふたり並んでアイスを選んでいた。
夜中のコンビニは、人影もまばらだった。
私は身を乗り出してカップアイスを覗き込む。
そのとき、不意に、後ろから彼が体を寄せてきた。
気配に気づく間もなく、
彼の体が、私の背中にふわりと重なった。
腰のあたりに、あたたかい圧力がかかる。
すぐに、彼が慌てて一歩ひいたけれど、触れた感覚だけは、なかなか消えなかった。
「ごめん、近すぎた」
笑いながらそう言う声が、やけに耳に残る。
私は顔をあげられないまま、カップアイスをひとつ選んだ。
何を選んだのか、自分でもわからなかった。
会計の列に並ぶあいだも、彼の手が、私の手提げ袋にそっと触れた。
たぶん、偶然だった。
でも、袋越しに触れた指先に、さっきの体温がまだ残っている気がした。
コンビニを出ると、夜風が頬を撫でた。
でも、どこか、体の内側だけが、熱をもっていた。