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「雨宿りのバス停で、」
バス停の屋根の下に、私たちは並んで立った。
雨粒が、絶え間なくアスファルトを叩いている。
ちょうど駆け込んできたばかりで、髪も服も、まだ水を含んでいた。
シャツが肌に貼りついているのを、自分でもわかる。
背中も、腕も、じっとりと湿って、冷たかった。
わざとらしく腕をこすったけれど、あまり意味はなかった。
「震えてる」
彼が、ぽつりと言った。
すぐに、何のためらいもなく、肩を抱かれる。
湿った服のうえから、彼の腕の温度が伝わった。
触れられたところだけ、じわりと熱をもつ。
雨に濡れた肌に、彼の掌のかたちが焼きつくようだった。
耳たぶが火照るのを、必死で隠す。
ふと、視線を感じて顔をあげると、彼もこちらを見ていた。
無言のまま、目が合う。
何かを言いかけて、やめた。
雨音が、ふたりのあいだの沈黙を隠してくれる。
この手を、もう少しだけ、離さないでいてほしいと願った。
心臓の鼓動を、雨の音にまぎらせながら。




