絶世の田舎爆乳令嬢、誕生 ①
ここは......。
短い間に何度も意識を飛ばし、何度目かの蘇生をする。
ぼやけていた視界が鮮明になっていと、見知らぬ天井が見えた。
肌に触れているのは布地の物は見なくてもわかる。ふかふかでツルツル手触りの最上級のベッド。
このベッドなら、二度寝最高だろうな。 再び目を瞑ろうとすると、
「シャーロット!」
ニ次元から飛び出してきたのだろうかと思うほどの、美しい男性が目に飛び込んできた。彼はそう......30代ぐらいだろうか。
「シャーロト!」
今度も二次元ばりの美しい女性が、涙目で私を覗き込む。彼女は20代後半か。
「姉様!」
今まで見た二次元にもいなかった美少女が、私に抱きつく。
可愛っ! 激カワ! しかも綿菓子みたいな甘い香がする。 抱きしめかえすと、美少女が胸の中で泣き出す。 美少女を泣かせるなんて。
「泣かないで......ソフィア」
ソフィアって誰? 知らない名前が、口からついて出た。
「ごめんなさい、シャーロット姉様。ごめんなさい......」
美少女ソフィアはさらに泣き出してしまう。
「泣かないで。私の可愛いソフィア」
ソフィアの頬に手をあてると、その手に頬を擦り寄せる。
きゃ! 可愛い!!
今は小さな声しか出せなくなっているようだが、もし大声が出せるのなら、叫んでいただろう。
ソフィアは激可愛い。 この美少女は絶対に泣かせてはいけない人種で、泣かせる奴は私が許さん。
「ああ、シャーロットはなんて優しい子なんだろう」 美しい男性が目に涙を浮かべながら、私の頭を撫でる。
「一体何が、あったのですか?」
現状確認。 知らない状況に置かれた時の鉄則。
「シャーロットとソフィアが庭の池で小船に乗っていたら、風も何もなかったのに急に小 船が転倒してソフィアが池に放り出されたんだ」
美男性はベッドで横になったままの私の傍で跪き、手を握った。
「その時姉様が池に飛び込んでくれて、私を助けてれたの。でも姉様は沈んでいってしまって……」
溺れかけていたことを思い出したのか、ソフィアが自分の両腕を抱き抱える。
「ソフィア、ケガはなかった?」
こんな国宝級の美少女にケガなんてさせてしまったら、それこそ大きな問題よ。
「ううん。どこもケガはしていないわ」
ドレスの袖をめくって見せてくれた陶器のような滑らかな腕には、かすり傷ひとつない。
よかった。本当によかった。
記憶はないけれど、とりあえず私、国宝を死守できたのね。
でも私、池に沈んで行ったのよね。じゃあ、今どうしてここにいるのかしら?
もしかして……。
「あの、私のことを誰か助けてくださったのですか?」
「たまたまその場にいた庭師のスミスさんが助けてくれたんだけど、丸2日意識不明で……。シャーロットが目覚めたのは奇跡だわ これも神の思し召しなのよ」
美女性は涙をハンカチで拭いた。
なるほど。
コレは神の思し召しではなくて、女神の仕業か。
女神、このやり方は無理矢理感が否めないぞ。
次からはもっと自然な形の偶然を、演出してほしい。
さて現状把握に戻ろう。
話の流れと内容を整理すると、池に落ちた妹のソフィアを私、シャーロットが助けたが丸二日間私は意識がなかった。
で、この話をしてくれたのは、多分私の父と母なのかな?
彼らの立ち位置によっては、私の立ち位置も接し方も変わってくる。
早急に確認しなければいけない。
もし間違っていても「まだ意識が混濁していて勘違いした」とでも言い訳できる今、一か八かで聞いてみよう。
「父様、母様、ご心配をおかけして、ごめんなさい」
ゆっくりと体を起こしながら言い、様子を伺う。
「何を言っている。我が子の心配をしない親なんていない。シャーロットもソフィアも私たちにとって、自分の命より大切な人だよ」
起き上がろうとする私の背中に手を添え、手伝ってくれる。
「そうよ、私達家族の元に帰ってきてくれて、ありがとう。私達の愛するシャーロット」
女性は背中を撫でてくれた。
彼らはシャーロットを深く愛している両親で間違いない。
可愛い妹に、優しくシャーロットを心から愛してくれている両親。
きっとシャーロットは、みんなの愛に包まれながら育った幸せ者だったのだろう。
前世では親孝行する前に死んでしまったから、今世では親孝行していきたい。
伝えられる時に感謝の気持ちを伝えていきたい。
「父様、母様、ソフィア、心配かけてごめんなさい。看病してくれて、ありがとう。前よりも元気になるね」
本当はすぐにでも動き出したいところだけれど……転生って意外と体力使うみたい……。
起き上がったばかりだけれど、
「もう少し眠ります」
再び横になり今度は気を失うではなく、ふわふわのベッドの上、安らかな眠りについた。
あ、紛らわしい言い方だけれど、決して死んでいません。