こんな転生、ありますか!? ③
「きゃーー! 避けてーー!」
頭上から女の人の叫び声が聞こえ無意識に、後退りする。
「あーー! やっぱり受け止めてーー!」
そんな叫び声が聞こえた時には、空から女の人が落ちてくる姿が目に飛び込んできた。
え? 受け止める?
え!? 受け止めるの!?
抱き止める体勢で女性の真下に入ると、白猫が腕の中からひょいと飛び退く。
「きゃーー!!」
「きゃーー!!」
二人同時に叫び、女性は真っ逆さまに落ちてくる。 私は女性を受け止めるべく、両手を広げて踏ん張る。
そういえば、落ちてくる成人女性を受け止めたことなんてなかったけど、衝撃はすごいのだろうか?
そもそも成人女性を受け止められるのか?
女性共々大怪我をするか、最悪、死んでしまうかも?
あ、でも私死んでるからそれはないか。
それでもやっぱりぶつかったら痛いのかな?
時間的には女性が私の元に落下してくるまで、数秒のことだったと思う。
でも頭が覚醒していたのか、いろいろと考えていると、女性が私の腕の中に落ちてきて......。
死んでても、やっぱりもう一度死ぬ思いするのは嫌だし、痛いのも嫌だー!
目をギュッと閉じ衝撃に備えていたが、いくらたっても女性を受け止めた衝撃がなければ、触れた感覚もない。
あれ?
ゆっくりと目を開けると、腕の中に美しすぎる女性がいる。 いるのはいるが、浮いている。
私の腕に触れるか触れないか、ミリ単位上で浮いている。
そして女性は満面の笑みを浮かべ、
「合格です!」
私を抱きしめた。
「合格? なにが?」
「何がって、特別転生枠に合格したのよ」
女性の体はさらに浮き私の腕の中から抜け出し、つま先から水面に着地する。
「今ね『前世で良い行いをした人の中から抽選で1億人を、異世界転生させてあげるキャ ンペーン』を開催しててね、あなたが当選したの」
「は......はぁ?」
女性が何をいっているのかわからず、へんな声がでた。
「しかもね、私の転生チームでは『落下する私を助けることができた人のみ、すべての希 望を叶えてあげようじゃないですか』キャンペーン中なの。すごくない?」
女性は私の手を握り、完璧すぎるというか美しすぎる顔を近づける。
人間離れした美貌に目が眩み、思わず顔を背けてしまった。
「さらに! 私は美の女神だから容姿は最上級! 転生先は争いごとのない平和な世界にしてあげる。これ全部、私が及ぼす力。すごくない?」
自称美の女神は、キラキラした瞳で俯いた私を覗き込む。
どこまでも吸い込まれてしまいそうなエメラルドグリーンの瞳に見つめられると、女性が美の女神でもおかしくないのではないかと思ってしまう。
「それで、あなたは転生にあたり何を願う?」
……ん?
自称美の女神に立て続けに理解不能なことを猛スピードで話され、最後に「あなたは転生にあたり何を願う?」と聞かれたわよね。
これって、本当に転生してくれるパターン?
こんな展開凄すぎなんですけど!
生前は平々凡々な生活だったのに、死んだ後にびっくりターンでてきたんですけど!
『そうなったらいいな〜』と思っていたことが、まさに現実になろうとしていて、ワクワクが止まらない。
でもここで浮かれてはいけない。上手い話には、裏があるっていうじゃない?
だからわからないことは、しっかり詰めておかないと、後々困ることが出てくるかもしれない。