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爆乳令嬢、商売を始める ④

「シャーロットお嬢様! 大変で御座います!」

 デジャビュ? と思わせるように、家族全員でハーブティーを楽しんでいると、侍女のミアがドアのノックも忘れて部屋に飛び込んできた。


「今日はどうしたの?」

 そう言いながら、ミアにもティーポットに入っていたハーブティーをカップに淹れ手渡す。


 ミアは渡されたハーブティーを一口飲むと、いつものように深呼吸をする。

「あの容姿端麗、品行方正、頭脳明晰、文武両道、完璧超人と噂高いエバンス侯爵家のマイロ様からお手紙が届きました」

 エバンス家のマイロ様? はじめて聞く名前。


 理想の人物像を言葉にしたような人が実在していたなんて知らなかったし、その早口言葉のような文言を言わないといけないのかと聞きたいところだったけれど、そこはあえてスルーしよう。


 銀色のトレイに仰々しく置かれた手紙を、手に取る。

 確かに上質な紙でできている封筒には、見たことのないような複雑な紋章が記されている。

 ペーパーナイフで封を切り、手紙を読む。

 手紙には美しく見本のような文字と文章が並ぶ。

 内容をまとめてみると10日後に、エバンス邸でパーティーがあるそうで、そのパーティーで私のデビュタントもしてくれるそう。


 エバンス邸は王都に近く、我がイリック家からかなり遠い。

 しかも私、田舎貴族のただの娘で、エバンス家とも関わりは一切ない。

 そんな娘のために、位の高い侯爵家が社交界デビューパーティーであるデビュタントを開くのは普通なの?

 いや、普通に考えたら異例中の異例だし、おかしい。

 これは何か魂胆があるはず。


「お父様、公爵家のエバンス様からこんなお手紙が……」

 手渡し、内容を確かめてもらう。

 全て読み終えたお父様は「う〜ん」と唸り、今度は手紙をお母様に手渡す。


「あの容姿端麗、品行方正、頭脳明晰、文武両道、完璧超人と噂高いマイロ・エバンス様がシャーロットのデビュタントを開いてくださるなんて、今まで聞いたこともないぞ」

 お父様もエバンス様のことを話す前には、早口言葉みたいな文言をおっしゃるのねとはツッコマず、お母様に手紙を渡し、お母様も手紙に目を通す。 

「本当ね、容姿端麗、品行方正、頭脳明晰、文武両道、完璧超人と噂高いマイロ・エバンス様とシャーロットは面識がなければ、手紙のやりとりもこれが初めて。接点はないわよね」

 あ、お母様も文言、言うのね。

 何だか文言を言うのが当たり前な気がしてきた。


「ない。それにそもそも私が知る限り、イリック家とエバンス家は接点はなかったし、もし知り合いになりたいのであれば、もっと我が家より格上の貴族なはず。これは前代未聞だ」

 どうしてエバンズ侯爵家からこんな手紙が届くのか、お父様もお母様もわからない様子。

 そして二人とも私が思ったように、これには何か魂胆があるのではないかと思っているように、どうすべきか考え込んでしまっている。


 お父様もお母様も社交界に興味のないし、田舎貴族の娘だからデビュタントなしでもいいかな〜って思っていたのに、まさか公爵家からの直々に開催のお知らせ。

 本当はスルーしたり断ったりしたいけれど、私はそんなこと言える身分でもない。

 それに何がイリック家にとっていい判断なのかは、よくよく考えるまでもなく決まっている。 


「お父様、お母様。これはとても素晴らしいことではないですか。私は喜んで参加させていただきたいお思います」

「では私も一緒に行こう」

「私はもう16歳。大人の仲間入りをする歳です。一人で行けます」

 16歳で遠く離れたエバンス家に一人行かせるのは、父親として心配だろう。

 でもお父様が留守の間にもしものことがあった時、お母様とソフィアを守ってあげられる人がいなくなってしまう。

 それはどうしても避けたい。


「しかし……」

「お父様、私はイリック家の人間として立派に振る舞ってきます。だからどうぞ安心して私を送り出してください」

「……わかった。でも無茶はしないでおくれ。私たちの可愛いシャーロット」

 お父様は幼い頃と変わらず、私を抱きしめてくれた。

 それは『昔も今も変わらず愛しているよ』と伝えてくれているよう。 


 私も『今も昔も愛しています』と気持ちをこめて、お父様を抱きしめ返す。

 シャーロットは16歳だけれど、前世の私は25歳まで生きて、少なからず社会や人間関係の暗い部分を見てきた。


 侯爵家の息子だか何だか知らないけれど、私の承諾なしに話を進めようなんて失礼極まりない。

 私直々に会って、礼儀ってものを教えてやらねば!

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