1/1
ぷろろーぐ
薄暗い教室。
窓から赤い月が見える。
...今日もか。
いつもと変わらない、何度も見た風景。
そして隣には...
「やあ。」
彼女がいる。
彼女の存在は、正直に言うとよくわからない。
彼女の顔の1つ1つのパーツは認識できるのに、
全体の顔を認識できない。
こんなことはなかなか無いんじゃなかろうか。
「また会ったね。」
彼女は笑う。
「最近会うことが多くないか?」
彼女は首をかしげる。
「そりゃそうだよ。」
僕は答える。
「できるだけ長く、こっちにいたいんだ。」
彼女と教室を出て、赤い月光が射し込む廊下を歩く。
今日は誰もいない。彼女と2人きりだ。
静かな今日の学校は、
外の月が赤いことを除けばごく普通に見える。
いつもみたいに変な化け物とかがいないことに僕は安堵する。
元々、僕はビビリなのだ。
夜の学校なんて、怖くて怖くて仕方ない。
廊下を歩き続けて音楽室の前に着くと、彼女はソワソワしだす。
まるで早く扉を開けて欲しいというように。
中は真っ暗で、僕は開けるのに躊躇う。
けど開けてみないと先へは進めない。
覚悟を決めて、僕はゆっくり扉を開いた。