委員長襲来②
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朝のホームルームが終わった後移動する授業が無かった為、健一はそのまま座ると授業が始まるまでの時間を寝続けた。
花丸もそんな健一を見てそっとしておく事にした。
健一ももう誰も邪魔して来るものはいないだろうと思い、夢の中へレッツゴーしようとしていた。
「おはよう」
夢の中へ飛び立とうとしたら聴き慣れた声の女子生徒が話しかけてきた様な気がした。
が、自分に向けてではないもしくは幻聴だと思い、そのまま顔を上げる事なく健一は目蓋を閉じるのだった。
「おう委員長、おはようさん!」
目を閉じながらもまだ意識があった健一は花丸がその委員長と呼んでいる女子生徒に挨拶を返していたのが話し声で分かったので、「あぁ、やっぱり自分じゃなかったか」と思い意識を手放した。
「えぇ、おはよう……それで?ここにいる馬鹿は私が朝の挨拶をしに来てあげたのに爆睡を決めてると?」
「あははは……委員長、健ちゃんはちょっと昨日色々あったから眠いみたいなんだ、そっとしといてあげてくれ」
花丸は委員長と自分から呼んだ人物に健一を庇う為に色々と言っていたが………
「ふん、どうせ1人暮らしだからって昨日も夜遅くまでゲームでもしていたんでしょ?」
「いやー、何をしていたかは聞いてないけど………」
はっきりと言わない花丸の言葉に耳を貸さない委員長と呼ばれた女子生徒は寝ている健一に近付いた。
「………ぐぅ……ぐぅ………」
「………‥」
直ぐ側まで近付いても起きる気配すら無い健一に委員長と呼ばれている女子生徒は由緒正しい名門校の生徒にあるまじきその姿からか、はたまた健一が自分の「幼馴染」なのに平然とこんな姿を見せているからか、キリッとしている目を細めた。
「おはよう、三丈君?」
「ぐへっ……ぐへへっ…明日………」
「………‥」
何の夢を見ているのか委員長と呼ばれている女子生徒が話しかけたら、タイミング悪く変な夢を見ているのかそんな言葉を喋り出した。
そんな健一の態度に挨拶を無視された&変な寝言?を目の前で言われた事で委員長と呼ばれている女子生徒の目はますます細まり、というか何かを貫いてしまうんじゃないかというほど鋭くなり、その状況を見ていたクラスメイトも顔を引きつらせていた。
花丸もその状況はまずいと思ったのか「お、おい健ちゃん!まずい起きろ!!」と声を掛けるが、健一がその声に反応して目を覚ます前に。
ドガンッ!
「ぐふはっーー!!?」
突如、脇腹にもの凄い激痛が走ったと思ったら、健一は奇声を上げると激痛が走った脇腹を押さえながらその場で倒れてしまった。
隣に立つ委員長と呼ばれている女子生徒が健一の脇腹を蹴ったのだ。
それを見ていた花丸を含める周囲の生徒が一様に「またか………」と言いながら顔を逸らしていた。
2年連続学年1位と成績優秀で誰へも優しい品行方正を地で行く優等生だ。
この委員長と呼ばれている女子は本名を葉先風香といい、健一と悟の「幼馴染」だ。
この学校の問題児でもあり自分の「幼馴染」だからか当たりが強いのだが、このクラス内ではもう見慣れた光景だ。
健一の脇腹を戸惑なく蹴った委員長、改めて、葉先は間違いなくここのお金持ちの生徒だ。
キリッとした目付きをしている美人で自慢の黒髪をストレートに伸ばしている、両親は凄腕の弁護士だ、その両親は健一とは顔見知りだ。
何処とは言わないが中々大きく、健一のスカウターでの測定ではEと出る。
健一が今回のように寝たり、ふざけた事をしたら辛辣な小言を言ったりしている、それを適当に受け流す健一の姿が目撃されるのはこの2年2組の皆ももう慣れたものだ。
悟や花丸が葉先を止めているが、今のところ効果は無いようだ。
「おはよう、健一君?また深夜遅くまで起きてゲーム?それとも……その…え……エロゲー……?という如何わしい物をまたやってたりしないわよね?」
今までの事が何も無かったかのように健一に言うと恥ずかしそうに小声でエロゲーという単語を葉先が出した瞬間修羅の様な顔になったが、そんな顔は一瞬だった為、健一は見間違いだと思う事にした。
見間違いだと思いたいが少し怯えながら今の状況を周りを見渡して確認する事にした。
分かったことは「あぁ、いつものやつか」と健一は納得する事にして、まだ痛む脇腹を片手で押さえながら立ち上がると葉先に挨拶を返し誤解を解く事にした。
「い…委員長…おはよう……それと昨日はエロゲーなどやってはいない、あれは前、お前達に破壊されただろうが。エロゲーも結構高いんだぞ?俺の懐事情的にまた買えるわけが無いだろ……あぁ、あの時のエロゲー達よ守れなくてごめんよ………」
健一はそう言った。
健一も葉先の事を委員長と呼んでいるが、実は花丸含めて葉先の事を委員長と呼び出したのは健一のせいでもある。
昔から成績優秀であった葉先の事を健一がふざけ半分で委員長、委員長と呼んでいたら、その名前が健一の中では定着してしまい、今も委員長と呼んでいる。
それも今もこの2年2組では学級委員長をしている為、葉先も渋々ながらその名前を皆に許している。
そんな事はさておき、健一がさっきからエロゲー、エロゲーと連呼する物だから葉先は顔を真っ赤にしてしまい、周りで聞いていたお嬢様達は「エロゲー?それは何の事でしょう?」と興味すら持ってしまったのだ。
その事実に健一もまずいと思ったのか、葉先にこの場はお開きにしようと提案を出す事にした。
「委員長、この場の話し合いは双方に分が悪いと見た……また昼休みにでもどうだ?」
健一がそう話しかけると、葉先も少し落ち着いてくれたのか、冷静さを取り戻すと健一の提案に乗ることにした。
「………分かったわ、でも健一君、逃げるんじゃ無いわよ?逃げたらどうなるか……それにさっきの深夜の話も何をしていたのか聞かせてもらうからね?」
「ヘイヘイ、分かってますよ、ほら成績優秀者様、もう1時限目が始まるお時間ですよ、お戻りくださいませ〜」
「………この男は………」
その健一の言い方にイラッとした葉先だったが、本当に授業が始まる時間が近付いていたので、渋々自分の席に戻りながらも他のお嬢様達にさっきの話は健一とのじゃれあいでその、エロゲーと言うのは言葉の綾と説明していた。
そんな葉先を見ていたら、花丸から声をかけられた。
「なあなあ、健ちゃん。昼に委員長と会うのか?また面倒臭い事に巻き込まれる予感が俺はするのだけどなぁ〜」
「ん?何を言っているんだ花丸、委員長と昼に会う訳が無いだろ?」
「へあっ?」
花丸の質問に当然の様に委員長とお昼に合わないと言う健一の言葉に素っ頓狂な声をあげてしまった。
「ちょ、待て待て!健ちゃん?さっき委員長との話で昼に会うって健ちゃんが言ってたよな?」
「ああ、言ったぞ?」
「じゃあ……「嘘に決まってるだろ」………それで大丈夫なのか?」
流石の花丸もそんな荒唐無稽な健一の考えは駄目なのではと思い聞いてみたが……健一の答えは変わらない様で。
「まぁ、そう慌てるなって。それに花丸、俺が委員長に言った言葉を思い返してみてくれ、俺は委員長に「今日」のお昼に会うなどと誰も言っていないだろ?」
「いや、それはそうかも知れんが流石に……な?」
「何が、な?だ……それに委員長も委員長で俺に「今日の昼だよね?」と聞かないから悪い……馬鹿め最初から俺の術中に嵌ってるのだよ!!」
「え…えぇーー………」
小声ながら健一はそう声高らかに言っていた、そんな健一を見て「あぁ、これは何を言っても意味無いな」と花丸も諦める事にした。
「それでだ、花丸、俺は恐らく今日委員長達に普通だったら拉致されるだろう、だが……お昼になったら厄介な奴等がこの教室……というか悟を目当てにやって来る、恐らく委員長も初めは悟の所に行く筈だ、だからその隙に俺は悟を囮にして逃げる!」
「えぇーー……悟が可愛そう過ぎねぇか?それに他の奴等も健ちゃんに会いに「シャラップ!」……何だよ?」
花丸が話していたらいきなり健一に横槍を入れられてしまった為、一旦話を聞く事にした。
「花丸……お前が今から言おうとしている事は分かる、それに悟が可愛そうなのも分かるが……だがだ!奴等は悟目当てにこの教室に集まっている、決して俺と話す為に来てる訳じゃあねぇ、それは花丸もここ1年見てきて分かるだろ?」
「………んん、ん?なんて答えたら良いのやら……微妙だな………」
「何だ、その萎え切らない話し方は?」
「あ……や、別に何でもねぇよ?分かったよ、健ちゃんの考えてる通りでいいと思う」
「そうか………」
(ふむ?花丸は何かを言おうとしていたみたいだが、結局何だったんだ?特に今言わないと言うことはどうでも良いことだろうな……それよりも花丸の奴、変な事言いそうになりやがって、俺の「幼馴染達が俺に会いに」来てると言おうとしたな……そんな事は万が一もありゃしねぇ……だってあいつらは悟の事を全員が好きなんだからな)
健一は当たり前の事を再度頭の中で考えると「どうでもいい」と吐き捨てて、今は今日のお昼の事を考える事にした。
「それでだな、今日俺は悟を囮にして逃げるつもりだが花丸はどうする?俺と来るか?」
健一が聞いたら、花丸は申し訳なさそうな顔になると今日は一緒にお昼を出来ない事を伝えて来た。
「すまん、健ちゃん!今日は昼に野暮用があってな明日なら大丈夫だと思うが、今日は無理そうだ」
「そうか、まぁ、俺は最初からぼっちだから1人で食べるつもりだから良いがな!」
「いや、それで良いのか……健ちゃん」
健一のぼっち発言を聞き自分の友人はこんな考えで大丈夫か?と思っている様だが、自分と悟がいるから大丈夫だろうと思い、それ以上は追求しない事にした。




