プロローグ
ドンッ、と言う振動でまだ幼い少女が目を開けた。目を開けたのにもかかわらず、真っ暗な闇が広がっていました。
外からはカランコロン、カランコロンと音がなっていました。
すると、少女は顔に手を当てるとあることに気が付きました。顔には少女の顔がスポリと入る袋が顔に被ってかいました。
少女は顔に被っていた袋を取ると、辺りを見渡しました。
そこは壁が木でできていて穴が空いているところもありそこから光が漏れ出ていた。天井の隅にはクモの巣があり、床は藁で引かれていた。
少女は穴が空いたところに片目を近付けさせて外の景色を見た。そこは自然の森が広がっていて、外の景色が移動していました。
かろうじて下を見ると粗末な道があり、下斜めを見ると木でできたタイヤが回っていた。
すると、外から「ヒヒーン」と言う声がしました。
少女は自分は馬車に乗っており、森の中を移動しているということを理解しました。
しかし、少女はいつ、この馬車に乗ったのか、何故、自分はこの馬車に乗って森の中を移動しているのかが分かりませんでした。
少女はかろうじて記憶をたどりました。すると、あることを思い出しました。
少女は友達と自分が住む町の近くにある裏山の森でかくれんぼをしていました。
少女がかくれる場所を探しているとフードを被った人が、
「おじさんのところに来て、絶対に見つからない場所に連れてってあげるからね」
と片手を上下に動かして少女を呼びました。
少女はその手に引き寄せられるかの用にフードを被った人のところに行きました。そして、そのまま、フードを被った人の背中を追って行きました。
しかし、途中で少女はフードを被った人を見失ってしまいました。
「フードを被ったおじさん、どこにいるの?」
と少女が言うと
「ここだよ」
と少女の後ろから声がした瞬間、少女の口を布で素早く塞ぎそのまま少女の体を持ち上げました。
「う゛、う゛ぅ~~」
少女は足と手をじたばたさせました。すると、フードを被った人が少女の耳元で
「大丈夫だよ、おじさんが見つからない場所まで連れてってあげるからね……」
その声を聞いた瞬間、少女が横を見るとフードを被った人の顔は豚のような顔をしていて、大きな鼻の左右には大きな鋭い角みたいのが付いており、人間とは思えない顔をしていました。
その途端、少女の見た景色が一瞬、歪み始め、意識が遠のき始めました。
かろうじて少女が意識を失う前に聞こえた声が
「友達や親に誰にも永遠に見つからない場所にね」
それを思い出した少女はブルッと体を震わせ、呼吸がハァハァハァと荒くなりました。
少女は恐怖に耐えながらもなんとか立ち上がり、逃げる方法を考えようとした瞬間、馬車が止まりました。その振動で少女は横に倒れました。
すると、外から
「何で城下街じゃなくて、こんな森のど真中に止めるんですか?」
「バカ言え、最近城下街の門の警備が強化されて持ち物検査されるようになって馬車の中も調べやがる。だから、拠点を騎士団が捜査がとどいてないこの森に移したんだよ」
「すまねぇ、最近、この世界を知ったばっかなもんでよぉ」
「まぁ、確かにお前が俺たちの世界を知っていなかったら俺はこの商売を効率よくできていなかったもんだからな。さぁ、そろそろガキを運ぶぞ」
と二人組の声がしました。
その直後、外から足音がしました。それに反応した少女は慌てて立ち上がり、隠れる場所を探そうとした瞬間、いきなり後ろでカチャッと何かが開く音がして外の光が漏れだし少女の背中を細い一筋の光が照らしました。
少女は隠れる場所がなかったので急いで隅に行き、体を震えながら丸め潜めました。
そして、馬車の扉が完全に開き、そこには二人の人物が立っていました。
「お、いたいた。おい、見ろよ壁の隅で丸くなっていやがるぞ。まるで子供に捕まって丸くなったダンゴムシのようだな」
と男がケラケラと笑いながら言うと、
「おい、そんなこと言って怖がらせたて、漏らしたらどうするんだよ。少女用の替えの服、持ってねぇんだぞ」
ともう一人が言うと
「いやいや、お前だって、あんな恐ろしい誘拐方法はないだろ。もし、俺が小さい頃になんなことされたら一発で漏らすわ」
「仕方ねぇだろあの方が時間を短縮できるし、時間が掛かりすぎたら、この世界にくる前にあっちの世界で奴らに気づかれて捕まってしまうだろ」
二人が言い合っているのを少女はただ丸まって聞いてるしかなかった。
(どうして、どうして……何で私の体が動かないの!分かるでしょ私、今、逃げなきゃ一生、友達やお母さんとお父さんに会えなくなるのよ!だから、動いて!!お願いっ!)
しかし、少女が叫んだ心の声は恐怖に書き消され、体までは届かず動けなかった。
「おい、お嬢ちゃんそろそろ行くよ」
その瞬間、少女の肩にポンと手が置かれた。
少女が振り向くとそこにはあの少女を連れ去ったフードを被った人が立っていた。
少女はまるで恐ろしい化け物かにあったような目で彼を見た。
「さぁ、行くぞ、お嬢ちゃん」
と言いフードを被った人が少女の小さな手を大きな手で覆い被さるように掴み、馬車の中から引っ張って出しました。
少女が握られている手を見てみると大きくて汚れた橙色で点々と茶色の毛が生えていて、人間とは思えない手だった。
それを見た少女は
(これは夢だ…これは夢だ…これは夢だ…これは夢だ…これは夢だ……)
と自分の心に語りかけました。
フードを被った人に手を繋がれ、小汚ない馬車の外から出るともう一人の男が立っていました。顔つきは少女と同じ日本人の顔つきでした。その男はコンパスぽいものをじっと見つめていました。
「おい、奴らは来てないよな?」
フードを被った人がその人に向けて言った。
「いや、今のことろ、反応はないので来てねぇな」
男はコンパスを閉じ、フードを被った人の方を見て言った。
「そういや、あんたいつまでフードを被ってるんだよ?」
と言われると、
「そうだな、お嬢ちゃんに顔を見せないと失礼か」
そう言うと、フードを取りました。
その瞬間、少女の目はあり得ないものを見るかのような目をしました。
フードを被っていた人の顔は豚のような顔をしていた。
(やっぱり、私があの時見たのは勘違いじゃなかった……)
少女はただその顔を見つめるしかできなかった。
怖じ気づいた少女の姿を見た、豚顔の人は少女の肩に手を置き、その顔を少女の顔に近づけて、
「お嬢ちゃん、この顔の種類を見るのは初めてかい、俺はオークって言う種族で俺と同じオークは皆、こんな顔つきなのさ、おっと名前を言うのを忘れていたぜ、俺の名はガデって言うんだ短い間だがよろしくな」
とガデと名乗ったオークはニタニタと笑いながら言いい、
「で、俺の後ろにいるお前と同じ人間は......」
「ちょっと待てよガデさん、自分の名ぐらい自分で言わせてくださいよ」
とその人は言い、
「ゴホン、俺の名前は宮木拓男、お前と同じ日本人さ、で、お嬢様ちゃんの名前は?」
そう聞かれても少女は答えなかった。
「おいおい、名を名乗れぇのかよ、あのさぁ、俺たちも名乗ったからよぉ、お嬢様ちゃんも........」
「止めとけ、拓男」
ガデが話に割り込んできた。
「なんだよ、ガデさん、別にいいじゃねぇか、名前ぐらい聞いても問題ありませんよね?」
「確かに問題はないが名前を知ってもどうせ、番号を付けられるんだぜ、名前を聞いても意味がねぇだろ、それにお嬢ちゃんの顔、見ろよ」
拓男はガデに言われ、少女の顔見た。
「その顔じゃ、何度も聞いても無言しか返って来ねぇよ」
そうガデに言われ、拓男はやれやれと首を振り、名前を聞くのを諦めた。
「さて、そろそろ行くか、お嬢ちゃん」
そう言われ、少女はガデに手を繋がれたままガデについて行った。それはまるで小さな女の子に連れられる人形のように無抵抗まま連れて行かれた。