未知との大遭遇 〜7〜
「ぬぅー!お約束とは言え、邪魔者ばかり現れやがる!えぇい喰らえ!」
「あーもぉー!ビームキャノン壊れちゃったじゃん!コレ直すの大変なのにィー!」
兄妹は、それぞれの邪魔者を相手に怒りをぶつける。しかし、邪魔者たちはその手を緩めない。
「おりゃぁー!銛を受けてみろォッ!」
クルクルと回転走行し、華麗なテクニックでビームを捌きつつ、ついに宇宙船の真下までやって来た総司は、ボウガンを構え、銛を発射した。それは見事、宇宙船の下部に命中したのである。
「やったぁ!総司兄ちゃんエラい!」
「ふふん鉄矢!もっとホメろ!」
「甘く見るなよ田舎者め!これしきで参るブラックナックル号ではない!こうなったら、動けなくなるまでコテンパンにしてやるぞ!」
そう言うと、ガッツもまた徐々にビーム砲の出力を上げていく。しかしそれでも、機体の中の人間を傷つける威力は無いに等しいが。
「コテンパンなんて表現、久々に聞いたぞ!お前本当に宇宙人かァ?!」
ガッツがあれこれ喋っているうちに、総司は怪しく光るビーム砲塔に向け、もう一発銛をぶち込んだ。完全に破壊するまではいかなかったものの、ショートし、小さな爆発を繰り返す。
「な、アアアァァー!なんてことしてくれた!大事なビームをォォー!!!」
ガッツが悲鳴にも似た雄叫びを上げている隙に、総司は船体に打ち込んだ方の銛に向けアンカーを射出、体良く接続に成功していた。
「その宇宙船のサイズなら・・・きっとアルティランダーのパワーでも!」
引きずり下ろそうという腹づもりで、パワー全開でアンカーを巻く。しかしそう簡単にはいかない。ブラックナックル号の方も、エンジンフル回転で抵抗を続けていた。
「ぬぬぬ・・・!地球人の思い通りにはさせん・・・!ジャネット!大丈夫か?!援護してくれ!」
ガッツは身体の全てを使い、操縦桿を力一杯引いていた。総司も同様である。最早、男と男の勝負であった。
「アニキーィ!マジ無理コイツしつこすぎィ!逆にこっち助けて欲しいってェー!」
無事に攻撃手段を奪った南は、引き続き執拗にバンキッシュを攻め立てていた。捕縛して、今後の開発に活かしたい、という希望があったからである。
「ドレッド!ラァァーンス!」
スタードレッドの手首から小さな棒が射出されたかと思うと、如意棒のようにたちまち伸び、槍状に変形した。
「どこの星から来たか知らないが!大人しくしてもらう!」
南は、ドレッドランスをバンキッシュに何度も叩きつける。何度も、何度も、何度もだ。
装甲を貫くまでは到底及ばないものの、ガンガンとコックピットを揺らす鈍い音と、南のその執念に対して、ジャネットはある種の恐怖を覚えていた。
「ば、ばるるぅー!こいつヤバいよ!緊急離脱!!」
涙目になりながら、いや、南がヤバすぎて最早泣くことも、操縦すらままならない状態で、ジャネットはバンキッシュのAIである「ばるる」に助けを求めた。
「りょ!」
その言葉と同時に、バンキッシュの背後から、大量の黒い廃棄ガスが噴出された。いわゆる煙幕である。
「くっ、小賢しい・・・なっ!レーダーに異常だと?!」
そう、ただ視界を遮るだけでなく、あらゆるセンサーを狂わせる、チャフのような効果もあったのだ。
黒煙が、一帯にもうもうと立ち込める。煙幕が晴れる頃には、バンキッシュとジャネットの姿はどこにも無かった。
「まさか、こんな早さで行方を眩ませるなど・・・あり得ない!これが…『宇宙からの脅威』…。」
南は、操縦桿と、兜の緒を強く締めるのであった。