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疾風迅雷アルティランダー  作者: エルマー・ボストン
未知との大遭遇
13/13

因果は動き出す 〜5〜

坂田家の呼び鈴が、再び鳴る。今回は一回のみだ。訪問者は酷暑の中汗もかかず、眉一つ動かさず、笑顔を絶やさずにただジッと待っていた。

やがて、松葉杖を突く音とたどたどしい足音が、玄関まで近づいてきた。


「はぁい、どなたですかーっと。」


めんどくさそうに総司が戸を開けると


「あっ、どぉーもこんにちは!あなたが東郷総司さん?ワタクシ、スタークラウン社から参りました、ジャック=西条と申します!」


爽やかな笑顔を振りまく、若干胡散臭い男が、名刺を手に立っていた。

総司の顔は、あからさまに引きつっていく。


「麦茶しかないんですけど。」


製鉄所での作業を中断し、士郎がまたも麦茶を振る舞う。扇風機の風が、汗でてかった士郎の頭の少ない毛髪を、ユラユラと揺らす。


「やぁわざわざすみません、頂きます。・・・ぶへぇっ!!コレ麺つゆじゃないですか!!」


西条は、口に含んだ麦茶だと思っていたものを盛大に吐き出し、総司にぶちまけた。


「うわあっ汚ねえ!!・・・え?麺つゆ?!あっホントだシール貼ってあ・・・え?!さっきのヤツは涼しい顔で飲んでたぞ?!」


次々に襲い来る衝撃は止まらず、軽くパニックになる総司。

南の舌は、えげつないレベルで馬鹿だった。


「と、とにかくお話を聞きたくてですね。アナタ方のロボットの。」


西条が口元をハンカチで拭いながら、一気に本題を投げかける。

士郎と総司は、例の金額が思い浮かび、 ビクッと身体を震わせるのであった。


「あ、あのぉ~、返せと言われても、ウチご覧の通りでして、すぐに用意はできなくて・・・。」


大柄なオヤジは、ガクガクと怯えながら土下座の準備を始めた。が、糸目は首を傾げ


「?あー、なんか社長たち、そんなこと言ってたかも。まー私の用件、それじゃないんで!あんまり気にしないでください!」


ヘラヘラと笑うのみであった。

それを見て、士郎と総司は、目を皿のように丸くし、ホッと肩を落とした。


「ええーっとですね。社長と山・・・南さんの話は置いといて。私の調べによりますと、社からデータが漏洩したような記録も無ければ、物理的に忍び込まれた形跡もね、無いんですよ。だから、ねぇ?私はとにかく、『坂田さんのロボット』に興味があった!」


西条はケラケラと笑いながら、自らの白い髪に覆われた頭をポリポリとかいて見せた。それを聞いた2人は目を見合わせて、ホッと胸を撫で下ろす。


「私ゃ、誓ってそんな悪いことはしとりゃせんです。ロボットを作るのが昔からの夢だった、それだけですわ。まぁ、おたくのロボットと・・・まさか同時期に完成するとは思わなんだ。」


士郎は、まるで子どものような屈託のない笑顔で、西条の言葉に応えた。それを見た総司、そして西条も、自然と頰が緩むのであった。


「素晴らしいことです。夢のために、真っ直ぐ進んで来られたのがよくわかりますよ。・・・で、本題なんですけど。」


テーブルに肘を立て、真顔で、言葉に力を込めて、西条は言い放つ。


「坂田さん、アレを作るとき『声』に導かれませんでしたか?不思議な『声』に・・・。」


糸目を見開いて、テーブルに肘をつき睨むように士郎を見つめる。その眼光には、何か得体の知れない輝きがあった。


「声?急に何言ってんだよ兄ちゃん。オカルトならよそで・・・。」


突然の意味深な問いかけに、総司は呆れ顔で対応する。しかし、言いかけて士郎に目をやると


「えぇーっ?!何だよおっちゃんそのリアクション!!」


士郎は、目を見開いてガタガタと震えていた。


「やはり、あるんですね?心当たりが。」


深刻な口ぶりで、西条はゆっくりと士郎を煽る。


「い、いや待ってくれ。そ、それは・・・!」


士郎は震える指先で西条を指差し、何かを言いかける。


その時だった。

突然、何かに気付いた西条は、飛ぶように立ち上がり、坂田家の固くて重い窓を一気に開けた。


「お話中すみません。・・・あのロボット、今すぐ出せますか?」


西条が少し慌てた様子で、2人に持ちかけた。士郎も総司も、いきなりの方向転換に動揺を隠せない。


「忙しない人だなぁアンタ・・・。またいきなり何だよ?俺、着いてけねぇよ・・・。」


総司は耳をほじりながら、疑いの眼差しを向け、問い掛ける。


「・・・あ、いえね。通報があったみたいなんですわぁ。宇宙人が出て暴れてる、ってね。アッハハハハ!」


崩れた笑顔で、右手をヒラヒラと振って見せる西条。その間、左手はスマホを素早く操作している。スタークラウン社に連絡を入れたのであろう。


「良いけどよ・・・アンタはいいのか?俺たちに出られたらマズいんじゃないの?立場的に。」


「そんな悠長な事言ってられませんよぉ~。大きな被害出てからじゃ遅いですもぉん。」


棒読みくさいその言葉とは裏腹に、西条は妙に笑顔を絶やさない。それを聞いた総司はチッ、と舌打ちし、モタモタと立ち上がる。


「ま、確かに放っておけないな。けど、アンタらの会社の言いなりにはならないぜ。こっちにはこっちの都合ってモンがあるんだ。」


そう言って、総司は士郎に目線を送る。すると士郎は頷いて、同じくモタモタと立ち上がるのだった。


「西条さんよ。後でゆっくりと話そう。俺からも聞きたいことができた。」


「ええ、待ってまぁす。麺つゆでも飲みながらね。」



総司は早着替えを済ませ、車椅子兼アルティランダーのコックピットに飛び乗ろうとしたが、流石にそれは無理だったので普通に座った。そして、コックピットはアルティランダーの胸部に、みるみる飲み込まれていく。


「じゃあおっちゃん、頼むぜ!」


「おう!頑張ってこい!安全、確認!」


ガレージのシャッターが、ガラガラと開いていく。


「よっしゃあ!GOー!アルティランダァァァァ…ストライクモォォード!!エンジン全開で行くぞォォ!!」



アルティランダーは、一気に風と化す。


・・・場所は聞いていないが。


が、そんな中


(総司さん、大変!品川駅の方に宇宙人が!)


コックピットに装着したスマホに、百合子からLINEが入る。


「百合ちゃん何で知ってんの?!まぁいいや品川だな、ようし!」

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