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46話 新たな属性

ブックマーク登録と評価ありがとうございます!

頑張って続きを書いていきますのでよろしくお願いします!

「リディ! レイチェル! そっちは任せる! 無理そうなら石の檻を塞げ!」


「分かった!」 「が、頑張ります!」


 檻に閉じ込めた雌は二人に任せ、俺は白銀の牡鹿、ライトニングホーンに向け剣を構え飛び出した。


「クルゥアァアア!」


 ライトニングホーンの角から再び雷が放たれる。

 その雷は、目にも止まらぬ速さで俺の剣に直撃した。


 ぐぅう、早いっ!

 見てから躱すのは難しい。

 それに、ダメージ自体はまだどうにかなるんだけど、この痺れが厄介だ。

 どうしても足を止められてしまう。


 俺が光魔術で痺れを治療している間に、ライトニングホーンは俺から距離を取った。

 こいつ……徹底的に遠距離から戦うつもりか。

 そうなると、『設置魔術(マイントラッパー)』での迎撃は効果が薄い。

 『限界突破(オーバードライブ)』で一気に近付こうにも、あの雷が邪魔だ。


 こちらも遠距離から攻撃出来ればいいんだけど……俺は遠距離魔術が致命的に苦手だし……


 そうこう考えていると、三度ライトニングホーンの角が雷を帯びだした。

 また撃ってくる気か! 止まってたら狙い撃ちにされてしまう!

 俺は咄嗟に右に跳ぶ。すると、さっきまで俺が立っていた場所に奴の雷が撃ち込まれた。


 この距離なら先読みして避ければ回避は可能みたいだ。

 ただそれだけじゃどうにもならない。

 また奴の角が雷を帯びだしたから、今度は左に跳躍した。

 すると、今度は雷が途中で曲がり、吸い込まれるように俺の剣に直撃した。


 くそ、上手く避けたと思ったのに……

 まさか曲がって俺を狙うなんて。


 ん? なんかさっきから妙な引っ掛かりが……

 そして、こんな不利な状況にも関わらず、俺は知らずに笑みを浮かべていた。


 ああ、久しぶりの感覚だ。

 未知なものや現象を直接体で感じて理解する。

 まさに、俺が今までずっとやってきた魔術の修業そのものじゃないか!


 リディとレイチェルの方を見る。

 どうやらリディは地魔術を利用して、出入り口を調整しながら危なげなくビッグディアを誘導しているようだ。

 今回ポヨンは単独で動いてビッグディアの足元を攻撃し、レイチェルの補助をしているみたいだ。

 レイチェルも、まだまだムラはあるけれど『身体活性』と無属性『エンチャント』を活用して、ポヨンに足を取られたビッグディアに止めを刺している。

 向こうは大丈夫そうだな。それに、今ここには俺たちと鹿の群れしかいない。


 こいつの放つ雷、俺はこれを理解したい!

 奴の雷自体は光魔術があれば耐えられる。折角ここでこいつに出会えたんだ。

 こいつには俺の魔術の修業に付き合ってもらうとしようか!


「クゥルルルルルウ!」


 鳴き声と共に、ライトニングホーンの角から雷が放たれる。

 俺はその雷を避け……ずにそのまま雷に突っ込んで行った。

 雷は俺の剣に直撃し、そこから雷のエネルギーが俺の体の中を流れ、足元から地面に抜けていく。


「おにい! 何やってんの!」


 わざと雷を食らった所をリディに見られていたようだ。


「心配するな! こいつには魔術の修業に付き合ってもらおうと思ってな!」


「あー……」


「えっ!? 何言ってるんですか師匠! それって今やるようなことじゃ」


「……レイチェル姉、ああなったおにいはもう止められない。修業を始めちゃったくらいだから余裕はあるだろうし、あたしたちはこっちに集中しよう」


「う、うん……いいのかなぁ?」


 リディ、よく分かってるじゃないか。やはり、今まで俺の英才教育を受けてきただけのことはあるな。


「クゥウウウルゥウウ――」


 何度も雷を食らったにもかかわらず、その度に何事も無かったかのように立ち上がる俺を見て、ライトニングホーンは目を細め、警戒心を露わにする。

 それと同時に角が雷を帯び始め、それは次第に奴の体全体に広がっていく。


 ふふふ、どうやらあいつも俺との修業に本気になったみたいだな。

 さあ、始めようか! お前の雷は俺が貰う!



 ◇◇◇



 その後、何度も何度もライトニングホーンの雷に撃たれて分かったことがある。

 この雷、どうやら金属、それも特にミスリルに誘導される性質があるようだ。

 奴の雷は吸い込まれるように俺の持つ剣に向かうことが幾度もあった。さっきから感じてた妙な引っ掛かりの正体はこれか。

 服にもミスリルは糸として使われているけど、どうやらこちらは剣程は誘導性は無いみたいだ。


 俺は光魔術で自身を治療し、再びライトニングホーンの前に立つ。


「クゥ……クルゥ……」


「どうした? 俺はまだまだやれるぞ?」


 ライトニングホーンが俺を見て怯む。

 一見俺には雷は通じず、雌鹿たちが捕らえられ倒されたこともあり、何度か逃走を試みる場面もあった。

 だけど、それは俺が許さない。そんな素振りを見せる度に、『限界突破(オーバードライブ)』を使って一気に距離を詰めようとする。

 どうやら奴は逃げながら雷を放つことは出来ないようで、足を止めて俺を迎撃していた。

 そして、何度も同じことをしているうちに悟ったようだ。俺を倒さなければこの場から逃げられない、と。


 ライトニングホーンは、何度も雷を放ち、そして逃走を阻止されることでかなり消耗しているようだ。

 対して俺は光魔術を使って治療をしているのでダメージは特に残っていない。残存魔力量にもまだまだ余裕はある。

 それに……気のせいか、なんだか全身の凝りが解れたように体も軽い。


 だけど、この充実した修業の時間もそろそろ終わりだろう。

 ライトニングホーンはそろそろ限界を迎えそうな雰囲気だ。


「クゥルゥ……クァアアアアアアアアアアアルゥウウウウウウ!!」


 ライトニングホーンの角に夥しい量の雷の魔力が集まる。

 どうやら有りっ丈の魔力を俺にぶつけてくるつもりのようだ。


 面白い。ここまで俺の修業に付き合ってくれた礼だ。

 俺も正面から全身全霊を持ってお前を倒そう。


 俺は剣を亜空間に仕舞い、意識を自分の魔力に集中する。

 何度も何度も体を流れた雷のエネルギーを意識しながら。

 そして、それを掌に集め、


 バヂバヂッ!


 集めた魔力を雷に作り替える。


 バヂバヂッヂヂヂヂヂヂヂヂヂヂヂヂッ!


 出来た!

 俺の掌の上に魔力で作った雷が発生した。


「ルゥウウアアアアアアアアアアア!!」


 ライトニングホーンの角から、今までで一番太い雷が放たれる。

 その雷に向かって俺は掌を突き出し、自分の雷で迎え撃った。


「おおおおおりゃああああああああああああ!!」


 バヂバヂッバヂヂヂヂヂヂヂヂヂヂバヂュンッ!


 雷同士が激しくぶつかり合い、暫く拮抗した後相殺された。


 よし! 初めてにしては上出来だ!


 一方、ライトニングホーンは最早為す術無しと見たのか、なりふり構わず逃げ出そうとしていた。

 逃がす訳ないだろう?

 修業に付き合ってくれたのは感謝するけど、それとこれとは話が別だ。


 俺は、剣を仕舞う時に開いた亜空間をずっと閉じずにいた。

 そして、そこからはミスリルの槍の穂先がライトニングホーンを狙っている。

 そして俺は亜空間を閉じ、その反動でミスリルの槍がライトニングホーンに向けて射出された。


「リュギャアウッ!!」


 物凄いスピードで飛んで行った槍は、ライトニングホーンの後ろ脚の腿に突き刺さった。


 あまりの痛みに、咄嗟に少し残った魔力が雷として放出されたみたいだ。

 その放たれた雷は、刺さった槍に吸い込まれ、奴自身の雷がライトニングホーンの体内を流れる。


「キュルアァアアアアアア」


 流石に体内に流れた雷は無効化出来なかったようだ。

 ライトニングホーンの体は痺れ、その場に横倒しに倒れた。

 俺は倒れたライトニングホーンに素早く近付き、剣でその首を撥ねた。


 ふぅ。

 ありがとうよ、ライトニングホーン。

 短い間だったけど、お前との魔術の修業の時間は楽しかったぞ!



 ◇◇◇



「うわわっ、ビリビリする! 雷って雨の日とかにゴロゴロ言ってドーン! て落ちるアレだよね。こんな感じだったんだ。あ、冬とかに偶にビリってくるあの感覚にも似てる!」


 おお、雨の日の雷って確かにこれか。

 こんなのが空から降って来てたんだな。


 俺たちは賞金首(ウォンテッド)の鹿の群れを全て倒し、その後リディが雷魔術を体験したい! と言ってきたので軽く使ってやってた所だ。

 今回新しく知った魔術属性にリディも興味津々の様子だ。


「おにいが雷魔術を使えるってことは……もしかしたら、『分析(アナライズ)』で視れるようになってるかも……」


 そう言ってリディが『分析(アナライズ)』で俺の魔術属性の確認を始めた。


「あ、おにい、属性の所に雷:Sって新しく視れるようになってる!」


「おお! 本当か!!」


 どうやら雷属性を知ることによって、リディの『分析(アナライズ)』で雷属性についても視ることが出来るようになったらしい。

 ちなみに、リディ自身とレイチェルには雷属性の素質は存在しなかったようだ。


 さっき雷魔術を放てたからな。きっと習得出来たと思ってたんだ!


「……師匠って、本当にとんでもないことばかりやってたんですね……」


 折角なので、レイチェルにも雷魔術を体験してもらうことにした。


「あびゅびゅびゅびゅびゅびゅ! しゅ、しゅごいしびれましゅね……あ、心なしかちょっと肩の凝りが解れたような気が」


 俺もライトニングホーンに雷を撃たれ続けた時、そんな感覚があったんだよな。

 レイチェルは肩凝りだったのか……まぁ、そうだろうな、うん。


「それにしても、村長も言ってたけど、本当に火、水、地、風、光、闇の六属性の他にも魔術の属性ってあったんだな」


 もしかしたら今回習得出来た雷魔術の他にも属性魔術は存在するのかもな。

 その新たな属性に出会えるのが今から楽しみだ!


「それに、やはり俺の魔術の修業法は正しいと言うことがまた証明されたな。村に帰ったらレイチェルの時のことも含め、皆に教えてやらないとな!」


「あんなこと平気で出来るのおにいだけだよ」


「普通はあの雷受けただけで危ないと思いますよ……」


「ははは、二人とも大袈裟だな。そうだ、二人も雷魔術の習得試してみるか?」


「師匠以外雷属性の素質は無かったんですよね? それで習得出来るんでしょうか?」


「あー……でも! もしかしたら新しく素質に目覚める可能性だってあるかもしれないだろ!?」


「うーん、ちょっと気になるけど……村に帰って落ち着いてからかなあ」


「わ、わたしはもっと基礎を練習してからで……」


「なんだ、遠慮すること無いのに。それじゃあエルデリアに帰れたら二人ともに教えてやるよ。レイチェルはそれまでにみっちり鍛えてやるからな!」


「うっ……頑張ります……」


 さて、それじゃここを片付けるか。

 まず俺は、石の檻を元に戻す。


 次にライトニングホーンも含め、倒した鹿を一か所に集める。

 うーむ、かなりの数になったな。

 下手すると、この雌全部から新たなライトニングホーンが産まれてた可能性もあるのか。


 鹿の死体はリディの『亜空間収納』に全て仕舞っていく。

 リディはカーグでのゴブリン相手の大立ち回りで、結構魔力量を鍛えたようだ。

 その成果もあって、亜空間にそれなりに大きなものも仕舞えるようになっている。

 本当は血抜きや解体もちゃんとした方がいいんだろうけど、量が量なので今回はギルドに持ち込んで任せる予定だ。


 そうして、最後のビッグディアを仕舞い込む。

 ふう、これでこの場も粗方片付いたな。

 細かいものはスライムたちが片付けてくれるだろう。


「それじゃあ、少し早いけど外に帰るか」


「はい。ギルドに報告もしなきゃですね」


「鹿のお肉楽しみだね~、ポヨン」


 こうして俺たちは、予定を変更して早めに外に向かったのだった。

・リディのアナライズについて補足

リディのアナライズは、リディが新たに知識を得たり、魔術の扱いが上達することにより視ることの出来る項目が増えていきます。

リディが雷属性を認識出来るようになったのは、ジェットの雷魔術習得に合わせ雷属性についての知識を得たからですね。

最初から火水地風光闇無について知っていたのは、リディ自身が扱える属性なこともあり『先生』が教えてくれていました。

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