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15話 ジェット15歳②

二人の服装の記述については、もっとイメージがしっかり固まったら修正するかもです。

「じゃーーーん!」


「おお~、リディ似合ってるぞ~! 流石俺の娘だ!」


「良かったわねリディ。ジェットも素敵よ」


「へへ、ありがと」


 シリンおばさんとエリン姉に手渡されたのは俺たちの新しい服だ。

 エルクおじさんが試したかったこと、それは裁縫にミスリルで作った糸を使用することだった。

 元々ミスリル紐を作っていた時から考えていたことらしい。ただ、そこまでミスリルを使う余裕が無かったのでお蔵入りになってたと言う話だ。

 使うと言っても全てをミスリル糸にしている訳ではなく、要所要所に使用しているそうだ。

 ミスリル糸はちゃんと伸縮性はあるらしく、実際着てみても突っ張ったりすることもない。

 ミスリルの特性を考えた場合、『身体活性』を併用すると下手な防具よりも余程強いのかもしれない。


 リディが斜め掛けにした底の広い鞄からポヨンが顔を出す。

 服以外にもリディには鞄もプレゼントされた。これは早速ポヨンの寝床になっている。


 これらは村の裁縫を担当しているシリンおばさんが作ってくれた。

 そして、エリン姉も俺たちの為にとそれを手伝ってくれたらしい。

 実際にやってみてエリン姉は裁縫に目覚めたらしく、今は技術的なことを色々教えている、とシリンおばさんが嬉しそうに話していた。


 それを聞いたエリン姉はちょっと恥ずかしそうにしてたけども。

 昔は少し男の子っぽかったエリン姉も、十八になった今ではとても女性的になっていた。

 ただし胸は……とか考えていたら、エリン姉の方から殺気を感じた気がした……



 そんなこんなで実際に着てみて微調整をしてもらった後、こうして両親にお披露目をしていたのだ。


 俺の方の服は、白いシャツに黒のベスト、黒のズボンとシンプルなもの。

 ただ、シンプル故にその作りの良さがよく分かる。

 更に、他のどんな服とも合わせられる自由度もある。

 リディの鞄のように、俺にも服以外に少しゴツめのデザインのベルトも用意されていた。

 小物が入るポーチが付いていたり、エルクおじさんに作って貰った剣を吊るす場所や、ナイフをセットしておく場所もある。

 カッコいいのでとても気に入っている。


 リディの方は、白いシャツに黒い丈の短いジャケット、それと黒のスカートと膝上くらいの長さの黒いソックスだ。

 白いシャツには女の子らしく、軽くフリルがあしらわれている。そこに黒のジャケットの対比が良く映える。

 膝上くらいの丈の黒いスカートと黒のソックスがリディの色白な肌と相性抜群だ。

 両親に見せる為にくるりとその場で回ると、スカートがふわりと揺れる。

 そこにポヨン入りの鞄が斜めに掛かっている。自分の寝床が出来たからなのか、その様子はどこか燥いでいるようにも見える。


 俺もリディも白黒がメインなのは、髪色に合わせたものらしい。

 ちなみに武器は、今は亜空間に収納している。

 家に帰った時、父さんに見せたらちょっと興奮していた。

 分かるよ父さん、その気持ち。


 服のお披露目が終わった後は家族揃っての昼食だ。

 父さんも今日は村の中での解体作業を担当しているそうだ。昼食の時間なので一度帰って来ていた所だった。


「あ、そうだ。俺午後は村の近くをちょっと見て来るから」


「あたしは遊びに行ってくる!」


「リディは気を付けて行って来いよ。はぁ、そうか。ジェットは成人したんだったなあ」


「ジェット、絶対危険なことをしては駄目よ。暗くなる前には絶対帰って来るのよ」


「分かってるよ、もう子供じゃないんだし」


「お前は今まで色々前科があるからなあ」


 両親からの俺への信用が全く無い……

 そりゃ確かに嵐の夜に素っ裸で飛び出したり、勝手に村の外に出て謎の遺跡を秘密基地にしたり、危険な魔獣に一人で挑んで殺されかけたり……うん、これは仕方ない。


 昨日十五歳になったことで、ようやく俺は正式に村の外へ行けるようになった。

 昨日は家族で成人祝いもしてくれた。

 父さんからは一緒に狩りに出れることを喜ばれ、母さんからは色々あったけど大きく育ってくれてありがとうと言われた。リディは俺の為に手料理を作ってくれた。

 正直ちょっと泣いてしまった。


 その時、初めて酒を飲んだりもした。数年前に報酬として村長に貰ったやつだ。

 俺は全然美味いと思わなかったのであまり飲まなかったけど、父さんも母さんもグビグビ飲んでたっけ。

 今日起きた時、父さんは気分悪そうだった。同じように飲んでた母さんは普段通りだった。

 父さんも今はお酒が抜けたみたいだけど。



 そんな感じの会話をしながら昼食を終え、先に父さんが解体作業に戻って行った。

 俺は後片付けの手伝いをしてから出掛けることにした。


「それじゃいってきます」


「いってらっしゃい。くれぐれも気を付けてるのよ」


「おにい、いってらっしゃい」


 そこでリディと目が合う。

 俺は二人に頷いて村の外へと向かった。


 村の西側、出入り口の門に辿り着いた俺は見張りのおじさんに挨拶する。


「おじさん、お疲れ。通っていい?」


「おお、ジェットか。そうか、お前さんももう十五か。通るのは問題ねぇけど無茶なことはするなよ」


「大丈夫だよ。それじゃいってきます」


「おう、気を付けてな」


 こうして俺は二年ぶりに村の外へと出た。

 よく考えたら西側の森は初めて見たな。

 と言っても特に変わった感じはしないけど。


 俺は南側へと歩いていく。

 今日は秘密基地の遺跡へ行ってみる予定なのだ。

 そして村から抜け出していた場所に辿り着く。


 この辺りも二年前とは特に変わってないなー。


 景色を懐かしんだ後、そのまま遺跡の方へ向か……わない。


 俺は防壁に向かってしゃがみ、以前抜け出すために通っていた地面の前に手をつく。

 そして地魔術を使い、当時と同じように通路を掘る。ただし、向こう側へは貫通させない。

 その状態で暫く待つ。

 のんびり景色を眺めていると、空いた穴からよく見知った顔が出てきた。


「お待たせ、おにい」


 リディを掘った通路から引っ張り出し、素早く穴を埋め直し証拠隠滅する。

 その間にリディは風魔術と光魔術を使い、服の汚れを落としていた。

 後始末をした後、俺たちは秘密基地へと向かって行った。


 はぁ、本当はリディを連れて来る気は無かったんだけどなあ。

 

 リディはポヨンに与えるミスリルが欲しいから一緒に行きたいと言い出した。

 俺は十五になったことで正面から堂々と村の外に出ることが出来るようになった。

 だから俺が取って来てやる、と言ったんだがリディも引かない。

 で、最終的には俺が折れてしまった。あの何かを訴えかける妹の目は兄によく効く。


「絶対勝手に何処か行くんじゃないぞ」


「分かってるよ! あたしだってもう子供じゃないもん」


 リディよ。そう言って頬を膨らますその姿は子供っぽくて微笑ましいぞ。


 まぁ、実際リディが来てくれて助かる部分もある。

 俺の『亜空間収納』は確かに以前より容量は増えた。

 だけど、その分今は色んなものを収納している。

 今日貰ったミスリル装備一式、予備の服や靴や下着、保存食や念の為の水、他にも色々な小道具や前に討伐したゴブリンの魔石も入ったままだ。

 正直そこまで空き容量に余裕がない。


 対してリディの『亜空間収納』は容量が俺の比じゃないくらい大きい。下手すればいくらでも入るんじゃないかってくらいだ。

 更に中の物が時間経過もしないみたいだし。

 俺と同様ミスリル装備一式の他に、予備の服や靴や下着が大量に、水も俺の数倍は収納している。

 更に、母さんが多めに作った料理が鍋や皿ごと入っていたりもする。

 母さん曰く、時間が無い時はそのまま料理を取り出すだけでいいので凄く助かるとのこと。服や靴も多く収納することで家が片付いて助かるとも言ってた。


 これから向かう秘密基地の遺跡は何故かボロボロのミスリル製武器が色々と落ちている。

 それも、回収して数日もすれば何故かまた落ちているのだ。

 正直出所はさっぱり分かっていない。

 まあ、今まで特に問題も無かったし大丈夫だろう。……多分。

 しかも、瓦礫にもミスリルが含まれていて、それを魔術で取り出すことも出来る。

 そうなると、俺の『亜空間収納』の容量だけでは心許ない。

 ボロボロの武器だって、大量に持って帰ってエルクおじさんに渡せば色々作って貰えるし、ミスリルを村に寄贈も出来る。


 まぁ、結局全部言い訳なんだけどな。

 連れ出してしまった以上は俺が絶対にリディを守る。



「とーちゃっく! うわあ、またいっぱい武器落ちてるね」


「だなあ、それじゃ拾いながら進むか」


 予想通りまたボロボロの武器がそこらに落ちていた。

 俺たちはそれを回収しながら奥へと進んで行く。


 そして、ミスリルを抽出していた瓦礫の所まで辿り着く。

 俺は慣れた手つきで地魔術で瓦礫からミスリルを取り出す。


「ポヨン、出ておいで」


 リディの鞄からポヨンが飛び出す。

 そしてそのままリディの頭の上に陣取った。


「ほらリディ、自分でもやってみろ」


「はーい」


 リディも俺と同じように、地魔術で瓦礫からミスリルを取り出そうとする。

 ゆっくりではあるが、リディの手の上に薄青緑色の塊が現れる。


 うん、問題無いみたいだな。


 そして、リディが取り出したミスリルを頭の上に持って行く。

 するとポヨンがそれを取り込み消化していく。


「ポヨン、美味しい?」


 ポヨンはみょんみょん体を伸ばし、喜びを表現している。


 そんなこんなで二人でミスリルを抽出していく。

 瓦礫一塊から取れるミスリルはそう多い訳ではない。

 ただ、ここにはいくらでも……と言うと語弊があるけど、まだまだ数え切れない程の瓦礫があるんだから問題無い。


 暫くそうやって作業をし、もう少しミスリルを採ろうと次の瓦礫を下ろす。

 そこで俺はある発見をする。いや、してしまった。


「ん? あれ、この奥空洞になってるな」


「え、どこどこ? うわ、本当だ!」


 邪魔な瓦礫を一旦端へ退ける。

 そうして現れた暗闇の中を光魔術で照らしてみる。

 すると、そこは通路になっているようだった。


 中に何があるんだろう?

 正直凄く気になる。


「もしかして、この奥にボロボロの武器がいつも落ちてる秘密があったりするのかな?」


 ……可能性はあるかも知れない。

 リディの方を見る。

 何があるか分からないから、調べるにしてもこの子がいない時に調べるべきか。


 そんなことを考えていると、急に雨が降ってきた。

 え? さっきまで普通に晴れてたのに?

 咄嗟にリディを引き寄せ、風魔術で雨に濡れるのを防ぐ。


「なあリディ、さっきまで確かに晴れてたよな?」


「う、うん。何で急に雨がきゃっ!」


 ゴロゴロゴロ――カッ! ドオオォォォン!!


 くそ、雷まで!

 流石にこの雷雨の中、村まで帰るのは……

 気は進まないが仕方ない。


「リディ、一旦この中に避難するぞ!」


「う、うん!」


 リディと共に暗闇の中に避難する。


 これが俺たちの運命を変えてしまうとも知らずに。



 暫く待ってみるが、雷雨が止む気配は無い。

 寧ろ風まで強くなっている気さえする。


「全然止まないね……」


 リディは少し不安になっているみたいだ。

 ここじゃ奥に何があるかも分からないし、気を抜くことも出来ないしな。

 うーん、少し安全確保の為に奥を見てみるべきか……


「リディ、ここでちょっと待っていてくれるか? 奥が安全か少し見て来るから」


「え? おにい行っちゃうの? うーーー……」


 ポヨンを強く抱くリディ。

 うーむ、確かにリディだけをここに置いていくのもそれはそれで不安だ。ポヨンは……まあ別枠で。


「分かった。一緒に行こう。でも、絶対俺から離れるなよ。それと、危なかったらすぐ逃げるんだぞ」


「うん」


 俺たちは念の為『身体活性』を使う。

 亜空間からミスリルの剣を取り出し右手に持つ。リディにはナイフを持たせる。

 周囲を照らす為、光魔術を使おうとしたら、


「おにい、明かりなら任せて」


 そう言ってリディはポヨンに光の魔力を流す。

 すると、リディの魔力を受けたポヨンが光だした。そして光るポヨンを頭の上に乗せる。


「これは……『エンチャント』か! リディ、ポヨンにこんなことも出来たのか」


「うん、おにいの真似してみたら出来たの」


 リディの頭の上でポヨンが誇らし気に胸を張った……気がした。


 そして俺たちは慎重に奥に進む。

 すると、通路はそれほど距離は無かったようで、少し歩くと多少広い空間に出た。

 奥の方に門らしきものがあったが開くことは無かった。


「これは開きそうにもないな。ここで行き止まりか」


「そうみたいだね。ここは安全……なのかな」


 俺は今立っている空間を見回す。

 門らしきもの以外、特に変わったものは見当たらない。


 これなら不用意に門の近くに寄らなければ安全かな。

 そう思ったその時だった。

 急に床から光が溢れ出る。


「おにい!」


 リディがしがみ付いて来る。


「くそ、一体何が! リディ、逃げるぞ!」


 俺たちは通路に駆け出そうとした。

 だが、もう既に遅かった。

 俺たちは溢れ出て来る光に包まれ前に進むことが出来なかった。


 俺はリディを抱き締める。

 この子だけは何があろうとも助けなければ!


 そんな俺の想いも空しく、俺たちは白く塗りつぶされていくのだった。



 ◇◇◇



 白く塗りつぶされた空間が元の色を取り戻していく。

 それと同時に遺跡も普段の静寂を取り戻す。

 さっきまでの雷雨などまるで最初から無かったかのように。


 そして、ある兄妹がついさっきまで立っていた場所。

 そこにはただ暗闇と静寂だけが広がっていた。

ブックマーク、評価、そして誤字報告ありがとうございます!

大変創作の励みになっております。


次話から新章突入します。


しばらくは、朝・夜の一日二回投稿をしていこうと思います。

これからも頑張りますので、どうぞよろしくお願いします!

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