過去はどうも不器用だ
過去はどうも不器用だ
ふと思い出して輪郭をしたためようとも
断片的に浮動する記憶たちが
もみくちゃになっていて
最中 交わって電撃的に
過去は帰ってくる
だがそれは
過去の一部分にすぎず
全体はとうに粉々になっていて
それは過去を共有する者たちが
部分的に所持していて
その所持していることすら
段々と忘れてしまうものだから
過去はどうも不器用だ
もう僕には過去は見えない
見たくないものも見えないし
見たいものももう見えない
あの時の笑顔も
あの時の涙も
もう 写真の中だけ
もう 手紙の中だけ
口に出して語ることはできても
もう感情は伴ってはいない
切り離された時間軸は
どこか遠いところにあって
記憶の回路の奥底で
ゆるやかに風化していく
中身はないのに
延々と数だけが増えていく
過去はどうも不器用だ
それをときどきこうして
思い返してしまう
僕はどうも不器用だ