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第5話 日曜日はフリマ

月に一度のイベントです。スーパーとか無いので、ここで大量に日用品を仕入れて持ち帰ります。

指編みの髪飾りを作って2日後、私とチコ姉と母の3人は、2つ村を通り過ぎたその先にある大きな町まで来ていた。


父さんやモモト爺ちゃん達、村の男性陣は今日は仕事がお休みの日だ。

つまり日本でいう日曜日ってやつだ。

村の女性もいつもなら休みとなるはずだが、今日は月に一度の市の日。


ナコ達が訪れた大きな町の広場では、近隣の村から店を開くために多くの人が訪れていた。

ナコ達も例外ではなく、沢山の商品を持って出店のためこの町に来ていた。


母の作った竹や麻紐製の籠、チコとナコで巻き上げた糸巻の数々(あれから更に増えて、かなり大量!)、父が採ってきた何かの素材たち(染色に使ったカオカの葉や茎――茎のトゲは処理済み――他にもナコが初めて見る草木たち)、ナコも食べた色々な木の実や野菜など、いくつもの商品が、布を1枚敷いただけの地面に雑多に置かれている。


(机とか・・・置けばいいのに・・・)


舗装も何もされていな地面。風が吹けば砂埃が舞う。


(これじゃ、せっかくの商品が、食べ物が、埃まみれだよ・・・)


日本のハンドメイドイベントと比べて、その違いに落胆する。市というから、机くらいはあるものかと思っていたが、何もなかった。何もない、区画区切りの線すらない、ただの広場なのに、よくもまぁこんなに綺麗にそれぞれが出店し、真ん中にちょうど綺麗な一本道が出来るものだと、別の意味でナコは感心していた。


布一枚の地面に直置きされた商品が汚れるのももちろん懸念だが、商品の並べ方を綺麗にすると売り上げも格段に変わるのに、とハンドメイドイベントに出展したことのある奈々美は、経験からそのことをよく理解していた。


「か、か・・・母さん、私に並べさせて?」


あまりに適当に置かれているだけの商品達に、我慢が出来なくなり、母にお願いする。


「あの箱も、それから布も貸して?」


商品を運ぶために使った木の箱。蓋替わりにリヤカーの上に被せてあった布も借りる。

布・・・はちょっと汚いけど、無いよりはマシか。


まず箱をひっくり返し、底を机の代わりとする。足りない分は隣のブース(同じ村の顔なじみの女性だ)から借りて机とする。1列目は箱を1つ、2列目は箱を2つ重ね、3列目は箱を3つ重ね、こうして高さが3種類あるひな壇を作った。そして母から借りた大きな布を被せる。これで店の土台が完成だ。


「早く商品並べないと、もう時間ないよ。」

「チコ姉、まっ、待ってー!!」


せっかくひな壇を作ったのに、バラバラに適当に並べようとするチコ姉を慌てて止める。


「ここのエリアには、木の実や食べ物を。このエリアには食べられない素材や資材を。ここには籠や糸巻を並べてね。」


ひな壇の上に、母の作った籠を並べて、その中に木の実を入れるよう母さんやチコ姉にお願いする。


「その籠・・・売り物なんだけど・・・それに籠の中では木の実が全部入りきらないよ?」

「全部入らなくていいの。展示スペースに置けない分は後ろのリヤカーに置いておいて、売れたら補充すればいいの。籠だって、木の実と一緒に籠ごと買って貰えばいいんだから。」


ひな壇を縦に3分割した一番左側は、食べ物エリアとした。

母の作った小さ目の籠に木の実の種類に応じて5~10個ずつ入れていく。イメージは昔ながらの八百屋さんだ。同じ木の実でも大きさがバラバラだから、大きいものは小さいものとセットに。どの籠にも、大きいものと小さいものが平等に入るようにした。


次は真ん中のエリア。ここには母さんの籠や、チコ姉と一緒に作った糸巻を置く。大きい籠は奥の位置に置く。真ん中には丸い球の糸巻―――略して糸玉―――をピラミッドのように積み上げて置く。一番下の段は紫、2段目は紺色、3段目は青色・・・緑、黄色、オレンジ・・・と続き、一番上の段は赤色に。


「わぁ!キレイな色~!」


どんな色で糸玉を作ったのか知っているはずのチコ姉は、今初めて見たと言わんばかりに感嘆の声を上げる。


「余った糸玉は、リヤカーに入れておけばいいの?」

「そう。ピラミッド・・・この三角のは崩したくないから、買いたい人がいたらリヤカーから出して売ってね。」


一番下の段には、糸筒に巻いた糸巻を。左から右へ行くに従って、赤からオレンジ、黄、緑、青、最後は紫になるようにグラデーション状に糸巻を並べていく。チコ姉の作った楕円状になった糸巻と、ナコの作った台形の糸巻はあまりにも見た目が違うから、別々に並べて、2列に分けた。


一番右側のスペースには、父さんの採ってきてくれた食べ物以外の素材や資材を並べた。

用途は分からないけれど、何かの葉や茎、キレイな色をした石、薪などもあった。(薪は台には乗せられなかったので地面に直置きとした。)


「こうして整えて並べると、なるほど素敵なお店に見えるわね。」


最初は並べる時間が無いわ!と微妙な顔をしていた母も、出来上がった陳列を見て満足気だった。





*****





明確なオープン時間というものは無い市の日だが、お客さんは出店者たちが準備を終えるころ、ぞくぞくとやってきた。


「「「いらっしゃいー」」」

「今日はククの実が入荷してるよー。」

「完売必至!見てっておくれよ~。」

「安くしとくよー!どうぞ~!」


思い思いにお客さんに声を掛けていく店の面々。

そんな中、我がノンノ商店もオープンです。


「ノンノ、いつもの糸巻おくれ~。」

「いらっしゃい、タクノ夫人、今日は何色がいいかしら?」


常連さんらしき婦人が、さっそく訪れた。


「おや?この玉は・・・糸巻・・・かね?」

「糸筒がちょっと切れちゃってね、子供たちが丸くまとめてくれたんだよ。

巻いている長さは同じだが、糸筒が要らない分、少し安くしとくよ、どう?」


遠くからはカラーボールのように見える糸玉も、手に取ってみれば糸巻であるとすぐに分かる。

子供の両手でやっと持てるくらいの大きめサイズだから、重さもそこそこありかなりの長さが巻かれていると判断できる。


「それに、糸巻もなんだか形が違うのがあるねぇ。

ほお、綺麗に巻けて、模様みたいになってるじゃないか!こんな糸巻初めて見たよ。」


台形の糸巻を手に持ってあっちこっち眺めて不思議がるタクノ夫人。


「えーといつもの糸巻が200レクで、糸玉は180レク、そんでもってこっちの台形の糸巻は・・・」

「250レクです!」


台形の糸巻のところの値段で、価格を迷った母に対して、横からすかさず値段を言ったナコ。


実際のところ、ナコは貨幣価値は分かっていない。

ただ、他のものよりも少し大きめな数字を言っただけである。


「おや、台形のは糸の量が多いのかい?」

「いえ、ほぼ同じですよ~^^ふふふん♪」


ナコはご機嫌笑顔を振りまき、タクノ夫人へ返答する。


「同じなのに、値段が違うのかい・・・?ふん、変だねぇ。」


そう言ってタクノ夫人は、いつもの糸巻を5個と、糸玉を5個買って行った。

最初は興味を持っていた台形の糸模様も、値段を聞いた後は興味を失ってしまったようだ。いつもは糸巻を10本買っていくところ、値段が安い糸玉に惹かれたようで5個ずつのお買い上げとなった。


======================================

現在までの売り上げ


糸玉(180レク×5)900レク

楕円糸巻(200レク×5)1000レク


出店料 -1000レク

――――――――――――――――――

利益合計 900レク

======================================


この市場への出店料を差し引くと、まずは900レクの売り上げだ。


(これは・・・どれくらいの価値なんだ?)


貨幣価値が分からないナコにとっては、判断が付かない。レクって何語?1レクは日本の円ならいくらの価値??


誰か為替レート教えて!


ナコは頭の中で悶々と考えていた。


「ねぇ、糸の量が同じなのに、値段が違うのって変じゃない?」


先ほどタクノ夫人に言われた言葉を気にして、チコ姉が訪ねた。


「チコ姉は、どっちの糸巻がステキ!って思う?」

「そりゃぁ・・・ナコが巻いた糸巻の方が模様があって素敵だと思うけど・・・」

「でしょう?その“ステキ!”って気持ちが、50レクの価値なんだよ。」

「“気持ち”が50レク?・・・ゔーん?」


答えに納得のいっていない様子のチコ姉。隣で母も悩ましい顔をしている。


「ねぇ、ナコ、やっぱり同じ200レクにしない?」


困った顔をしながら提案する母さん。

チコ姉も同じく渋い顔をしたままだった。



「・・・お昼までに1個も売れなかったら、同じ200レクにするよ・・・。」


仕方なしに、そう答えたナコ。


(売れる!絶対!!売ってやる!)


ナコの販売魂に火が付いた!

道の駅とかでも朝市とかよくやってますよね。

見かけるとつい寄ってみたくなります。

・・・そして買う気もないのに色々と買ってしまうwww

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