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第1話 死んだら、どうなった???

木村奈々美、26歳。

職業 IT企業の派遣社員

趣味 ハンドメイド

彼氏なし、貯金なし。


いつかハンドメイドで有名になってやる!(夢は言うだけタダ!)

その日もいつも通りの休日だった。


最近ハマっているスマホゲームをしながら、夕飯の買い出しにスーパーへ向かう。


このゲームは、現実の位置情報をリアルタイムにゲームと連動させて楽しむゲームである。

公園とか、市民文化会館とか、交差点の脇にある何かの石碑とか、動物園や水族館など、現実にある施設や建造物が、そのままゲームのチェックポイントとなっている。

このチェックポイントで立ち止まってスマホで規定の操作をすれば、ゲーム内アイテムをゲットすることが可能なのだった。


このゲームのために、最近は休日に近所を散歩することが多くなった。――運動にもなるし、一石二鳥だね!


そんないつも通りのゲーム操作をしつつ、

信号が青になったことを確認してから横断歩道を渡る。


ブロロロロロロ~~~~

「えっ!!!」


遠くに見えていたハズのトラックが、ものすごいスピードで我が身に迫ってくる。

(もちろんトラック側の信号は“赤”だ。)


あっ!と思う間もなく、トラックは目の前。


「「あぶない!」」

「「きゃーっ!!!」」

「「@mtjgdt_/&##!!!」」

『ガシャーン!』

『ドスーン!』


叫ぶ人の声、

何かのぶつかる音、

グシャっという鈍い音、

遠くなる声、

霞んでゆく景色、


あぁ、死ぬときってこんな風なんだ・・・


目の前が暗転して、意識が遠くなっていく・・・


出所は不明だけど、噂によると死ぬときって走馬灯のように過去のこと思い出すって聞いたけど、アレ、嘘なんだね、何も出てこないよ。

と、一方で冷静な自分もいて。


視界は真っ暗で何も見えなくて。

さっきまで聞こえていた周りの人々の声も聞こえなくて。


何も、見えない。


何も、聞こえない。


何も、感じない。


あぁ、私、死んだんだ。


そう、理解した。







*****







『ポタン・・・』


(?)

(なんの音?)


声に出したつもりだったけど、声は出なかった。


なんだか体が熱い。

肩とか背中も痛い。

あぁそっか、さっき事故ったんだっけ。

痛い!熱い!苦しい!


「た・・・すけて・・・」


(?)

(助けて?)

(誰が?)

(誰を?)


「いた・・・い・・・!!!」


(痛い?)

(なぜ?)

(死んだはずなのに。)


『ポタン・・・・・・ポタン・・・・・・』


その音は規則正しく、でも遠くに、聞こえる。


『パサッ』


おでこのあたりに、冷んやりした感触。そしてなんだか懐かしい、この感じ。


「☆5wwjkc_#&??」


遠くで何か聞こえるけど、でもよく分からない。


(気持ち・・・いい)


ふわっと頬に触れる、何か。


柔らかくて、ほんのり温かい。なんだか懐かしい匂いがする。

知っているような、でも知らないような、でも何かを思い出す・・・そんな懐かしい香り。


「おか・・・あさん」


声が、出た。


「な・・・こ・・・?」

「なこ? ・・・なこ? ・・・なこ!!」


なこ? なこって何?

何かはよく分からないけど、今度はちゃんと聞こえた。


「おかあ、さん・・・?」

「良かった! 気がついたのね! よかった、よか・・っ・・た!!」

「父さん! とうさーん! ナコが起きたよ! とうさーん!」


色んな人の声がする。


重い瞼をようやく開け・・・う、まぶしい。

すぐには目を開けられず、瞼越しに明るさを感じながら、目がゆっくりと明るさに馴染むのを待つ。


痛みはもう、ない。・・・ない? ・・・あれ?


「お母・・・え?」


間違えた!

目の前に見えた女性は、お母さんでは無かった。

というか、知らない人、だれ?


「ナコー!!」


ぎゅーっと、布団の上から体全体を抱きしめられた。

・・・えっと、誰だっけ?


頭フル回転。

ええい、思い出せ、思い出すんだ、自分!!!

えーと、スーパーに買い物に出かけて、横断歩道を渡って、トラックが来て、ぶつかって、死んで、痛くて、暑くて、抱きしめられて(←イマココ!)


(えー、どゆこと???)

(えと、病院? 事故ったから?)


(病院・・・ではなさそう・・・かな?)


どちらかと言うと、家。というかログハウス。

キャンプ場にありそうな木造りの小さな家のようだ。(昔家族で泊まったロッジに似ている。)


一部屋か二部屋と、トイレと洗面所くらいしかない程度の簡易的なログハウスのように奈々美には感じられた。


部屋の広さは10帖くらいはあるかな?それから必要最小限の家具。今自分が寝ているベッドに、部屋の中央には木製のシンプルな丸いテーブルに、椅子が4つ。窓もいくつかあって、外からは日差しが差し込んでいる。

ベッドとは反対側の壁にカラーボックスのような簡易的な棚が置いてあり(ただし色はカラーではなく、木材そのままのナチュラルな木目調。)、食器だったり、家族の荷物と思われるものがその棚にいくつか置いてあった。


遠くには、流しが見える。

あぁ、さっきの音はこれか。水がポトン、ポトンと落ちている。


(ここは一体・・・どこ?)

(そしてこの人達は・・・一体だれ?)


女性と男性、たぶん夫婦だ、そして子供。家族らしき3人が心配そうな顔で私の顔を覗き込んでいる。()()()()()の私を。


ふと、自分の手が視界に入った。


(!!!)


奈々美の視界に入った自分の手―――それは確かに自分の手だと認識出来ているのだが―――は、子供の手だった。

指も短くて爪も小さくて、そしてちょっとプニプニしている。どうみても大人の女性のスラッとした手や指ではなかった。


よいしょっと上半身をベッドから起こすと、想定していたほど視界が高くならず、やはりこれは子供の視線なのかと思わざるを得なかった。

薄いくせにだいぶ重い布団をめくり、自分の足を見る。やはり思った通り、子供の足だ。


キョロキョロと部屋を見渡すが、ここには鏡は無いらしい。

自分自身を見ることは叶わないが、手や足を見る限り、子供―――それも未就学児くらいの感覚に見える。


(年中?それとも年長くらい?)


親戚にちょうど年長の子がいた。祖母にランドセルを買ってもらったと、先日SNSにUPされているの見たばかりだった。自分の視界から見る手と足は、だいたい同じ年ごろに見えていた。


「大丈夫? 気分はどう? お水・・・飲む?」


女性が心配そうに私に声を掛ける。

かなり奇抜な髪色をしている女性。後ろで一つに束ねているのだが、その髪色は淡い緑色をしていた。新緑のようなキレイな緑色。透明感のある色合いで、緑色とは言え、薄くて淡くてやさしげな緑色だった。

薄いベージュのシンプルな飾りの無いワンピースを着て、同じベージュのリボンでウエストをキュッと絞ったデザインだ。


隣に立つ男性もこれまた奇抜な髪色だった。薄いピンク色の髪色、短く切り揃えられてはいたが、おせじにも手入れはされていない様子でボサボサ頭であった。女性と同じ生地と思われるベージュ色の作業着のようなものを身に纏い、腰にはナイフやら紐やら何かの道具らしきものがジャラジャラとぶら下げられていた。


両親の間に立つ女の子もまた違った色の髪色をしていた。薄いけれど青空のようなキレイな青色をした髪を二つに分けて縛っており、さらにその少し下をも縛っていた。年の頃は10歳くらいだろうか、小学生くらいの年齢の子供に見える。こちらはデザインは女性と同じものだが、色違いの紺色のワンピースを着ていた。


女性から手渡されたコップから水をゴクリと一口。冷たくて、喉から胃にかけて冷たい液体がスーッと食道を流れていくのを感じる。もう一口、もう一口、とゆっくりではあるが、コップの半分ほどの水を飲んだ。


「あの・・・ここは・・・どこ、ですか?」


何を言おうか迷った末、出た言葉。状況が良く分からない。

でも、ここは病院ではなく、交通事故にあったというのに自分にはケガもなさそうだ。

風邪を引いた時のように少し頭が重い感じはするが、動けないほどではない。少し前に感じていた“熱い”“痛い”という感覚も今はなく、手も足も自由に動かせる。


女性は男性と顔を見合わせ、困った表情のまま、返答はしてくれなかった。


「どうしたの? ナコ、ここは家だよ? ナコはずっと熱を出していたんだよ? 覚えてる?」


女の子の方が答える。さっきまでは心配して泣きそうな表情だったのが、今はホッとして安心した表情に変わりつつあるようだ。私の両手を握り、笑顔を見せる。


「あの、あなたは・・・誰?・・・ですか?」


女性と男性は再び顔を見合わせ、男性の方は出入口の方に駆け出す。


「俺、カリン様のところに行ってくる!」

「え、ええ、そうね、お願いよ。」


ふと、下腹部に違和感を感じる。いや、原因は分かっている、ただの生理現象だ。

女の子にお願いし、トイレまで案内して貰う。

先ほど男性が出ていった出入口――なぜかドアはなく、玄関扉をはめられるくらいの人一人が通れるくらいのスペースが開いているだけのただの出入口だ――から私と女の子は一緒に出た。

ログハウスから出るとそこはもう外。ベッドが置いてある先ほど居た部屋以外は、別の部屋は存在しないようだ。


女の子に誘導され、キャンプ場にある共同トイレらしき場所――ただのボットン便所だ――で用を済ませ、落ち着くと何か周りの景色に違和感を感じる。


(空が・・・赤い?)


(いや、何かネットのようなものが張り巡らされている?)


空を見上げた先の天空には、青い空が広がり、ところどころ綿雲が浮いている。

ただ、頭上、周りにいくつも点在しているログハウスや共同トイレや、木々のもっともっと上の上空には、赤いネットがこの辺り全体を包み込むように半球状に広がっていた。

赤いと思っていたものは、この半球状に広がるネットのようなものの色であった。ただ赤というのは正しくなく、見る角度によって光の加減で青にも黄色にも緑にも見える、キラキラ光るネットだった。


「あれは何?」

「え? なに? どうしたの??」

「赤・・・色んな色が見えるネットのようなもの・・・あれは何?」


女の子に聞くと、大層びっくりした顔をされた。


「ナコにはそれが見えるの?・・・私には見えないけど・・・それたぶん、カリン様の結界だよ。

あの結界があるから、この村は魔獣の被害から守られているんだよ。前に話したことなかったっけ?」


ログハウスに居た3人と、トイレへの往復ですれ違った人達の人相から、なんとなく日本でも日本人でも無いなと薄々は感じていたけれど、これで決定的。

結界に魔獣に、空に広がるいく色にも見える虹色のネット。

いよいよ怪しい世界に来てしまったのだと、ようやく認識した。

初めての作品です。

どんなストーリーになるか、作者も手探り状態ですが、

まったりと見守っていただけると幸いです。

よろしくお願いします♪

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