別れと出会い
始まりがロマンチックだったが、終わりはあっという間だった。
一ヶ月に数回しか会えない代わりにとっていた連絡が徐々に減っていき、次第に返ってこない日々が増えていった。彼の気持ちが尽きてることに気づいてはいたが、二人で過ごした日を思い出しては私は愛されていると確認していく日々を送っていた。こうして夢を見ることで彼との終わりから目を背け、幸せに浸っていたかった。
なにが私と彼を引き裂く起爆剤となったのかは今は覚えていない。が、目が覚めたある日もう愛されたいとか一緒にいたいという気持ちはなくなっていた。一種の諦めだったと私は思うが、正解は分からない。ただ死人の心にでも触れようとしているのかと思うほど、彼の愛を感じれなくなっていた。会いたいという彼から、会いたいと思う気持ちは伝わらなくなっていたし、彼の発言にはところどころ彼女つまり奥さんの影がうろついていた。携帯を開き、一言
「奥さんと幸せにね。」
そう送信し、彼からの返事が届かない設定にし二日放置した。返事が届かない設定にしなくてもきっと返事などきていなかったと思う。そう考えるたびに胸が痛むが、私たちの関係はこう終わらせてよかったと思った。
彼が幸せならそれでいい、二番目でも構わないと言いつつ、彼の奥さんの個人情報を突き止め、過去まで探るようになっていた私はもはや誰にも止められなかった。彼と奥さんの写真を見るたびに強烈な嫉妬と奥さんに対して煮えたぎるような恨みを抱くようになった日から、自分が少しずつ歪んでいくのが手に取るように分かった。二番目では嫌だ。誰かの男でいることも違う女の人を抱くのも全て嫌になっていった。
いっそ奥さんに全てを話そう。突き止めた親族にバラし壊してやろう。次第にそう考えていった。朝になって我に返りそんなことしてはいけないと改心する。
その疲れの果てに別れの一言を送った。
私は、誰かを恨んだり妬んだりする人間ではない。純粋な心で人の幸せを願う人間だったはずなのにいつの間にか心が歪んでいった。戻るには全てをリセットする必要があったのだ。
携帯を閉じ、自分の首にかけていた金色のネックレスを外した。これさえかけていれば私は彼のものと言われているような気がして好きだった。彼にだったらそう言われても良かった。私の小さな夢物語やつまらないオチのない話、地元の愚痴を聞いてくれてた彼が大好きだった。目標に向かって一生懸命頑張る彼の背中を見るのが好きだった、だがその隣にはいつだって奥さんがいた。私はどう足掻いたって二番目、もしかしたらそれ以下かもしれない。
「あーしんど。」
持っていたネックレスを遠くに置いてあったゴミ箱へと投げ捨てて深呼吸をした。彼からもらった宝物を捨てれるならきっと乗り越えられる気がした。