第六話 ジ・アウターズゲート 〜 ザ・ジェイル 〜
「ダッセェな。お前、ボロッボロじゃねぇか」
何者かが話しかけてきた。閉じていた眼をゆっくりと開けると、大きな鉄格子の部屋に囲まれた地下牢のような場所に倒れていた。所々欠けたくたびれた壁から垂れる、どこから流れてきているのかわからない汚水、部分的にしか照らせていない古ぼけた電球、ひんやり冷たい石造りの床……特に頰から伝わる冷えた感触は寝覚めには辛い。
そして目の前には赤い眼をギラギラとさせた自分そっくりな姿をしたヤツが、うんこ座りしながら話しかけてきていた。
「……っるせーな。あんなバケモノ、どう考えても反則だろ」
マキは苛立ちを口にした。アガレスで勝てない相手は始めてだったし、何しろ今回は相手が強すぎた。
「ははっ、そうだな。アイツ、めちゃくちゃ強かったな。でもな、それはお前の修業不足だし、まだアガレスなんかにしかフュージョンできないお前が悪い。ま、どう考えたとしてもお前が悪い」
あれが悪いこれが悪いと言われてイラッともするが、コイツの言うことも間違ってはいない。たしかに、あの高級スーツの男を相手取るには分不相応だったし、明らかに自分の能力が劣っていた。
このつべこべうるさく、痛いところを突いてくるコイツはここの管理人で、ここはというと『ザ・ジェイル』……端的に言えば俺の心の中だ。
辺りを囲む大きな鉄格子の部屋は、吸魂した魂達を閉じ込めておく『檻』であり、これがある程度まで力を蓄えると暴れ出すのだ。そこで暴れ出した魂を喰らい、具現化するのがここの管理人の役目。そいつをブチのめす事で、悪魔達の魂は真の意味で屈服したことになり、フュージョンの力となる仕組みだ……と思う。実際のところは自分でもよくわからないのだが、経験上だいたいそんな感じで間違いないハズだ。
しかしその場面に立ち会ったことはまだ数少なく、魂が暴れて破壊された『檻』は今のところ二ヶ所しかない。もっと悪魔の魂を集めてフュージョンを強化すべきだと管理人は言っている。
管理人の言いたいことはたしかにその通りだと思うが、肝心の悪魔はその辺をウロウロしているわけではない。という理由でフュージョンの強化はそう易々と出来るものではないのが現状だ。この案件はひとまず置いておこうと思う。
「で、お前これからどうすんの? このまま死ぬのか? それともまたリアルに戻るのか?」
それは……リアルに戻ってさらに強くなる方法を模索しなければならないが、あの高級スーツの男は倒せるのだろうか。今の最大出力である暴走アガレスでも、まったく歯が立たなかった。
「それは大丈夫だろう、俺が保証してやる。そのうち倒せるよ、きっと!」
管理人は親指を立ててニッと笑った。おいおい『きっと』って……無責任すぎるだろ。
「もういいから、リアルに戻してくれよ。お前と話してると相変わらずイラつく」
「そうかい。じゃ、さっさと戻って死ぬほど戦って強くなってこいよ! まっ、またすぐに来ることになると思うけどよ。その時までにもっと強くなってろよ! あばよ‼︎」
そこでマキの意識はプツリと途切れた。




