第六話 ジ・アウターズゲート 〜 暴走、再び 〜
高級スーツの男は両腕を広げ狂った笑いを繰り広げた。
『地のエネルギー』、『人間の負のエネルギー』、『外なる神』……どれについても見識はない。
いや、待てよ。『人間の負のエネルギー』は壁一面の魔言語とかいうので、ここに集めているのではないだろうか。それならなんとなく合点がいく。しかしそれ以外の二つは、何を差しているのであろうか。
「地のエネルギーとは、この地球のエネルギー……『龍脈』の上なんですね、ここは!」
エレンは叫んだ。
「ほう、お前はなかなか見所があるな。そうだ、ここはこの地球の大動脈とも呼べる『龍脈』の真上だ。こうやってくだらん問答をしている今も、膨大なエネルギーが集まっている。この集約されたエネルギーは『外なる神』を誘き寄せるエサになるのだ」
また『外なる神』か……。これほどにまでに強いこの男が欲する神とはいったい……。
「その『外なる神』とは⁉︎ そしてそれを呼んでどうするのですか⁉︎」
またまた高級スーツの男は「フンっ」と鼻を鳴らした。
「知れたこと。『オレ達』は今の神が嫌いでね、ソイツを滅ぼすだけだ。さあ、もうこの辺でいいだろう。さっさと逝くが良い」
再び指をバキボキ鳴らしながら黒い悪魔へと歩み出した。
高級スーツの男が不意に口走った『オレ達』……。他にも仲間がいるということだろうか。それにしても、こんな神殺しを企てる危ないヤツ、放っておいたらまた何をしでかすかわからない。神が本当にいるのか、また神がいたとして殺されたらどうなるのかはわからないが、コイツをここのまま野放しにしておくのはとんでもなく危険だ。突破口どころか、なおさら倒さなければならない理由だけが出来てしまった。
「キリカ! エレン! 魔Rockを頼む‼︎」
するとキリカは声を上げた。
「えっ⁉︎ フュージョン中の魔Rockは暴走しちまうんだろ⁉︎ このテは使わねえんじゃねぇのかよ!」
キリカの言うことが正しいのはわかっていたが、今はそんなことを言っている場合ではない。このままでは三人とも生きては帰れないだろうし、コイツはここで倒さないと後々大変なことになるであろう。
しかしアガレスの状態とはいえ、この高級スーツの男との力の差は歴然である。暴走でもなんでも、さらなる力で応戦しなければどうしようもない。こんなヤツがいるなんて正直思ってもみなかった。
「いいからはやくしろっ! みんなまとめて死にたいのか‼︎」
黒い悪魔は雷鳴の如く怒鳴り声を上げた。すると、姉妹はそれぞれの得物を召喚し、いつものように演奏を始めた。
「が、ガガガ……コンドコソ、ブッ殺ス‼︎ グハハハ!」
黒い悪魔の理性が例の如くブッ飛んだ。
「くだらん。何が変わったのかは知らんが、そんなことをしても無駄だということをわからせてやろう」
高級スーツの男は飛び出し右拳を繰り出した。しかし、この戦いが始まって以来初だろうか、男の拳は空を切った。
「グハッグハッ! 喰ラエ‼︎」
狂った黒い悪魔の右拳が高級スーツの男に打ち下ろされた。
ガン!
「ほう、よくわからんが戦闘力が向上したようだな」
狂った黒い悪魔の右拳は、高級スーツの男を捉えたが片腕でガードされてしまった。
「グハハハ! ナラバもう一丁!」
狂った黒い悪魔は思いっきり左脚を蹴り上げた。しかし、その強烈な蹴りもガードされてしまった。
「お前では、話にならんと言ってるだろうが!」
高級スーツの男は、ガードの体勢から踏み込み、それと同時に肘突きを繰り出した。狂った黒い悪魔はそれを胸部にくらい吹き飛んだ。
「まだ寝るには早い!」
吹き飛ぶ狂った黒い悪魔の頭部に、先回りしていた高級スーツの男がオーバーヘッドキックのようにクルッと回り、蹴りを叩きつけた。バウンドしたところにトドメの追撃といわんばかりに高級スーツの男が降った。腕を組み、足を揃えて直立の状態で超高速で乗りかかり、そのまま地面に直行した。その破壊力は凄まじく、狂った黒い悪魔は地面にめり込んでしまった。
「フン、これで終いだな」
狂った黒い悪魔はいつのまにかマキの状態に戻っており、ピクリともしないのであった。
「おいっ! マキぃー‼︎」
「マキさーん‼︎」
ディザイアシスターズは演奏を中断し、叫び声を上げながら走り寄った。しかし、その呼び声に反応はなく、さらに突然目の前に何かが瞬時に着地した。
「次はお前達の番だ」
高級スーツの男が姉妹の前に立ち塞がった。
「クソっ! てめぇマキをよくも‼︎」
「お姉ちゃん! 一旦ここは逃げなきゃ‼︎」
姉妹はまるで正反対であった。姉のキリカはマキをやられた怒りで激情し、妹のエレンは冷静に逃走を図ろうとしていた。しかし、高級スーツの男の前ではどんなわずかな希望でも、その可能性をことごとくゼロにするのだった。
「お前達のようなザコなどどうでも良いのだが、ゲートを見られたからには生かしては帰さぬ。ここで果てろ」
そう言いながらバキボキと指を鳴らし、ゆっくりと姉妹に歩み寄った。
「く、クソォォォォぉぉ‼︎」




