第六話 ジ・アウターズゲート 〜ジ・アウターズゲート 〜
「やったぜ!」
「やりましたね、マキさん!」
『地獄の門番』を倒したマキに、姉妹は大はしゃぎであった。
「ああ。アガレスじゃなきゃヤバかったけどな」
そう言いながら、黒い悪魔は浮き上がっている門番達の魂を吸った。『地獄の門番』の異名を持つだけのことはあるのか、大型で上質な魂であった。
「んん⁉︎ おおっ、これはもう近いな」
黒い悪魔は身体をブルブルっと震わせた。
キリカは頭の上に大きなはてなマークを浮かべながら言った。
「何が近いんだ?」
「いや、こっちの話だ。何でもない」
キリカの質問を受け流しながら地面に着地した。そしてフュージョンを解こうとしたその時だった。その場にいる三人は身に走る凄まじい威圧感と悪寒を感じた。
「お前達か、牛頭と馬頭を殺ったのは」
低く重苦しい声がした。その方を振り向くと、身なりの良い男がいつのまにかそこにいた。
高級そうなスーツを着こなした威厳のある中年男性で、体格はガッチリとしているが、その身なりからはインテリな雰囲気もかもし出している。放つ凄まじいオーラといい、得体の知れない男である。
「なんだ、誰だお前! いつの間にそこにいたんだ⁉︎」
キリカは高級スーツの男に突っかかった。
「オレか? オレが誰であろうがそんなことはどうでもいい。それより、そこのお前! まさかとは思うが、もしやフュージョナーではあるまいな⁉︎」
高級スーツの男は黒い悪魔に向かって指差して言った。
「ああ、そうだが? 文句あんなら牛頭馬頭のようにお前もぶっとばすぞ!」
もとよりそのつもりだが、一応啖呵は切っておいた。そうでもしないと、その圧倒的な威圧感に気負けしてしまいそうだったからだ。
「フッフッフッフ……アーハッハッハ‼︎」
突然、高級スーツの男は狂ったように大きな笑い声を上げた。
「エレン、アイツ頭おかしくなったのか?」
その様子を遠目から見ていたキリカはエレンに耳打ちした。
「わからない……でもあの人、戦ってはいけないような気がする……」
エレンの発言にキリカは首をかしげた。
「たしかに強いっぽいけど、マキなら大丈夫だろ」
その返答にエレンは沈黙で返した。顔も心なしか強張っている。
「いや、失敬失敬。まさかこんな所で、あの『フュージョナー様』に出会えるとはな。しかも、まだそんなナリで。おかしくってしょうがねえ」
高級スーツの男のまた馬鹿笑いを始めた。
「お前っさっきから何がそんなに可笑しいんだ⁉︎ 俺が『フュージョナー』だったらなんだってんだ⁉︎」
黒い悪魔は憤慨していた。
「アハハハハ! いや、いいんだ。気にしないでくれ。それより、ほら、殺り合うんだろ? さっさとこいよ」
馬鹿笑いを辞め、黒い悪魔を挑発した。
「グ、グハハハ! いいだろう。俺を笑ったことを後悔させてやる‼︎」
黒い悪魔は牛頭と馬頭を倒した時のように、一歩の跳躍で相手まで接近し殴りかかった。しかし、その右拳は空を切った。
続けて蹴りを混じえての連撃を繰り出したが、どれも空を切るだけであった。
「フン、やはりその程度か。つまらんな」
「……っ!」
眼前から高級スーツの男の姿が消えたかと思うと、腹部に強烈な痛みを感じ、いつのまにか天井を仰いでいた。どうやら腹に一発もらい、吹き飛んでいたようだ。
「グっ……」
正直、今の攻撃は見えなかった。とんでもない速さで、かつ凄まじい威力の攻撃をされたのだが、突きなのか蹴りなのか、はたまたそれ以外の攻撃なのかでさえもわからなかった。
「大したことのないヤツだ。ゲートの邪魔だ、さっさと失せろ」
高級スーツの男は手をバキボキ鳴らしながら黒い悪魔に近づいて行った。
「待ってください! そのゲートはいったいなんなのですか⁉︎」
急にエレンがそう叫んだ。
「このゲートが何なのかだと? これから死に行く身のお前達が、それを知ってどうするというのだ?」
「冥土の土産です! 教えてください‼︎」
エレンは強い眼差しで高級スーツの男を真っ直ぐに見据えた。
いったいエレンはどういうつもりなのだろうか。しかし、上手くいけば何かの突破口になるかもしれないし、そうでなくても今のうちにダメージを抜くことはできる。とりあえずファインプレーだと思う。
「フン、まぁいい。特別に教えてやろう。この塔はオモテでは『スカイツリー』と呼ばれているが、本当の姿は『魔塔』だ。その真意は地上634メートル、地下32メートルで造られた計666メートル、すなわち『我々の数』だ。その原点……そう、まさにここだ、この地に全てのエネルギーが集結するのだ」
「全てのエネルギー……。そのエネルギーとは何ですか⁉︎」
エレンの問いに高級スーツの男はニヤリとした。
「地のエネルギーと、人間どもの負のエネルギーだ! この二つを使って『外なる神』を呼び出すのだ‼︎ ハァーッハッハ! そしてこのゲートを、我々は『アウターズゲート』と呼んでいる‼︎」




