第六話 ジ・アウターズゲート 〜 牛とマキと、ときどき馬 〜
ギンっ!
硬い金属がぶつかりあう音が辺りに響いた。
「フン、オマエのヨウなチビにヤラれるオレではナイ!」
ガッチリ体型で巨躯の牛頭は、そう言いながら向かって来たマキを弾き返した。
「ちっ、見た目通りの馬鹿力だな」
マキと牛頭は激しく斬り合い、熾烈な戦闘を繰り広げていた。しかし馬頭はというと、その戦いを少し離れた位置から眺めていた。
高みの見物というやつであろう、それはそれでマキにとっては好都合であった。なぜなら牛頭一体でも手に余るからであり、そこに馬頭も加わるようであればとんでもない。
「セントウバカのゴズにツキアッテられまセンネ。サッサとオワらせてイタダキタイものデス」
大きな二又の槍を地面に突き立て呆れるように馬頭は言った。もちろん馬頭がいる場所はゲートのすぐ傍である。仕事はしっかりこなしているようだ。
「オイ、メズ! オレのジャマはスルナヨ。コイツはオレのエモノだ‼︎」
「ハイハイ。ダカラこうして、イツモのようにハナれてミテイルだけではナイですか」
息巻いてたぎりにたぎった牛頭は馬頭に言い放った。余程、サシの戦いが好きで邪魔されたくないのだろうか。しかし、このやりとりはいつも通りのようだ。
「へっ、ありがてぇこった。サシならまだマシだってな」
マキは再び構え直した。馬頭の介入はないと見切り、牛頭一体に狙いを絞り集中した。
「フン、ナマイキなヤツだ。オマエのようなチビが、このオレにカテルワケがないダロ」
「チビチビうるせぇヤツだな! お前から見れば誰でもチビだろうが‼︎」
それもそのはず。牛頭の巨躯は筋肉と腹の脂肪でデップリしていて横幅もあるが、身長も二メートル半近くある。人間はみんなチビに見えるだろう。馬頭も同じくらいの身長だが、牛頭と違って腹の脂肪はなく、スリムマッチョだ。
「だったらチビの恐ろしさってのを見せてやるぜ! 《瞬迅》ッ‼︎」
超高速移動による斬りつけが発動。牛頭はギリギリ斧で防いだが態勢を崩した。
「もういっちょ! 《瞬迅》ッ‼︎」
一度通り抜け、牛頭の背中側から元の位置に戻るように移動して斬りつけた。
ザシュン‼︎
牛頭の背中から横一文字に血が飛び散った。
「グオっ! クソっヤリヤガッタな‼︎」
牛頭はまた息巻いた。チビにやられた怒りなのか斧を振り回し、執拗にマキを攻撃した。しかし、それをことごとくマキは回避した。
「ヤレヤレ。パワーバカにはスピードでホンロウなんてキホンチュウのキホンでしょう。マァ、アタマにチがノボッてキクミミもモタナイでショウガ」
馬頭はゲートの下でまた呆れていた。
「へへっ、そんな大振りなんか当たるかよ。それっ」
マキは回避と同時に刀を振り上げた。今度は牛頭の腹から天井に向かって血が吹き上げた。
「グゥゥ……。チョコマカとハエみたいなヤツめ‼︎」
牛頭は腹を抑えながら悔しそうに言った。二度斬りつけられているが、まだ全然動けるようでかなりのタフだ。
しかし、このチャンスを見過ごすわけにはいかない。
「これもくらっとけや!」
マキの素早い斬撃が牛頭の首を強襲しようと空を斬り裂き始めた。しかしその時だった。
ガンっ!
「ちっ」
マキは即座にその場から離れた。飛び跳ねた場所には大きな槍が突き刺さっていた。
「ホラ、アナタはモンバンですよ? ヤラレテしまってはソノツトメをハタセナイでしょ」
そう言いながら馬頭は牛頭の傍に来て、地面に突き刺さった槍を引き抜いた。牛頭もピンチを迎えさすがに頭が冷えたのか、『ジャマするナ!』と怒るわけでもなく素直に迎えいれた。
「スマン、メズ。ツイ、アツクなってしまった。モンバンともあろうオレが、ヤラレテしまってはイケナイからな」
どうやらここからは二対一のようだ。門番達の本領発揮となるであろう、マキにとってはこの上なく不都合だ。
「おいおい、ウシ頭! テメェ一人じゃチビ一匹も倒せないのか⁉︎ かかって来いよ‼︎」
しかし、マキの挑発に牛頭が怒って襲いかかってくる様子はなかった。どうやら戦いより、仕事の方が大事らしい。我に返って責務を思い出したのかやけにクレイバーだ。
「ワレワレにもマモルべきコトがアリマス。そんなヤスいチョウハツにノルわけないじゃないデスカ。サテ、ゴズ。ワレワレモンバンのシンのチカラをミセテサシアゲマショウ」




