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Laugh Chaos  作者: signal.U
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第六話 ジ・アウターズゲート 〜 いつも通りになりつつある非日常 〜

「なぁ、マキぃー。動物園、いつ連れてってくれんだよー」


雲一つない真っ青な空の下、マキ探偵事務所では相変わらずのキリカのどっか連れてけ攻撃が炸裂していた。その猛攻を受けるマキは、究極の受け流し技《右から左ッ‼︎》を発動させていた。まったく意に介さずに聞き流す卓越した技術で、自由気ままなワガママ娘の口撃を巧みに受け流していた。


「あー、はいはい。今度な、今度」


「今度っていつだよ! いつもそればっかじゃねぇか‼︎」


キリカはいつものように半ギレでマキにクレームをつけていた。


「あのねー、キリカちゃん。お兄さんの話、よぉく聞いててくれるかな。動物園に行くにはお金がかかるし、入園するにもお金がかかるんだ。でも、ウチにそんな余裕はないし、事務所を空けている間に依頼人が来ちゃったら大損だろ。どうかな、わかるかなぁ?」


キリカは明らかにムッとした顔をした。バカにするなと言いたいのかもしれない。


「アレはどうしたんだよ! ジィちゃんから貰ったヤツ‼︎ よくわかんねぇけど、結構な金額だったんだろ⁉︎」


キリカの問いにマキはサラッと答えた。


「あの金はお前らの食費で消えたよ。特にキリカ、お前よく飯食うだろ? すげぇ勢いであの金溶けたぞ」


キリカはグゥの音も言えず黙った。エレンはというと、やれやれとしている。エレンは賢いのできっとこういうオチになることは予想していたことであろう。


「そういえば、キリカ。お前、ライブで荒稼ぎしてたんだろ? 売り上げ残ってんじゃないのか? あるならどこでも連れてってやれるぞ」


本音を言えば、姉妹を連れ出してどっかで息抜きをさせてやりたい。しかし、事務所を留守にしている間に依頼人が来てしまっては機会を逃してしまうかもしれないし、そもそも遊びに使う余裕なんてない。例に漏れずいつでも金欠だ。


そこでキリカの埋蔵金を補填させて、しばらくの安泰を得る作戦だ。かなり人気があったようだから、すこぶる儲かっていたに違いない。


しかし、そんな期待を裏切るかのようにキリカの顔がみるみる曇っていく。


「あ、いやぁ……。金のことはマネージャーの志村、ほらマキが倒したあのコウモリ男、アイツに任してからアタシは何も持ってない……かな」


「お姉ちゃんはライブが出来れば何でも良かったんだもんね。仕方ないよ」


どうやらそうゆうことらしい。これで埋蔵金というドリームは儚くも散った。あのコウモリ野郎、遺産は全てキリカにと遺書を残してはいないだろうか。


「あぁ、そうか。じゃ、またしばらくここで依頼人待ちだな」


「……はーい」


姉妹は気のない返事をした。しかし、エレンは何か引っかかるようで、少し考えた後そのことを発言した。


「マキさん。待ってるだけじゃなくて、仕事をこちらから取りに行くスタンスとか、待ち時間を利用して他の仕事をするとかはダメなんですか? ワタシもおでかけしたいです」


意外な提案だった。意外だったが的確な提案であった。


「例えば?」


「インターネットって世界中に繋がるそうですね。それを活かして、マキさんのパソコンでマキ探偵事務所のホームページを作成したり、事務所で出来る仕事を探してみてはどうでしょうか。ワタシ達もいますので、三人で頑張れば少しは稼ぎになると思いますが」


……たしかにその通りだ。まさか機械のキの字も知らないような姉妹、エレンにそんな事を言われるなんて夢にも思っていなかった。


「ホームページを作るとか、内職を探すってことだな。でも俺、ホームページとか作ったことないし、作れる自信まったくないんだが。なにせパソコンいじるって言っても、インターネットで検索するくらいしかやらないしな」


マキが頼りない発言をした後、エレンはここぞとばかりに乗り出した。


「大丈夫です! ワタシに任せてください‼︎」


エレンは嬉々として眼を輝かせて言った。その手には『インターネット活用術 〜これであなたの収入アップ間違いなし!〜』という、どこで手に入れたのか、いかにもな自己啓発本の類いを持っていた。動物園の時といい、いったいどこから持ってくるのだろうか。


「わかったわかった。パソコンは貸してやるからやってみていいよ」


パソコンはマキの所長机にある。マキはいつもの昼寝椅子……もとい、所長椅子をエレンに譲り、自分は来客用の椅子に腰かけた。ホームページが出来れば日本各地から依頼が入り、ついでに観光でも混ぜれば姉妹も黙るであろう。一石二鳥だ。もちろん交通費は依頼人持ちである。


とりあえず、ここはエレンに任せてひとまず昼寝でもしよう。キリカもチンプンカンプンながらも、エレンのクリエイティブワークに興味深々で横から覗いているし、今は口撃の来ない安全な時間なハズだ。このチャンスを逃す手はない。


そしてマキは頭の後ろで手を組み背もたれにもたれかかると、いびきを事務所内に響かせていたのは言うまでもない。


※※※


「おい、マキやい。久しいのぉ。悪いんじゃがちこっと話があるのでな、ウチに来てくれんか? 早めに頼むぞー」


「……はっ‼︎」


マキはビックリして飛び起きた。


「夢……いや、ジィさんのウィスパーボイスか」


やはりジィさんの囁きで起きるのはなんだか腹立だしいし、気持ちも悪い。しかも、いつもいつもわざわざ人が気持ちよく昼寝している時にと思う。


しかしとにかく何か急ぎの呼び出しらしい。仕事の依頼なら、このお礼を謝礼に上乗せさせてやろう。


さて、姉妹はどうしているだろうか。エレンは相変わらずパソコンの前に座って操作しているが、なぜか涙目だ。キリカはその隣でヨダレを垂らして気持ち良さそうに寝ている。


「おーい、出かけるぞー。二人とも準備しろー」


その一言に姉妹はハッとし、マキの方を向いた。キリカはヨダレを拭い「どこ行くんだー?」と言い、妹のエレンは涙を拭って「お出かけですか?」と応えた。


「あぁ、ジィさんがお呼びらしい。お前らもどうせ行くんだろ?」


姉妹は「もっちろん!」と声をシンクロさせた。この二人が外出に同行しないわけがない。


「んじゃ、行くぞー」


「マキさん!」


エレンが突然マキを呼び止めた。


「あの、ホームページの件なんですけど……」


「あぁ、上手くいかなかったんだろ? 顔に書いてあるぜ」


エレンは赤くなった顔を両手で覆った。


「大丈夫だ。そんな簡単にホームページ作成なんて出来るわけないから。気にすんな」


「……すいません」


まぁ、また気が向いたら引き続きがんばってもらおう。エレンは勤勉だろうからそのうち出来るかもしれないしな。


「なぁ、それはいいから早く行こうぜ。あのジィさん、待ってんだろ?」


無駄に元気いっぱいなキリカが玄関で待機していた。キリカは動きたい生き物なので待機は苦手なのである。


「はいはい、さっそく出発しますかね」


ウズウズしている姉と涙目の妹を連れ、一行は『萬マ殿』に向かうのであった。

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