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Laugh Chaos  作者: signal.U
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第五話 レッツ・マキ車‼︎ (後編) 〜 うっかり 〜

しばらく魔汽車の揺れに身を任せていると「ぼぉー」と汽笛の音が聞こえてきた。どうやら『フジノジュカイ』に着いたようだ。


タジマ親子の部屋で、姉妹がタジマ息子のヒロトと「生き返ったら何したい?」の話題でひとしきり盛り上がった後、一度お開きをして最後尾の空き部屋でくつろいでいた。バロンは話に参加せず、要件だけ済ますとさっさといなくなっていたが。


マキと姉妹の三人は、汽笛が聞こえてきたので窓の外を覗いた。外はすっかり夜が明けたのか、鬱蒼とした森の所々に朝日が差し込んでいた。やはり到着が近いようで紫色の異空間ではなかった。


そしてほどなくして魔汽車が停止した。外に出ると見覚えのある、ほんのちょっと小高いだけの石造りのホームに到着していた。これまで色々とあったが、やっと帰ってこれた。


「うーん、やっぱ外の空気はうまいぜ! ほんと一時はどうなるかと思ったけどな」


キリカが魔汽車からホームにピョンっと飛び移り、ゆっくり背伸びをしながら言った。


まったくその通りだ。我ながら今回はかなり危うい橋を渡ったなと少し反省している。魔汽車に乗り込むという無謀、いや無謀というよりはしっかりとした情報もないまま未知に挑んでしまった過ち。それと予想できなかったことだがアガレスの暴走……本当によく帰ってこれたもんだと思う。


しかし捉え方を変えれば、ただの予想外の連続だったということにもなる。結果的にはオニやテングという強者に勝てたことや、タジマ親子の復活というリターンもあった。結果オーライである。


ま、後者の方が自分にはピッタリであろう。しかし、あまり無茶はしないということは、頭の隅に置いておこうとは思う。隅っこにな。


ホームに降りてそんなことを考えていると、後ろからバロンとタジマ親子の半透明が扉を開けた。


「みなさん、長旅お疲れ様でした。ご希望の『フジノジュカイ』に帰ってきたわけですが」


途中で言葉を止めた。バロンはホームに降りたが、タジマ親子は魔汽車の扉の所から動かなかった。


「あぁ、貴方達はまだそこから降りられませんよ。でも大丈夫です、ご安心ください」


バロンはタジマ親子に向かって微笑んだ。


「タジマさん達はこの場所から魂を肉体に直接お返しします。つきましては肉体の場所まで瞬時に戻ることになりますので、ここでみなさんとはお別れになります。何か言っておきたいことなどありましたら、今のうちにどうぞ」


するとお父さん半透明があたふたとしながら言った。


「えーっと、みなさん。私達親子のために何かとありがとうございました。この御恩は一生忘れません! ほらっヒロトもお礼を言いなさい」


小さい半透明が弾かれたように言った。


「こ、このたびはほんとうにありがとうございました! マキおにぃちゃんも、キリカおねぇちゃんエレンおねえちゃんたちも、へんなぼうしのおじいちゃんも、おせわになりました‼︎」


半分、父親の用意した台本通りって感じがしたが気のせいだろう。さらにバロンの顔が一瞬引き攣ったような気もしたが、きっとそれも気のせいだろう。


「おうっ、ママにしっかり甘えとくんだぞ


マキはナオミチに目線を移した。


「奥さんには旦那さんと息子さんは生きてますよと伝えとくから、また遭難したりしないで気をつけて家に帰れよ」


「ヒロト君、ばいばぁい。気をつけてねー」


姉妹は(かが)んでヒロトに手を振った。みんな伝えたいことは、これでもう済んだであろうか。


「もうよろしいですかね。そろそろ始めましょうか」


バロンは異存はないか周囲の反応をチラリと確認すると、目をつむり強く念じ始めた。するとバロン足元に、丁度足幅くらいの大きさの紫色の魔法陣が出現した。


「バロン・ゲーデの名の下に、タジマナオミチ並びにタジマヒロトの魂の帰還を許可する。願わくば還るが良い!」


二人の半透明は手をつなぎ目を閉じると、光のかけらとなり空の彼方に消えて行った。


……もう奥さんを悲しませるなよ。


「では、これで私の役目は終了ですね。急ぎ冥府に戻らねばなりません。このあたりで私も失礼しますね」


「おう、色々とありがとな。もう会うこともないかもしれんが、そん時はよろしく」


「じゃねー、バロンさん。またね」


バロンはシルクハットを取り丁寧にお辞儀をした。そして魔汽車の中に入って行くと自然と扉が閉まり、間もなく「ぼぉー」っと汽笛を鳴らし発進するのだった。


初めはゆっくり、次第に加速しながら魔汽車は深森の中に消えて行った。


「さてと、俺達も帰るとするか。腹も減ったし、夜通しだったから眠たいし、あっ奥さんに電話連絡もしないとな」


「あの、マキさん。質問です」


エレンが「はいっ!」と挙手しながら言った。


「ん? 何かね、エレンくん」


「ここからどうやって帰るんですか? ワタシ達、迷子になりながら来たから帰り道がわからないと思うんですが‼︎」


その事実を思い出した俺とキリカは「あっ‼︎」と声を上げ、その場に石のように固まるのだった。

第五話 完


第六話の更新は年内を目指します!

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