第五話 レッツ・マキ車‼︎ (後編) 〜 魔Rockとフュージョンの事情 〜
この手合わせはマキさんの勝ちで終わった。様子がおかしくなった時はヒヤヒヤさせられたが勝ちは勝ちだ。
しかし、ドラムを叩きながら見ていたが、やはりあの変わりようには何か危険なものを感じる。しっかり問いたださねば。
マキも元の姿に戻りバロンの横に座ると、なんだか難しい顔をしていた。
「マキさん。変身にはビックリしましたが、魔Rockの時からなんか様子が変わったような、おかしかったようですけど何かあったんですか?」
しばらくの沈黙の後、ひと呼吸置いてマキは重たく口を開いた。
「いや……うん。悪魔に乗っ取られたんだ……身体を」
一斉に「えぇぇぇぇっ⁉︎」と声を上げた。
「それってどういうことですか⁉︎」
「フュージョンは悪魔の魂との融合なんだ。普段は融合しても俺の魂優位で、身体の主導権を握ってるんだが……まっ俺の身体だからな」
マキは「でもな」と先を続けた。
「たぶん魔Rockで悪魔の魂が異様に活性化しちまって、それを抑えきれなくて主導権を持ってかれたってわけよ。だから悪魔に身体を乗っ取られて好き放題にやらせちまった。心配かけてすまん」
魔Rockは肉体だけでなく、精神的な影響も強い。その激しいビートが、荒い性質を持った悪魔の魂と親和性が高いのはなんとなく頷ける気がする。
「べつに謝る必要はねぇよ。一応、こうしてコイツに勝てたんだしよぉ」
「でもそのフュージョン状態って時は、魔Rock禁止ですね。悪魔に身体を乗っ取られるなんて危険過ぎます」
しっかりと釘を刺しておいた。たしかに悪魔に乗っ取られた時の強さは凄まじかったが、制御不能では仕方がない。魔Rockを中断すればマキが身体の主導権を奪い返すことができる……ようだが、そういかなかった時のことを考えると恐ろしい。
ということで、やはりフュージョン中は魔Rock禁止が妥当だろう。
「さて、バロンさんよ。まず手合わせと言いつつ、無理矢理本気で戦わせざるを得ないような汚ねぇマネしてくれたな。どうスジを通してくれんだい?」
珍しくマキが苛立ちながら言った。
「そうですね、そのことについては大変申し訳ございませんでした」
バロンは立ち上がってシルクハットを取り、頭を下げ謝罪した。
さらに「こんなに楽しいのはもう何百年振りだったものでつい……」と付け加えた。
「マキさん。スジはいいですから、はやく元の世界に帰らせてもらいましょうよ」
しかしバロンが慌てて割って入った。
「いえいえ、そういう訳にはいきません。私のわがままに付き合ってもらった上、見事私を打ち負かしました。最後はちょっとアレでした、がこんなに楽しい時間を過ごせたのは至上の喜びです」
さらにバロンはお辞儀をしながら続けた。
「やはり元の世界に帰すだけでは申し訳が立ちません。何か一つ『願い』を言ってみてください。出来ることなら叶えますし、駄目でも力になりますよ!」
だ、そうだ。折角なので好意として受けるべきだろうと思う。
それにしても『願い』か……。マキさんはいったい何を願うのだろうか。
「おっそうかい⁉︎ やっぱりそうこなくっちゃな! じゃ、今から言うのを叶えてくれよなっ」




